「烏が子育てをしています。気が立っているのでお気をつけ下さい」の現場に遭遇したこと
皆さまごきげんよう。もしくは初めまして。くろつです。
うちは家の隣に児童公園がありまして。そこでカラスが毎年営巣しているんですね。
そして今年の夏は暑かったじゃないですか。
暑いとカラスもしーんとしてるものなんですよ。
それでね、もうこちらは涼しくなってきているため、涼しくなるのを待っていたかのようにカラスが連日喧嘩してるんですよね。
そうかー、そうだよねー、ついこないだまでは暑くて喧嘩する体力もなかったよね。
いいよいいよ、存分におやりー。喧嘩も野生動物の自然な本能だもんねー。
なんて屋根の上のバトルを眺めていて、ふと思い出しました。
そうだ、私、カラスに襲われてる人見たことあったわ。
自宅からちょっと離れた神社にたまに行くんですが、そこは山の斜面にありまして、車じゃないと行けないけど、けっこう知る人ぞ知る神社なんですね。
そこに前回行った時のお話です。
少し離れた駐車場に車を止めて坂道を歩いていくと、入り口付近に看板があったんです。
「カラスが子育てをしています。気が立っているのでお気をつけ下さい」
その看板の横には傘立てがあり、ビニール傘が何本かささっていました。
「こちらをお使いください。お帰りの際にお戻しください」
って張り紙もあって。
その時私思ったんです。
へえー、神社だけど、こういうことするんだなーって。
この感想が間違ってたことは後々わかります。
子育ての最中はどんな生き物も警戒心マックスになるものですよね。
そしてその神社も山の中にありますし、言うたら私のほうが彼らの生息地に入っていってるようなもので。まあ怖がらせないようにしよっかな。と思いながら普通にお参りを済ませて降りてきました。
そうしたら。
ちょうど私の目の前を歩いていた女性の後頭部めがけて、カラスが急降下―っ!
ばさばさばさー! って音が聞こえたかと思ったら、私のすぐ目の前を斜めに飛んで、女性の後頭部に足先がかすったのが見えました。
わわわ、ってびっくりしてたら女性は両手で頭を抱えて道にしゃがみこんじゃったんです。細身で小柄の初老の女性だったのかな。
カラスはちょっと攻撃したらすぐ急上昇して、電線に止まってガァガァ鳴いてたんですが、やっぱり攻撃されたらびっくりしちゃいますよね。とっさに動けなくなるものですよね。
「大丈夫ですかーっ」
って駆け寄って、女性の肩に手を添えてそこから離脱しました。
「びっくりしましたね、私も方向一緒ですからご一緒しましょう」
とか言って。
その後はもう攻撃はなかったんです。ぱっと見、血は出ていなかったから、威嚇しただけだったのかもしれない。
でもね、私もびっくりして。初めてだったんですよ、カラスが人を襲う……じゃないけど、攻撃するのを見たの。
で、車を運転しての帰宅途中。
ふと頭の中の雑学ボックスの蓋がひらきました。
いわく、カラスは人を襲う時に後ろから襲うこと。
だから傘などで首の後ろをガードすると襲われないこと。
いわく、カラスが人を襲う時は弱そうな人間を見分けて襲うことも。
私、行きも帰りも襲われなかったよ……?
なにをもって「こいつはやめとくか」認定となった??
そして、ほぼ同時に脳内シナプスがつながります。
あっ……! 境内前に置いてあった傘……!
あれって、もしかして、首の後ろをガードする用に置いてあった……??
おそらくこれをお読みの皆様は、「それ以外なにがあると?」とお思いのことでしょう。
しかし私の第一印象は違った……。
「これを武器にしてカラスに立ち向かえってこと? 神社なのにアグレッシブな提案するなあ」
って思ったのです。
私、間違ってた……!
そりゃそうですよ、こんな好戦的な人間、カラスのほうだって野生の勘で嗅ぎ分けて近寄らないはずですよ……。アグレッシブなのは神社じゃなくてお前だよって話なんですよ。
あー、勘違いしてた。
あー、恥ずかしかった。
あー、私のばかーっ。
それ以来、神社のカラスと戦おうとしていたことがなにやら恥ずかしく、その神社には行けていません。