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妄想の帝国

妄想の帝国 その36 パーティーの後で

作者: 天城冴

新型肺炎ウイルスが蔓延する中、中高年男性が密集する政治資金パーティーを開いたアトウダ大臣。そのあとに恐ろしい結果がまっていた

「は、はああ、エ、エクモ、人工呼吸器はまだが」

「申し訳ありません、アトウダ大臣。もともと数が不足して、すべて使用中で」

医師の言葉に、アトウダ大臣は

「は、外せ、使っている奴らから。わ、私は苦しいんだぞ!ゼ、ゼエゼエエ」

ベッドから起き上がらんばかりに興奮して叫ぼうとした。が、肺の痛みに声もあげられない。

「し、しかし他の議員の方がお使いに、その、お兄様や息子さんも」

「下々の奴等は」

「一般人はかなり前から使用できなくなっています。そのため死亡率が上がってしまい、患者が次々と亡くなって」

「そんな奴等がいくら死んでもかまわん、それより重要なのは経済だ、儂の選挙資金だ!そのためにパーティーを開いたというのに、ゲホ」

「その、やはり資金集めパーティーはおやめになったほうがよかったのでは。いくら飲食なしとはいえ、マスクなしで談笑された方も少なくなかったようですし。その、出席者にかなりの感染者が…」

「な、なんだと、金づるの奴等も感染だと…、な、なぜだあ」

「ですから、新型肺炎ウイルスは、あのようなパーティーがクラスター、集団感染しやすいと言われていたではありませんか」

「だから距離、ゴホ、」

「現場にでている感染症の専門家からは、クラスターを作っているようなものだと。せめて外でやるとか、マスクは絶対に外さないとか、談笑、握手は禁止とかにすれば」

「ナゴヤンの市長のように集合写真をとったわけではないのにか…ウゥ」

「それでも、あのような状態では感染はしやすいのです。大臣の資金集めということで奥さまや息子さんも…」

「な、なんだと、あいつ等まで。まさかエクモは…ゴホ」

「はい、息子さんがご使用で」

「外せ、あいつから」

「は?」

「あいつのほうがまだ若いんだ、必要ないだろ、グブッ」

「そ、その重症化したからエクモを取り付けて…」

「すぐ、回復、ゴホ、儂はもう時間がないんだ!」

と、のたうち回り、叫ぶアトウダ大臣

「金はいくらでも出そう!わ、儂にエクモを」

「で、では、そのここにサインを」


大臣の病室とは別の階にあるスタッフの待機室で看護師の一人が心配そうに医師に尋ねた。

「いいんですか、先生。どうせ無駄だと思いますよ、アトウダ大臣につけても」

「ま、そうだろうな。息子のほうも駄目だったし」

「え、助からないってわかってるのに、やっちゃったんですか!」

「瀕死の患者の頼みを聞いたまでだよ。最高級の治療をしてくれって、そのためには金はいくらでもっていうから。ほぼ全財産をこの病院に譲るという書類に疑いもせず、すらすらサインしてくれたし」

「ま、まさか、それを見越してたんですか、先生」

「あのパーティー見て絶対クラスター発生するとは思ったからね。金持ち専門で最高級医療機器を取りそろえ、内外のウイルスの治療を取り入れたんだよ。どうせ議員だの財界の大物だのが感染してくるだろうって」

「まあ、テレビとかネットとかでパーティーの様子をみて、絶対感染するなって思いましたけど。だいたい喫煙者とかメタボの人とか中高年男性とか重症化しやすい人が出席者に多かったし」

「そうだろう、感染したら発症して死にやすい連中ばっかりだ」

「そのくせ、自分たちは罹らないって根拠もないのに思い込んでるんですよね、あの人達。だから政治資金パーティーとかやっても平気だと思ってたんですね。ああいう金持ち連中のパーティーだの会食だのがかなり開かれたらしいですよ、新型肺炎ウイルスの感染者増えてたのに」

「そうなんだよな。ウイルスは誰でも罹る、免疫力が落ちていたり、抗体がなければ発症するんだよ。最高級の治療を施しても本人自身の体力や免疫力がなければ、死にいたるんだが」

「お金があっても、死ぬときゃ死ぬんだから気を付ければいいのに。目先のお金で目がくらむような人達なんですねえ、ニホンの政治家って」

「まあ経済界だのも、そうらしいね、アトウダ大臣の後にエクモ使う予定の人はケイダンレンだかの会長か副会長だったかな」

「え、もうですか、は、早すぎませんか」

「エクモを使ったとしても、大臣は一日もつか、もたないかだよ、喫煙者で高齢だし、あの様子じゃあねえ」

「先生、お医者さんですよね、そんなこと言っていいんですか?」

「この国は政治家も財界人も狂ってるようなものだからね。国民を見捨て、金をしぼりとって楽するだけ。自分たちに課税して世界を救えという富豪などとは大違いだよ。だから、金持ちから金をしぼりとって、あとで庶民に間接的にばらまく医者がいてもいいだろう。だいたい金があるとからとるべきで、ない人は無料でも診れるようにするための社会福祉だろう?それが機能してないから、こういう技をつかっているだけだよ、僕は」

「まあ、そうですね、私たちもちゃんと休みとか、防護服とか必要だし。金出してもらえないと、そういうことできないですもんね」

「そういうことだよ。さて、書類もプリントアウトしたし、次の患者にサインをもらいに行こうか。これからどんどん増えるだろうから、スピーディーにやらないとね」

医師は立ち上がって、病室に向かった。


どこぞの世界でもウイルスが蔓延してますが、人工呼吸器があるといっても全員が助かるわけではないらしいですね。特効薬もできなさそうだし、ワクチンは一年後ですし、高齢男性は重症化しやすいらしいのにパーティーだの GO TO なんとか、だのを行う老年政治家さんたちは何を考えてらっしゃるんでしょうねえ

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