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病 八
理沙がこの世からいなくなったのは、それからしばらくした後の12月の終わりであった。
その直前理沙は入院をしていたが、その日は理沙の希望で本人は自宅にいたらしい。
しかし理沙の容態が急に悪くなって、理沙は救急車で運ばれたらしい。
そして和紀が理沙の家族に呼ばれて病院へ到着した時には、理沙はもう既に亡くなっていた。
「高坂和紀さん、わざわざ理沙のためにありがとうございます。」
「いえいえ。それで理沙さんは…?」
「理沙はさっき亡くなりました。
救急車で運ばれた時は苦しそうな表情をしていましたが、最期を迎えた時は本当に穏やかな顔で、『思い残すことはない。』といったような表情でした。
それで、少しだけ意識が戻った理沙から和紀さんに伝言があります。
と言っても、簡単な言葉でしたが…。
『和紀、今までありがとう。』
とのことです。」




