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6話

「はぁ、それは珍しい事なのですか?」


「えっ、あっ、珍しいと言えば珍しいですが第一に危険なんです!」


「なるほど、今日は休んでいて正解だったかな?」


「そうかもしれませんね、今は帰ってきた冒険者から情報を聞き出している所なんです」


「その情報って俺も聞けるかな?」


「勿論です!ジェードさんはこの都市でも上から数える事ができる強者ですから。と言ってもあまり大した事は分かってないのですが」


「俺は・・・ね、情報規制でもしてるのか?」


「はい、と言ってもあまり意味を成していません、悪い話は直ぐに広まりますから」


「それにしては街中は落ち着いてるな、どうしてだ?」


「魔の森から1番近い都市に住む覚悟のおかげかも知れませんね。慣れもあるでしょう。珍しいとは言いましたがそれでも魔の森ですから数年〜10数年のスパンで氾濫は起こります。成人以上は確実に1回は経験していますから。あと、逃げてもどうにもならないという事もあるでしょう。フェンネルは都市ですから人口も多いです。村等の数十人〜数百人規模であれば大きな街や都市に避難する事も可能ですが都市1つ分の人間を受け入れることの出来る都市は無いでしょう」


「確かにな」


「お年寄りの方などはフェンネルに骨を埋めるという人が殆どかと」


「殺させたくは無いよね。情報ってどこで聞ける?」


「1番情報が集まっているのはギルドマスターの所です。普通の冒険者は入れませんがジェードさんは専属受付嬢を付けられるほどの実力者ですから恐らく大丈夫でしょう。案内します」


案内された場所は恐らく作戦室みたいな所だ。


扉をノックして呼び掛ける。


「ギルドマスター、アリアです」


「入れ」


「失礼します」


「何かあったのか?ああ、ジェードを連れて来たのか」


「ああ、情報が欲しくてな」


「そうか、まあとりあえず座るといい」


素直に座る


「軽く紹介をしておこう。Aランクパーティの竜の息吹とBランクパーティの希望の剣と焔の守護者。そしてこいつはCランク冒険者のジェードだ。さて情報の精査に戻るぞ」


「了解した」


「話では将軍級を見たと言っていた奴が多数、数は分からねえが数千はいたという話もある、それに見た場所がバラけているのが問題だ、敵の本拠地が分からねえ」


「敵は今後の情報次第か?まずこちらの戦力はどのくらいだ?」


「領主軍が約3000、冒険者が約1000と言った所か。冒険者に関してはろくに戦えねぇ駆け出しを除くと500位まで減る」


「領主の方から情報は来てないのか?」


「領主様は今頃氾濫が起きたと聞いてあたふたしてる頃だろうぜ」


竜の息吹メンバーが言う。


「魔物の情報はどうしたって第一発見者の冒険者の方が多くなるからな、領主がこれからとる行動は情報集めと

事実確認をする為に森の中に少数精鋭の騎士を送る事だと思うぜ」


と、焔の守護者のリーダーが言う。


よくよく考えて見ればそうだな。前世でもそうだったが組織ってのは大きくなればなるほど初動が遅くなる傾向がある。ギルドなんかは最大級に大きい組織だが支部1つ1つである程度完結しているし仕事柄フットワークが軽い。どうしたって情報量に差が出るのは仕方の無いことか。


「ギルドマスター大変です!」


受付嬢が駆け込んでくる。


「冒険者から新しい情報が入ったのですがその中に将軍級を2体見たと言うものがありました!」


「何!チッ最悪だ」


「何が最悪なんだ?」


「将軍級が2体以上いるというは、王級がいる事が確定したと言う事だ。そして王級がいるということは将軍級は何体いるか分からないと言う事だ」


竜の息吹のリーダーが教えてくれた。


「まあ、そういう事だ。想定敵戦力は最大で5万、現時点でも最低1万はくだらねえ」


「それに王級は単体でAランクの魔物でもある。俺たちAランクパーティの竜の息吹が最高戦力である以上かなり厳しい戦いになる事は明らかだ」


「ソロでAランク以上の奴らは宛にならん。腰が軽すぎて何処にいるかわからんから期待するだけ無駄だ。それにしても情報が少ない、もう少し詳細が分かれば楽なんだが」


情報ねえ、空間把握でいけるかな?


とりあえず距離を伸ばす、5km.10km.15kmあ、いた。


こいつが王級か?強そうだな。


それにしても数が多い。流石異世界のG。


「・・・なるほど、これはかなりの数だ」


「いきなり何言ってやがる」


「今、索敵してた所だ。王級らしき存在も確認したぞ」


「!!!ここから魔の森まで何kmあると思ってるんだ!出鱈目を言うのはよせ!」


希望の剣のメンバーの1人が吠える。


「出鱈目じゃねえよ。そのスキルの存在をお前が知らないだけだろう。索敵スキルの最大索敵距離が魔の森まで遠く足らねえ事も知ってるし、感知系のスキルでも無理な事だって知ってる。だが、それだけが全てじゃねえだろ」


「俺でもこの距離で索敵可能なスキルは知らねえ」


ギルドマスターでも知らんか


「俺も知らないな、つまり君は未知の索敵スキルを持っているというわけだ」


「未知かどうかは知らねえがな」


「どうして手の内を晒したんだい?」


「自分の手札1枚を隠す為に命を危険に晒すなんてアホのする事だ。戦において情報の量と精度は結果に直結する、これで自分が死ぬリスクを下げられるなら寧ろだすのが最善だろ、それに俺が晒したのは未知の索敵手段を持っているという情報だけだ、充分元は取れていると思うがな」


「ふむ、まあいいだろう。それで、どの程度の情報が得られたんだ?」


「王級の存在の確認、本拠地、おおまかな敵戦力数だ。王級は一体のみ、そのまわりに将軍級らしき者が3体、別の場所にいる将軍級らしき者が3体、本拠は普段オークやオーガがいる場所より奥だ。総数は3万を超えるだろうな」


「少なくとも3万か、明日には4万近くなっている可能性もあるな。大半が有象無象とはいえこの数は脅威だな」


「なぜ戦いが明日だと分かる?」


「ゴブリン共が1番活発なのは昼間だ。あいつらは普段暗い洞穴等で寝たり暗い森で活動している分夜目は効くだろうが昼間以外あまり狩りはしねえ。今日はもう過ぎているから明日になるだろう」


「まあ、夜に襲われるより幾分かマシか、敵戦力も分かったことだしどう守りきるかの話をしよう。これまでにも幾度となく氾濫はあったのだろう?その時はどうやって戦ったのだ?」


「戦力差があまり無かったり、Sランク冒険者がいたりと色々あるが基本の戦略はいつも変わらねえ、最初に広範囲魔法が使える魔法使いがぶちかまし、ある程度近ずいたら弓使いが弾幕を張り、さらに近ずいたら突撃の合図で一斉に突貫する、このやり方はずっと変わらんな」


オーソドックスだな。


だが罠が無いのがいただけない。


正々堂々は舞台の上だけで十分だろう。


「確かに有効的な手だが、誰が何処に配置されるなんてのは無いのか?」


「適当だ」


「騎士達との連携は?」


「無いな、同一の目的の元で同じ戦場に立ってはいるがあまり仲が良くないからな」


「基本を元にこういった作戦はどうだろうか?」


「ふむ、聞こう」


「まず罠が欲しい、簡易的な罠でいいんだ。知能の低いゴブリンが相手だからな。大群になっているのであれば尚更都合がいい」


「何処に仕掛ける?」


「罠ってのは戦う前にいかに敵戦力を減らせるかが大事なんだ、別に戦場に仕掛ける必要は無い。森の中に仕掛けよう。今の森はゴブリン以外殆どいない、その上ゴブリンも統制がある程度取れているから無駄に罠が消費される心配も無い」


「で、どんな罠をかけるんだ?」


「まず1つ目は森の中に縄を張り巡らせる。森から出る直前とその100m位の2箇所仕掛ける。奥の方は足元の見えない場所に1本、ピンと張って木に縛り付ける。で、出る直前は足元と目線の高さに2本張る。1本目で転けたゴブリン達は森を抜けるまで警戒するだろう、そして森を出る直前に張られた目線の高さのロープを見つけ安心し、油断したゴブリンは足元のロープに気付かずまた転けるだろう」


「たかがロープを張って転す意味が分からないのだが」


「まあ普通ならそうなるな、転けたって死にはしない。だが大群なら別だ。先頭のゴブリンが転けたら見ていたゴブリンは足踏みするだろうが後ろの方はなんにも気付かないから進もうとするだろう。結果進まざるを得なくなり転けたゴブリンは後続に踏まれて死ぬ。後続のゴブリンもロープに気付かなければ同じ事が繰り返されるだろう。これはロープが切られるまで続く。それにロープが切られたとしてもゴブリンの死体はそこに残る、ゴブリンの死体に躓いて転ける奴もいるだろうな。そんな罠が2箇所だ」


「えげつな、随分悪辣な罠を思いつくもんだな」


「そうか?イタズラと大して変わらんぞ。仕掛ける相手が違うだけだ」


「そのイタズラも充分ひでえよ」


「それともう1つ」


「まだあんのか」


「罠が1つだけだと大して減らないだろう。もう1つは落とし穴だ」


「これまた随分古典的な」


「古典的であるが故に効果は折り紙付きだろう。森を出たところから戦場までの間に無数の落とし穴を仕掛ける、ただし、槍衾は無いただの落とし穴だ。相当深く作るがな」


「これにはどういった効果が?」


「先程と大して変わらんぞ?気付かず落ちる、上がれる高さではないし上からまた落ちてくる、結果落ちた衝撃で死ななくても重みで死ぬ、上の方の奴は死なないまでも身動きがとれなくなる。それを森から戦場までの間に無作為に無数に仕掛ける。数も減るし、疑心暗鬼になったゴブリンの行軍速度は落ちる、一石二鳥だな」


「えぐい、罠自体は至って普通だが考えてる事がえぐいぞ」


「効果的なんだからいいじゃないか」


「罠はどうやって作る?」


「縄は器用で索敵と隠密の上手い人に頼むのがいいだろうな、落とし穴は土魔法を使える人に頼む、勿論俺もやる」


「では早速始めよう、俺は縄の方の人材を集めてやってくる。お前らの方は落とし穴を頼むわ」


と言いながらギルドマスターが出ていく。


行動派ギルドマスターめ。


腰が軽いのはあなたもだろう。


俺達も他の冒険者に事情を話し、落とし穴を作っていく。


そして出来た落とし穴は直径1m、深さ10mの者が200近く。


想像してたより数が多い。


魔法使いは多いが土魔法のみとなると数は限られると思っていた。


だが事情を説明すると残していたSPで土魔法を取って手伝ってくれる人が一定数いたのだ。


いつかは取るつもりだったから必要な今取ろうと言ってくれた人がいてその人に呼応した形で増えていった。


ありがたいことだ。


落とし穴の作り方は至ってシンプル。


自分の足元直径1m分の土を周りに押し退けるだけ。


最終的に1番下に自分がいる形になるが、力のある人によって一本釣りで救出される。


あるいはそれが楽しくて必要以上に興が乗ったから穴が増えた可能性もあるが。


ギルドマスターの方も縄の罠をかけ終わったようだ。


後は明日を待つのみ










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