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彼女の気持ち 七
『久しぶり、だな…。』
和紀がそのレストランに入った直後の感想は、そのようなものであった。
「このレストラン、きれいですよね~!
私初めて来たんですけど、予約した甲斐がありました!」
「そう、ですね…。」
恵麻の素直な感想に、和紀はそう頷く。
しかし、どうしても昔のことを思い出してしまう和紀がそこにはいた。
「いらっしゃいませ。」
そしてウェイターがやって来る。そのウェイターは…、
『間違いない。この顔、この流暢な日本語の話し方…。
理沙の時と同じウェイターさんだ。』
和紀はそれを確信したが、できるだけ顔には出さないように努力する。
そして和紀たちはかつて、和紀が高校生だった時と同じように席に案内される。
『でもそういえば、あの時はいきなりフランス語であいさつされたような…。
今日は最初から日本語か。』
一瞬和紀はそう思ったが、それも恵麻に悟られないように努めた。




