5話
「お前さん、休みとか取らねぇのか?」
「いきなりどうした?」
「いや、ここ1ヶ月毎日狩って来るもんだからいつ休んでんのかと疑問に思ってな」
ああ、なるほど
「俺は基本的に魔法を放っているだけだからな。走ったり直接闘うことも無いから寝れば回復する」
「そうか、ならいいがたまには休みも取っておけよ。自分でも気が付かないうちに疲労が溜まってたりするもんだ。特に冒険者なんてのは常に命のやり取りをしてるからな、身体は大丈夫でも心が参っちまう事もあるんだぜ」
「なるほど、参考になった。それにしてもいやに詳しいな」
「俺だって元冒険者だからな、冒険者は体が資本。その事に気付かねぇバカ共は一定数いるからな。そんな奴は5万と見てきた」
「言っても聞きやしねぇよ。英雄になった冒険者の話に憧れてる奴なんかは特にな」
「若者にありがちな周りが見えなくなると言うことか」
「お前さんも充分若者だがな。ま、お前さんにはその心配は無用だな、強大な力に溺れないかの方が心配だぜ」
「気を付けるようにするよ。カイルもここんとこ毎日いるが休みは無いのか?」
「誰かさんが毎日山ほど狩ってくるもんだから休んでる暇なんてねえよ」
・・・俺のせいか
「ま、その分ボーナスも出るし、忙しいのは夕方だけで他は暇だから実質休みみたいなもんよ」
「なるほど、それで今日の獲物の具合はどうだ?」
「いつも通りの品質だな。それにしてもお前さんは本当に解体をしねぇな」
「素人の下手な解体で品質が下がったら困るだろ?」
「ま、そりゃそうなんだか、せめて頭落として血と内蔵は抜いた方がいい、それだけで50キロ近く軽くなるからな、どんなスキルなのかは知らんが容量制限があるだろ、それだけでも大分変わってくるぞ」
「なるほど、ただ大量にあるから面倒くさくてな」
「ガッハッハッ、そりゃソロでこんなに大量に狩るやつは中々いねぇからな」
「まあ、なるべく善処するよ。ああ、それと明日は休む事にする、さっきカイルに言われたしな」
「そりゃいい心掛けだ。ゆっくり休むといい」
ー翌日ー
「休んで見たものの何すればいいんだろうか」
森暮しの時も毎日狩りや採取に出ていたし、街に来てからもずっと冒険者活動をしていた。
小さい時も毎日畑作業をしていたからな。
よくよく考えれば俺はこの世界における一般的な休日の過ごし方を全く知らない事になるな。
うーむ、とりあえずそこら辺ぶらつくか、金もかなり貯まっているし何かいいものがあれば買おう。
長い間年金暮しをしていたから、節約が身についてしまっているのかもしれない。この街でも良く考えれば宿と食事、それに生活必需品くらいにしか金を使った記憶が無い。
とりあえず街中をぶらつく。
「おっちゃん、串焼きくれ」
「お?坊主か、今日は休みなのか」
「ああ、暫く休んで無かったからな」
「そうか、で、何本にする?」
「2本で頼む」
「あいよ」
直ぐに出てくる。うむ、やはり美味いな。
もはや常連。
そうだ、俺は前世の頃から気に入った物をとことん食べ続けるタイプの人間だったがこれを機に新規開拓するのもいいかもしれない。
スープを売っている屋台や麺類を売っている屋台、同じ串焼きでも使っている魔物が違う等実に様々だ。
串焼き屋の間に野菜を売っている店があるのは如何なものかと思うが。
とりあえず腹ごなしは済んだのでまたぶらつく。
次に目に止まったのは服屋だ。
周りと比べても派手な店構えをしているから自然と目に留まる。
前世から服にはあまり頓着をしないタチだが異世界に転生し、若返った挙句イケメンになっているから少しは興味も出ようというもの。
幸い今は金に困っている訳では無い。
気に入った服を数セットまとめ買いして、1つはその場で着替えた。
気合いの入った服を着ると身も心も気合いが入る感じがする。
次は商店に行く。
この街1番の商店だ。冒険者必須の商品から食品、生活必需品まで幅広く揃えている。
体力回復薬、魔力回復薬、解毒薬etc
とりあえず要りそうなものを手に取っていく。
中々いい買い物が出来た。
次は装備を買いに行こう。
今まで必要無かったので買っていなかったがそろそろオーガより上の魔物を狩りたいと思っていたのだ。
ここで自分の戦力を上げない手はない。
装備を取り扱う店に向かう。
「いらっしゃい、何をお探しで?」
「杖とローブが欲しい」
「どのくらいの値段の物を探してますか?」
「1つ金貨100枚位なら出せる」
イチオクエン、ピャー。
「それほどの物になりますと店内には並べていません。取ってまいりますのでお待ちください」
「まずは杖から、『魔導師の杖』、効果は火、水、風、土魔法の威力が2倍、魔力回復速度が1.5倍、魔力蓄積機能があります。最大蓄積量はステータスの魔力200に匹敵します」
すげ、もっと金積めばもっと凄い事になるんだろな。極まった装備ってどんな性能してんだろ。
「そしてこのローブが『火竜のローブ』効果は、火魔法の強化、強い火耐性に強い物理耐性、そしてローブに魔力を通すと火を纏う事が出来ます」
「耐性はどこまで行けるんだ?」
「火竜の鱗を使っているものですので、流石に火竜の火はダメージが入りますが、それ以下だとほとんど効かないでしょう。ただし爆風などは熱や火は防げても風は受けますので吹き飛ばされないように注意が必要です。そして物理耐性ですが冒険者にしますとBランク以下の方だと傷を付けることすら出来ないでしょう。ですが衝撃は通しますので骨折はすると思います。筋力が高い方でない場合は注意が必要ですね」
「ではそれを貰おう」
「はい、魔導師の杖が金貨87枚、火竜のローブが金貨116枚、合わせて金貨203枚になります」
冒険者カードと金貨203枚を渡すと、金貨30枚と銀貨45枚が帰ってきた。
「性能のいいアクセサリーと、サブウェポンとして剣が欲しいんだけど」
「アクセサリーで性能のいいものとなりますと、この『反魔のピアス』等がいいものになります。値段は金貨30枚性能は魔法耐性20%と、このピアスに魔力を込めておきますと魔力の続く限り使用者の使える魔法を反射してくれます。込められる魔力量はステータス値にして片方20程度、剣はサブウェポンとの事ですので出来るだけ軽く使いやすいものを持って来ました。『ミスリルソード』レイピア型になります。ミスリルは軽く丈夫な上、魔力も通しやすく魔力を通すと斬れ味と硬度が上がります。片手剣になりますので片手が塞がっていても使えます。値段は金貨50枚です」
「分かった、買おう」
金貨80枚と冒険者カードを渡す。
金貨12枚が帰ってきた。
「またのご利用お待ちしています」
店主もニコニコだ。
随分時間が経っていた。
今は大体昼から夕方に変わる直前と言った感じだろうか、時計が無いから分からんが多分4時位だ。
宿に帰る途中にギルドの前を通るのだが何やら騒がしい。
冒険者の数も多い。
何かあったのだろうかと入っていく。
「あ!ジェードさん。良かった、今日は魔の森には行かれてなかったのですね」
「アリアさん、何やらいつもと様子が違う様ですけど何かあったんですか?」
「はい、ゴブリンの氾濫が起きている様なんです!」