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Moon Rabbit ~ムラビト~  作者: 煤周 昴
共通ルート
9/10

共通ルート06-1

「遅い......」

あれから10分しても、そらが戻って来る気配はない。

「まさか、何かあったんじゃ?」

ここで待つようには言われたが、やっぱり心配だ。

「......仕方ない。様子を見てくるか」



そらの後を追って真っ赤な鳥居を抜けると、立派な社殿が見えてきた。

「ちゃんと神社、だな」

転送されてきたという信じがたい事実を、再確認させられた気がする。

「で、ここは何の神を祀ってるんだ?」

一般的には、その土地の産土神(うぶすながみ)や天皇、偉人なんかが祀られている事が多い。

だからひょっとしたら、祀られている神様からここが何処かを推測できるかもしれないんだが......。

「ん?」

手がかりを探して社殿の周りをうろうろしていると、近くの草むらに兎の姿を見つけた。

「ちゃんと動物もいると」

茶色の毛に、黒い目。

野ウサギだ。

「兎を祀っている神社だったりしてな」

動物を祀っている神社もあるらしいし。

(あなが)ち本当かもしれない。

そんなことを考えていると、ウサギは俊敏な身のこなしで走っていった。

「あっ、おい」

オレはウサギを追って、本殿の裏に回る。

「確かこっちに来たような......」

すると案の定。

「いたいた、ウサギってこんなに走るの速いんだな」

だからお茶会に遅刻しそうって時に爆走してたのか。

オレは濡れ縁でくつろぐウサギを抱きしめようとして。

「やべ」

オレはそのまま(ふすま)に突っ込んだ。

そしてその先にいたのはといえば。

「え?」

「あ......さっきぶりだな」


「きゃあっっつ!?」


もちろん、巫女服のはだけたそらだった。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



あれから5分後。

「もー、私ここで待っててって言ったじゃん」

例のご神木の下で、オレは制服に着替えたばかりのそらの、不平を一身に受けていた。

......驚いて逃げたウサギの代わりに。

「どうしよう、もう私お嫁にいけないよおー」

そらは手で顔を覆う。

「いやオレ全然見てないから! 全然まったく!」

オレの言葉に、そらは顔を上げる。

その瞳は潤んでいて、ほとんど泣きそうでもあった。

「......ほんと?」

「ああ、本当だ。だから心配することはない」

本当は、白い肌がちょっと見えたけど。

透き通るような肩が息を飲むほど綺麗だったけど。

余計なことは言わない方がお互いのためだ。

「そっか見てなかったんだ。良かったあ~」

そんなに露骨に安心されると、なんだかこちらがショックを受けてくる。

「やっぱりオレなんかに見られるのは嫌、だよな」

「え? いやそういう訳じゃないけど......」

違った。

「だって私のスタイルなんてツルトンタンだし......」

「つるとんたん?」

ボンキュッボンの対義語かなんかだと思ってる?

「お腹だって......その、ポンポコピーでポンポコナーだし」

「......逆に長生きしそうだな」

まぁ、そらの言いたいことはなんとなく分かる。

でもそんなに自分を卑下するほどじゃないとオレは思った。

「そらは別に太ってないと思うぞ。むしろ痩せてる方だ」

「そ、そうかな?」

「ああ。まるで読者モデルの卵だな」

「そ、そっか」

さっきまでの泣きそうだった面影は、もうどこかに消えていた。

「ふへへ♪ 読者モデル♪」

なお読者モデルの卵は、ただの読者である。

だがこの巧妙な叙述トリックに気づかないそらは。

「さっ、村はこっちだよ。早く行こっ♪」

と言って、スキップで先を行く。

なんというか、喜怒哀楽の忙しいやつだ。

......でも。

「暇よりはマシか」

「竜胆くーん、早く早くー!」

小走りでそらに追いつくと、オレたちは長い石段を一歩ずつ下っていく。

隣り合って、一歩ずつゆっくりと、それでも確かに前へ進んでいった。




「あれ? 見てないのに、なんで私が太ってないって言えるんだろ?」


そらの好感度が10下がった。

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