忘れられない恋 十一
「そういえばさ、和紀は映画館でポップコーンは食べる?」
映画館でチケットを買うために並んでいる途中、理沙は和紀にそう話しかける。
「うん。いつも食べるよ。」
「じゃあ味は塩派?キャラメル派?」
「僕は塩派かな。」
「え~ポップコーンは絶対キャラメルだよ~!」
…些細なことで、2人の意見が食い違った。
「えっ、そうかな?」
「そう!絶対!
だから今日は塩のポップコーンは禁止ね!」
理沙はそう強い口調で和紀に言うが、その表情は笑顔であった。
「…分かった。今日はキャラメル味に挑戦しよっかな。」
「えっ挑戦!?」
「まあそんな大げさなものじゃないけど…。
実はあんまりキャラメル味のポップコーン食べたことないんだよね。」
「なるほど。じゃあ挑戦あるのみ!」
そう言って理沙は冗談で、周りの目を気にしながら小さく敬礼のポーズをとる。また、そんな言い合いをしながら2人はそのやり取りがおかしくなって、笑った。
「何か面白いね!
今日はラブストーリーを見るけど、何かコメディー映画を見に来たみたい!」
「ハハハ!そうかな!」
いつもなら、特に和紀はイライラしてしまう映画館のチケット購入の待ち時間も、2人なら楽しく過ごせる。和紀と理沙は、こうやって2人の空気感が作られ、2人が些細な時間でも共有できることを、とても嬉しく感じていた。




