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病 四
理沙の言葉を涙を流しながら聞いていた和紀は、無理矢理変な笑顔を作る。
「何その顔!面白い!」
そう言って理沙は泣きながら笑う。その顔もまた少しおかしくて、今度は和紀が本当の笑顔を見せる。
「分かったよ理沙。別れは確かに辛いけど…、最後にいっぱい想い出、作ろうね!」
「うん!」
そう言って、和紀は優しく理沙を抱き寄せた。
ふと外を見ると、木々には鮮やかな紅葉が色づいている。
『この紅葉が終わって、葉っぱが散ってしまったら理沙の命も燃え尽きてしまうのか…。』
やはりそう思うと涙が出てきてしまうが、理沙のためにそんな負の感情を抑え込もうとする和紀であった。




