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週末のラグナロク  作者: 黒石翼
Ragnarok 1
6/7

world Ex 魔銃作戦 ~真龍~

 ここ、ヨーロッパの某国。ここにいる男、バイオネッタ・スタル…略称、イオ、18歳。15歳のとき、ちょっとしたことからガラの悪い輩とトラブルを起こし、ひん死状態に陥る。しかし、その時『過門(カオス・ゲート)』が開き、『過具(カオス・ウェポン)』『魔羽剣・雷光砲(ミキンズ・エレフル)』を手に入れる。

 しかし、それは強さと共に『孤独』をも手に入れることを意味した。事実、彼は家族からも見放され、友達もおらず、片思い中だった女子からも避けられ、真に彼は孤独を手に入れたのだった。


 そんな彼の生い立ち以前に、この『魔羽剣・雷光砲(ミキンズ・エレフル)』は強力である。できることは、主に四つ。

 一 魔獣を生成できる。属性を付与することも可能。

 一 雷光と風の威力は神レベル。雷と風の力だけでも充分強い。

 一 魔聖剣を使いこなす。魔聖剣は世界の中でも使いこなせる人物が極端に少ない。魔物にも聖物にも有効打となる。

 一 魔の銃を使いこなす。これが非常に強力。

努力によって後天的に手に入れた俊足と合わせ、魔聖剣への耐性もあったことから、のちに彼は『聖なる魔銃使い』と称されることとなる。

 

   ※


 することもなくできることもなくなり人生に脱力した彼が行きついたのは、強者との戦闘だ。

まずは、伝説の生物とされているドラゴンと戦うことにした。北欧の奥地には、驚くほど多くのドラゴンが生息している。

聞くところによると、近くに『竜の巣(ドラゴンケイブ)』があり、そこには『漆黒の真龍』ファーブニルが住んでいるという。彼はファーブニルに勝負を仕掛けに行くことにした。


 三時間後、彼の姿は竜の巣の最奥部にあった。石でできている扉を力ずくでこじ開けると、そこには真龍・ファーブニルの姿があった。

『これは人間、我に、何の用だ』

「…俺は、強くなりたい。あんた、なかなか強いんだろう?オーラでわかる。俺の相手をしてくれ」

『そうか…まあ、ここまでやってきたことを考えてもお前は相当な手練れだな。いいだろう。ただし、我も本気を出す。殺しても文句は言うなよ』

「当たり前だ。舐められた真似は屈辱的だからな。俺も…本気を出させてもらおう」

 ムジラーは自らの『覇』の力を高め、古の呪文を呟きだす。

「『我、永遠の時を彷徨う魔剣銃なり!天からの再厄を身に纏い、天界までをも支配する!汝を電滅への支道への贄と成そう!』『禁成序確(プロファースト)』!!!」

 ムジラーの決め手である、『禁成序確(プロファースト)』。光速を凌駕する速さに、一撃の衝撃を極限まで高め、魔王を一時的に上回る魔力を手に入れる。

 『ほう…明らかに人間とは思えぬ(オーラ)を感じる……面白いな。では、我も本気を出そう!』

そして、漆黒の真龍も呪われた言葉を紡ぎだす。

『〈我、絶対を漆黒に堕とす真龍なり。幾重に封じられた震の力、今ここに解き放つ〉〈震刻の猛龍〉』

 どうやら、ファーブニルも本気を出したらしい。オーラが龍王クラスになっている。このファーブニルと戦えるドラゴンは、『黄昏の執拗龍』ニーズヘッグか、『絶対の龍王』テュポーンか、『永久の八叉龍』八岐大蛇(ヤマタノオロチ)くらいであろう。

 イオは少し距離をおき、伝説の魔獣、『ザッハーク』のコピーを創り出し、自分も魔銃に聖弾を込める。ファーブニルに向けて形状変化の聖弾を四発撃ちこむ。撃った途端に光速でファーブニルの裏側へ回り込み、魔聖雷剣で、力の限り斬りこむ。

 イオの渾身の一撃だ。斬りこみも聖弾もクリーンヒットした。どれほどのダメージになるだろうか。

 しかしファーブニルは、その攻撃を無傷のように、まるで何もなかったかのように受け流した。そして、口から龍炎を吐き出す。

 イオはザッハークのコピーで盾を作った。のだが、龍炎の威力はすさまじく、ザッハークコピーは消滅し、とっさに魔銃でガードしたイオも軽傷を負った。

 …決してザッハークコピーが弱かったわけではない。というか、龍王クラスの攻撃なら受け流せるのだ。それほど、ファーブニルの攻撃力は凄まじいということか。

 攻撃力重視の相手なら、変化技には弱い場合が多い。そう考えたムジラーは魔銃から毒弾を数発放ち、ファーブニルに命中させた。この毒は、何もかもを削っていく。攻撃力も、防御力も、魔力も、体力も、何もかも。

 流石にこれは効いたのか、ファーブニルはもがいている。その隙を狙い、イオは魔弾、魔聖剣のフルバーストをおみまいする。隙を突かれたのが痛手となり、その攻撃をまともにくらったファーブニルはその場に倒れこんだ。

 なんだ、こんなもんなのか?と思うイオを横目に、ファーブニルは、倒れたまま口から何か黄金の弾を吐き出す。仰向けに倒れたまま自分の真上に吐き出したから、当然自分にそれはかかる。イオがあれはなんだ、と思っているその時、ファーブニルの傷が癒えていった。

 イオはすぐに納得する。あれは『精』の力だ。そんな回復方法ありかよ…?

『さあ、戦いを続けるぞ』

ファーブニルが呟くやいなや、イオは雷光弾をフルバーストで連射する。…が。

 いつの間にか背後に回られていたのか、イオは後ろからファーブニルのひっかきを受けてしまった。

 常人ならここでアウトだろう。が、今のイオは光速で動ける。何とか避けたが、かすり傷をもらった。

 これは…回復してからの方が攻撃、速さ共に上がっている…?

 イオは勝つための仮説を立てる。一つは、体力が上昇しようとなんだろうと、圧倒的攻撃力で一撃。もう一つは、持久戦で戦う。

 少し考え、結局攻撃力に全てを注ぎ、一撃でねじ伏せることにした。


 しかし、このままでは攻撃力が足りない。イオは銃を異空間にしまい、『魔羽剣・雷光砲(ミキンズ・エレフル)』から『斬・創刃(スラッシュ・メイク)』に変化させる。なんとこのイオ、二つの『過具(カオス・ウェポン)』所有者なのだ。

 この『斬・創刃(スラッシュ・メイク)』、『帝剣創造(ソード・クリエイト)』の下位互換。燃費の悪いチェスターと言えばわかりやすいだろうか。しかし、この『禁成序確(プロファースト)』中のイオなら難なく使いこなせる。

 イオは『破壊の聖剣』デュランダル・エグゼクティブを創り出し、スタイルを魔聖剣とデュランダルの二刀流とする。これを手に持つことで素早さは若干落ちるが、決して遅くはない。

 イオはデュランダルを振るい、ファーブニルに斬りかかった。よけようともしないファーブニルは、まともに攻撃を食らう。相当な攻撃力で斬りかかった。が…。

『痛いな…!面白い、全く面白いぞ人間!壊してやりたくなる…![禁じられた滅を我はここに解き放つッ!]【禁じられし滅龍(プロヒビリットデスト)】!!!』

 『禁じられし滅龍(プロヒビリットデスト)』…別名「逆鱗」。龍ならばどの個体でも至れる至高の形態。攻撃力は神をも超える。ただし、自我を失って暴れ続けるという欠点がある。

『ゴアアァアアアア!!!』

叫び、暴れ、この狭い洞穴が崩れそうになる。これは…まずいか。

「仕方ない…。『我、永遠の時を彷徨う魔銃なり!地からの災厄を身に纏い、亜空までをも支配する!汝を昇核への苦拡への糧と成そう!』『禁成次確(プロセカンド)』!!!」

 『禁成次確(プロセカンド)』…『禁成序確(プロファースト)』の次段階形態。亜空間を自在に操り、土属性も使いこなせるようになる。

 イオはこの洞窟を亜空間で覆い、洞窟の倒壊を防ぐ。

 しかし、ファーブニルは止まらない。神速で迫り来るファーブニルを亜空間の『(ホール)』で防ぎ、『竜祓い(アンチドラゴン)』の土魔獣、『クラズン』を生成する。

 クラズンは神速のアタッカー。あまり強くはないが、ドラゴンには相性が抜群。過去にもアジ・ダハーカに善戦していた。

 さらにイオは、持っている剣を聖剣デュランダルから『反竜の聖剣』アスカロンに交換する。

 アスカロンとクラズンのアンチドラゴン二刀流で戦う。逆鱗状態のファーブニルといえど、さすがに苦戦しているようだ。

 ファーブニルは亜空間を駆け回り、真龍炎で辺りを燃やし尽くす。しかしクラズンは土属性のため火には強く、イオの盾にもなってくれるため、炎には苦戦していない。

 イオは神速でアスカロンを振り回し、ファーブニルに当てようとするのだが、何より相手も神速だ。衝撃波程度しか当たらない。

『いい攻撃だ、人間ッ!しかしな、アスカロン程度でこの我に勝てると思うなよ!』

ファーブニルはそう言い、クラズンを噛み砕く。自慢の竜祓い魔獣があっけなくやられてしまい、少しイオはうろたえる。これでは埒が明かないか…?

 ここで決めよう。…自分はとんでもない相手に喧嘩を売ってしまったかもしれないと、少し高揚しつつ、イオは最後の呪文を唱える。

「『我、永遠を支配せし魔銃なり!初まりを身に纏い、全ての始祖、超となる!汝を夢の極限へと導こう!』『禁成終確(フィディドラグナロク)』!!!」

最終段階。時間・空間・幻覚を操る。属性は全てが自由自在。

 イオは空間を操り、自身を透明化し、異空間から魔王剣グラムを取り出す。最古の『龍殺し(ドラゴンスレイヤー)』と称された魔王剣。この剣はあまりにも呪いが強すぎるため、禁成終確(フィディドラグナロク)状態でないとグラムの呪いに飲み込まれてしまう。この状態であっても、あまり長い時間は持っていられない。

 イオはそのグラムでファーブニルに渾身の一撃を与える。

『ぐおおおぉお、があぁあああぁぁああ!!!』

もはやファーブニルは言葉を発していない。だが、この攻撃を受けて高揚しているのはわかる。

 最後とばかりにイオは、光速で移動しつつも『魔羽剣・雷光砲』を取り出し、龍殺弾をフルバーストで撃ちこんだ。


 激戦の末、ファーブニルは倒れこむ。…もう完全に蘇りそうな気配もない。…イオの方も疲労の色がなかなか濃いが、これは彼の勝利である。胸をなでおろすイオ。……しかし。

『お前になら…俺の魂ごと…俺の魂と戦わせる価値がありそうだ。いわゆる〈魂龍化(オーバードレイグ)〉…俺は何もかもを失うが…今の数倍は強くなるぞ…?どうだ?』

と倒れこむファーブニルは言う。

 ―魂龍化(オーバードレイグ)―。聖書に記されし怪物…グラデウスが至り、悪魔・天使が手を結んで討伐にかかったという。そんなものを前に、俺は一人で戦えるのか…?聖書でも難敵とされていた…。魔王や大天使数名でかかってようやく倒せるような化け物。

 …正直、自信はあまりない。が、強敵との戦闘を避ける理由も見つからないのだ。「はい」と答えようとした矢先、洞穴の奥から声がする。

『やめなさい、ファーブニル。お前はそれでも真龍ですか、まったく』

現れたのは真蒼の龍帝こと―。

『なんだ、ヒュドラの姐さんか。わかったよ、たしかに今ここで魂龍化するのは利口とは言えないか』

そう、『永生の蒼龍帝・ヒュドラ』。不死龍とも称される。どうやら英雄ヘラクレスに封印された後で、それが解かれたようだ。

「お前が…不死龍、ヒュドラか」

『ええ、そう。あなた、逆鱗のファーブニルとまともに戦ってそれなのね…。まったく、『過具(カオス・ウェポン)』もちの人間は恐ろしいこと。…でもこれ以上はやめておきなさい。今のあなたでは私やこの先にいるニーズヘックには敵わない。死ぬ前に、帰りなさい』

「はいそうですか、とは言い難いが…『禁成終確(フィディドラグナロク)』の副作用で俺ももう限界に近い。今日は帰らせてもらおう。…しかしヒュドラ、お前さんとは戦ってみたいものだな」

『いいでしょう、次会ったときにはお互い本気で殺し合いしましょうか。でも私も話のわからないドラゴンじゃない。安心して帰りなさい。大丈夫、不意打ちとかはしないから』


   ※


 ―ドラゴンは強い。…でも、勝てない相手ではない。魔王剣グラムを使いこなせば、龍王クラスなら倒せる。…まだまだ特訓が必要だ。

 

 ムジラーの目標は、神クラスだ。ふと悪神ロキの噂を聞いてから、倒したくてならなかった。


 修行に修行を重ね、彼は北欧の山地、ズゲルという村の外れまで出向いていた。


  ※


 北欧、とある山地の奥深く。近くの村人が言うには、この先に悪神ロキが封印されし呪碑があるとのこと。

 イオは自らの高揚感を抑えきれなかった。


イオ編はあまり描きません。でも、確実に和紀達に影響を及ぼしているのです。そこは気長にお待ちください。

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