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病 九
「分かりました。ありがとうございます。」
その後和紀は病院の端で1人になる。
『僕は、理沙を笑顔で送り出すことができたんだろうか?
…とりあえず、理沙の前で自分はそれなりに冷静さを保てたのかもしれない。
…そうだ。理沙は今天国へ行く途中の道にいるんだ。だから僕のことは今は見えていないはずだ…!
だから僕は泣いていいんだ!』
そこまで和紀は冷静に考えたが、
『畜生!何で理沙が、こんな目に遭わないといけないんだ!理沙は何にも悪いことはしていない!あんなに性格のいい子、他にはいない!それなのに、それなのに…!
僕は神様なんか信じない!いたとしても、こんなのあまりにも残酷だ!そんな神様!この世からいなくなればいい!』
和紀はそう心の中で思い、涙が止まらない。そしてその涙腺は完全に決壊し、和紀は、大声で泣いた。
その声は、その病院の他の部屋にも聞こえるほどのものであった。




