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病 三
「…えっ、何が?」
その和紀のリアクションは、理沙にとって意外なものであった。
「今まで気づいてあげられなくてごめん。理沙、辛かったよね?
それに、僕は今一瞬、心の中で理沙を責めてしまったんだ。
『何で理沙は、僕にもっと早く打ち明けてくれなかったんだろう?』
って…。
でもそんなの身勝手だよね?それは理沙のことを想って考えたことじゃないよね?
だからごめんね、理沙。」
「和紀…。」
その言葉を聞いた理沙は、最初気丈に振る舞っていたのが嘘であるかのように涙を流す。
「…そんなことで謝るの、止めてよ!」
「えっ…ごめん。」
「だから謝るの止めてって言ってるでしょ!
そうやって謝られると、和紀に優しくされると、和紀との別れが辛くなるじゃん!」
「あ…ごめん。」
「だから…!」
そして理沙は、泣きながら和紀の元に近づく。
「それ以上謝らないで。私、最後は笑顔で和紀とお別れしたいんだ。だから…、
笑顔を見せて、和紀。」
「…分かったよ、理沙。」




