忘れられない恋 十六
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大学3年生の和紀はその日、いつものよう
に講義を受けた後、家に帰ろうとしていた。
今日は12月の始め。また、和紀がいつも参加しているジャズバンドのサークルの練習はない。だから、その日は特に予定はなく、すんなりと家に帰る予定…だったのだが。
「あ、あの…すみません。高坂和紀さんですか?」
和紀は同じ講義を受けていたであろう女子大生に、声をかけられる。
「は、はい、僕は高坂ですが…、
あなたは?」
「あ、わたし、恵麻って言います!
あ、あの、それで…。
いきなりですが高坂さん、あなたの連絡先、伺ってもよろしいですか?
あの…、あなたの入っているジャズバンドのサークルに、興味がありまして…!」
「えっ…!?」
突然の恵麻の言葉に、和紀は動揺を隠せない。
「あ、あの、私1人ではどうしてもサークル室に入れない、って言うか何て言うか…。
だからお願いします!
一緒にサークル室まで行きたいんです!」
そして和紀は半ば勢いに押され、
「…分かりました。そういうことなら。
僕の電話番号は…、」
と、連絡先を恵麻に教える。
「…高坂さん、ありがとうございました!」
そう言って恵麻は、その場を去っていく。




