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週末のラグナロク  作者: 黒石翼
Ragnarok 1
5/7

world 4 死とか昔話とか

 このオーラは…少しばかり強そうだな。

「一家の恥、リーア。なんで生きてるのかなあ?どうせ長くは生きられないと思ってたら、どうやら長生きしそうで困っちまうなあ。こ、こ、で、死んでくれないかなあ?」

 なんだ、こいつ。それが家族への態度…いや、もうすでにリーアのことを『家族』とは思ってないんだろう。

 この前リーアと約束したこともあるし、こいつは俺の敵にもなるな…。ちょっと強敵っぽいけど…仕方ない。

「ん?お兄さん、ひょっとして噂の聖槍使い?あちゃー、まいったな、でもなー。『リーアの保護者が聖槍使いだったから帰ってきました』じゃすまねーんだよなー。お兄さん、やる?俺っち中々つえーよ。ま、俺っちはあんたに負ける理由も見えないけどなー。なにしろ俺っちはヨーロッパ随一の魔力使い。へへ、まー苦戦必至だとは思うけど。ここでおとなしくリーアを差し出してくれれば見逃してやってもいいのよ?」

はぁ…なんだこいつ。…戦うしかないっぽいな。

「俺が言えることはただ一つ。帰れ。そして二度とリーアに近づくな。勝負するってのなら受けて立つ」

「え?えええ?死んじゃうよ?いいの?ま、一人殺すのも二人殺すのも一緒か。おう、やろうぜ」

 いきなり、奴が飛び出してきた。俺は亜空間から素早く聖槍を取り出し、槍を分身させ、俺の周りに躍らせて守護槍とした。

 奴は手元から…魔力弾のようなものを出現させ、俺に投げかけてきた。なんだあれは。

俺は槍を振るい、弱い衝撃波で弾を相殺しようとした。が、それは予想外に硬く、ほとんど効いていないようだ。困ったな、どうしようかね…。

 守護槍をキャンセルし、『破』の力を付与させた槍に変化させた。破壊力重視のタイプだ。俺は飛んでくる弾に向けてこの槍で攻撃した。すると、弾は全て消えた。

 しかし…この槍でようやく壊せるのか。かなりの強度だな。少なくとも並の金属よりかは硬い。

「俺らの一族はねー、『死』を司る一族の末裔なんだよねー。そこのリーアはこの力を受け継がなかった欠陥品。魔物だろうと何だろうと、『死』からは逃げられない。ま、ある意味時間を操る、とも言えたりするのかな?な?」

 なるほど、あれは『死』か。『死』は聖なる力で打ち消せるだろうか…?

 破壊力を少し落とし、その分聖の力を付与させた。奴に向けて振る。奴はまた『死弾』を放ち、俺の聖撃波と死弾がぶつかる。と、衝撃波の中から壊しきれなかった死弾がいくつか俺目掛けて飛んできた。まずいな、あれはくらうとなかなかの特殊ダメージを負いそうだ。生命力激減とか…?

 俺は地面に槍を刺し、俺の地面の周り一帯から槍を突き出した。死弾を中心から刺し抜き、打ち消した。ふむ…ここまでしないと対応できないか…。

「ねえねえ、そっちから攻めてこないのー?オイラ、お兄さんの攻撃も見てみたいなー。なんちて?きはは!」

 なんとも鼻にかかる声…ちょっと苛ついた。

 俺は雷の力を自らに付与し、電撃のような素早さを得た。これはリーアの作る『速度の剣(スピニングソード)』の数倍の速さを得る。もっとも、それはあくまでも『リーアの作る』場合だ。あの能力は使いようによってはまさに無敵だからな。

 奴に近づき、槍を突き刺した。…簡単にかわされたが。

 

 …ああ、もう、うざったらしい。攻撃が全く当たらない。ここいらで戦況をひっくり返そう。俺は槍を天に掲げ、叫ぶ。

「『我、精霊との追約、覇の(ことわり)において、汝を限滅へと導く』、『狂精による永罰槍(クレイ・スピリスピア)』!!」

俺の中の『覇』の力を溜め、槍と精神を融合させる。

「この形態を使わなければいけないとはな。お前はちょこざいだ。とっとと終わらせてやる」

 俺はまず、頑丈な氷世界を生み出す。この形態は地形が簡単に抉れてしまう。流石に被害者を出してはまずい。

 俺は自らの周りに『(ホール)』を無数に展開し、そこから数えきれないほどの氷槍を生み出し、投げつける。これは自動追尾機能付きだ。何発かはかわされたが、二発ほどがヒットした。

「ちっ…いってーな。まあいいや。これぐらい本気を出してくれた方が俺もやりやすい。…『強制絶対死(フォースダイ)』」

ん?強制?あまり良いもんじゃなさそうだ…俺は周囲に『(ホール)』を生み出し、防御穴とした。大抵の攻撃はこの中に吸い込まれてしまう。

 しかし、奴は手元から精剣を創り出し、俺目掛けて突っ込んでくる。

 精剣…聖剣の上位互換だ。いかなる魔も太刀打ちできない。かつて、伝説の精剣により、魔王の一角ベルゼブブも倒されてしまったという。『聖』なら『魔』以外ダメージを受けないが、『精』まで進むとどんなものも浄化されてしまう。俺の『覇』も浄化されてしまいそうだ。

 さらに、あいつは『死』の特性をも組み合わせている。これは…大変そうだ。

 斬りかかってくる奴に、俺は氷竜を生成し、応戦した。『永罰槍』で向かい打つと、相手の絶対的な『精』で槍そのものを消されてしまうかもしれない。氷竜ならば、消されても困らないし、何より『ドラゴン』は信頼できる強さを誇る。『三叉槍』のときはドラゴンは苦手だが、『永罰槍』になれば話は別。竜属性をも使いこなせる。ただ、竜は強すぎる。俺にはまだ完全に使いこなすことは難しい。でも属性竜を生み出して戦わせることはできる。

「なんだよそれ、なんだよ、おい!…まあいいや。ドラゴンなんて所詮魔物だ。俺の『精』で消し去ってやるよ…!」

しかし、この氷竜は俺の自信作。簡単に負けない。そもそも、あいつは勘違いをしている。

 ドラゴンは、『聖』にも『魔』にも関わらない生物。しかも、世界に有数の『消剣』、もしくは『龍殺し(ドラゴンスレイヤー)』でもないかぎり弱点が存在しない。『消剣』はいかなるものをもこの世から『消去』する。ドラゴンだろうがドワーフだろうが堕天使だろうが大天使ガブリエルだろうが、『消す』。

 『龍殺し(ドラゴンスレイヤー)』は精剣リジルや魔王剣グラムなどが当てはまる。今のところ唯一のアンチドラゴン器といえるだろう。

 奴は、俺の氷竜に精の力が効かず、かなり狼狽していた。

 俺の氷竜、『ティラー』は、素早さと細かいテクニックが売り。ちょこまか動いて、相手の隙を見つけて即氷漬け。絶対に敵に回したくない。

 奴がティラーに苦戦している最中、俺はもう一匹、風竜を生み出す。『ウォーマット』だ。

 絶大な攻撃力と防御力を誇る。敵の攻撃を受け、それをカウンターにして返す。初見の相手には、驚くほど攻撃が通る。


 ティラーとウォーマットの二匹に苦戦しているあいつをわき目に、俺はあいつの『絶対死』を分析していた。するとわかったことは、あいつは『死』だのなんだのと言っているが、結局は頑丈な魔力と精なる力を使いこなしているだけだった。まあでも、頑丈な魔力と精なる力だけでも充分強くはある。

 …でも、一部分析できない点がある。たしかに、あいつは虚言を吐いていたが、実際『死』のような無機質なオーラも感じたのだ。あのオーラは、いったい…?

 そろそろ俺も戦いに加勢しよう。『(ホール)』から魔剣ティルフィングを取り出す。俺のコレクションの中でもかなりの荒くれものだ。別名、『呪剣・セル』。

 相手に勝手に斬りかかってしまう。この剣、古代より実践慣れしているからか、いい動きをする。

 俺は奴に高速で近づき、常に移動しながら斬りかかり続ける。俺への攻撃を防御していると、クライズが隙を狙って激流を飛ばす。高速で動き回る俺たちを相手に、奴は確実に焦り、疲労し、ダメージも負っていた。これはもう長く続かないだろう。


 それから少しして。

「お前、ちょっと強すぎるんじゃないか?ひかせてもらおうかな…?って言っても見逃しちゃくれないか」

「わかった。じゃお前今すぐ去れ。二度と、金輪際、リーアに近づくな。わかったか。次近づいたら容赦なく殺す」

 俺だって殺しがしたいわけじゃない。これでいい。改心して、迷惑をかけなくなれば帰す。

「え、ホントに?お前さん、お人よしだな…いや、なんでもない。じゃ、俺帰りまーすよっと」


   ※


 『錦荘』に帰り、夕食にする。

「ああ、疲れた。もうああいうのやめてほしいなあ」

「和紀」

「なんだよ」

「私…怖い」

「ん?」

「またあいつとか…あと父とか……父はあいつの数倍から数十倍は強い…怖い」

「大丈夫だって」

「和紀…死んじゃう」

そのリーアの瞳は、潤んでいた。…セルド家、あんたらは、この娘に酷い傷を残したようだ…。

 俺はリーアの眼をまっすぐ見つめて、手を握り、言う。

「俺は死なない。これ以上、リーアに泣いてほしくないんだ。だから、リーアを傷つけたやつは、俺が何者だろうと、殴る。それだけだよ」

刹那、リーアが俺に抱きついてきた。

「ありがとう…ありがとう……ありがとう…」

俺はたまらなく愛おしく、しかし恥ずかしく、

「い、いいからはやく食えよ、冷めるぞ?」

と言った。

「うん」

と返事をしたリーアの顔は笑顔だった。


   ※


 なんだか、あの一件からリーアの態度が大胆になってきている。そのたびに、俺は照れくさくて、でも愛おしくて仕方なくなる。

 たとえば、ことあるごとに抱きついてきたり、夜に俺の簡易布団に潜り込んできたり。正直言って嬉しいんだけど…でもなんとなく自制心を働かせているから、結局ナニか進展があったわけではない。……俺も臆病だな…。

 

   ※


 あくる日。もっと勉強が必要だと感じた俺とリーアは、放課後空島さんの家にお邪魔することになった。もちろん許可はとってある。

 指定された住所の地まで行くと、そこはどうやら…かなり年季が入っている(早い話がぼろい)一軒家だった。庭は広く、よく整備されているが、家そのものがかなりアレなので、少し貧相に見えてしまう。…こんなところに住んでいて、あの時給はおかしいんじゃ…?

 っていうかスマホとか持ってる余裕はあるのか?絶対ないと思うが…。

 俺は「着きました」とメールをした。その五秒後、目の前のドアが開き空島さんが顔を出した。

「どーもどーも。ささ、入ってくださいです」

「お邪魔しまーす」

「お、お邪魔します…」

 中は意外と広い。っていうか、家具がない。本当に何もない。ええ…?

 しかし、部屋の隅に階段があった。どうやら地下室に通じているようだ。空島さんについていくと…。

「上の部屋はあくまでもハリボテです。ここが私の本当の家です」

 ひ、広い…!余裕で端から端まで百メートルはありそうな廊下の途中に、様々なドアがついている。俺のグラウンドなんて歯牙にもかけない大きさなんだろう…。


 とある部屋に着く。どうやらリビングルームのような、リラックスできそうな部屋だ。

「好きなところに座ってくださいです」

俺とリーアは四人掛けの大きめのソファに座る。空島さんは一人掛けのソファに座った。

「さて。よくわからないですけど、今日は『過具(カオス・ウェポン)』についてお話したいと思いますです。いいですね?」

「はい。僕は今まで『過具(カオス・ウェポン)』についてよく知らなかったので、何でもいいので教えてください」

「はいです。もともと話すのは好きですから、まあゆっくりお話しましょうです」

 少し長い話。


   ▼△▼


 「むかーし昔、三千年くらい昔、初めて『過具(カオス・ウェポン)』所有者が見つかったです。大昔の宗教、『ルシア教』の経典である『リリル』に、こう記されているです。『私は、あのような生物を目にしたことがない。それはもともと人間であったが、ある時翼の生えた怪物と成り、この地を荒らし始めたのだ』、これは今でいう『終末の身龍化(ラグナロクドレイガー)』と推測されているですね。別名、『終末の始祖(ファーストラグナロク)』。これをもとに、凶悪な『過具(カオス・ウェポン)』は『ラグナロク』と呼んだりもするです。

 時はもう少しすぎて、紀元零年。現在では主流ではないですが、閉訳聖書に『主を射抜く槍(エンペラーラグナロク)』が登場するです。…おそらくですが、かずさんの『祝聖の三叉槍(セイント・トリアイナ)』とは別物ではないかという説が有効です。が、私には私なりの意見があるです。それは、『神を射抜く槍(エンペラーラグナロク)』の一部が後天的に『祝聖の三叉槍(セイント・トリアイナ)』となった、という説です。根拠としては、昔インド奥地で途轍もない強さの聖槍が見つかったそうです。ほかにもそういう発見はあるです。まあ、何にしてもただの仮説です。気にしないでくださいです」

 閉訳聖書…新訳聖書とも旧訳聖書とも違う、歴史の陰に隠蔽された、いわゆる『閉ざされし過書(アナザーバイブル)』。かなり限られた者しか閲覧できない。俺も存在を知っているだけだ。

「ほう…それで、『過具(カオス・ウェポン)』にはそれぞれ劇的な成長があるんですよね」

「そうです。主に『終末創造主(ラグナロク・メーカー)』と呼ばれるものです」

終末創造主(ラグナロク・メーカー)』…俺の『狂精の永罰槍(クレイ・スピリスピア)』は含まれるのだろうか…?よくわからない。それともまだ進化の可能性があるのだろうか。

「かずさんはたしか、『狂精の永罰槍(クレイ・スピリスピア)』に至れるですね?でもあれはまだ『終末創造主(ラグナロク・メーカー)』とは言えないです。あれはどちらかというと、『過具(カオス・ウェポン)』のシステムを軽く無視しているです。本来、竜が苦手ならずっと苦手です。進化で苦手ではなくなっても、使いこなせるようになんてならないです。一応、『システム』というものはあるです。まだまだ解明されていないですけど。かずさんのそれはシステムに反しまくっているです。反抗期です。

 ちなみに『竜』と『龍』の違いはわかるですか?前者は主に弱いドラゴンを意味するですね。まあ例外はあるですが。後者は『真龍』、『龍王』、『龍神』などのランクが上の方のドラゴンを指すですね。

ドラゴンは昔からよくわからない存在として扱われてますです。でも、怒らせるとそのほとんどが異次元級の強さを誇るです。いわゆる『逆鱗に触れる』というやつです。こわいです。

 中には魔物とかが封印されている過具もあるです。私はあんまり会ったことはないですけど、『死神の鎌』なんかは死神に命を刈られた人間の恨みで形成されていると言っても過言ではないです。ほかにも、ドラゴンを封印してできた羽根型の過具なんかもありますですし…。

 さて、かずさんのはレアの中でもかなりのレアです。レアレアです。ひょっとしたらレアレアレアレアくらいあるです。頑張ってくださいです」

 システムの無視…言われてみればそうかもしれない。そういやシズって奴が俺の槍を『奇跡』って言ってたっけ。

「…あ、そうだリーアさん。んーと、あなたは…剣系能力の中では珍しい『帝剣創造(ソード・クリエイト)』を持ってるですよね。私の見解だと、自由に剣を創造できる能力は、可能性的に言えばかずさんの聖槍と同じくらいか、それ以上です。なにしろそんな能力、滅多にないですし。想像力…そして創造力が大事になるですね。…いろんな攻撃を見て、世界中の剣について研究してみると良いです。ちなみに、聖剣、魔剣に対する耐性はどれくらいです?」

「…並の聖剣なら問題はない…けど…精剣はほとんど扱えない……魔剣はちょっとだけ持てる…でも長時間は身体がもたない……ていうかそもそも聖剣も魔剣も創り出しても弱い力しか付与できないから…」

「そうですか。じゃあまずは基礎体力ですか。かずさん、トレーニングとかはどれぐらいしてるですか?」

「ほぼ毎日ですかね。一回に十キロ前後を走ります。朝夕どっちもやる日もあります。少しずつ結果は出てると思うんですが…」

「そうですか。うんうん。気長に待ちましょうです。時間はまだまだあるですからね。…他に何かあるですか?」

 もう特にはないかな。俺がリーアの方を向くと、リーアは頷いた。

「いえ、どうもありがとうございました。これからもよろしくお願いしますね」

「あ、ありがとうございました…頑張ります…」


   ※


 色々と勉強になった。これからどうしようかな、特訓の仕方も変えた方がいいのかな…?

「和紀」

「ん?」

「今日の晩御飯は」

「そうだな…リクエストはあるか?まだ六時だし、簡単なものなら作れるぞ」

「アジ・ダハーカ…じゃなかった、野菜炒め」

「お、そうか。わかった、じゃあちょっと買い物しなきゃな」


 何と言うか…可愛い女の子と二人で買い物…一か月前までは考えられなかったな。とりあえず、俺は幸せである。結局こういう平和な日々が一番だ。


 ちなみにこの光景を幼馴染である嘉村優斗に見られていることに気付かず、翌日問い詰められることになったのはまた別の話である。


   ※


 朝。目が覚めると、俺の携帯が震える。メールか…?

『どうやら北欧の悪神ロキが倒されたです。復活には数百年から数千年の年月は必要らしいです』

空島さんからだった。

 …悪神ロキ。一度戦ってみたかったな…。

「神々に、その槍は届く…?」

と、リーアが訊く。

「さあ、どうだろうな。聖書によると主イエスを貫いた聖槍があるそうだが…」

「…でも、あまり無茶はしてほしくない…かも」

そう言ってリーアは頬を赤く染めた。かわいい。


   ※


 学校に行く。

 帰り道。道中で、とある広告が気になりコンビニに寄る。


 グッズ売り場にあたふたしている女性を見つける。あ、この制服はうちの高校の制服だ。…悩んでいる?動きが不審だったから、声を掛ける。

「ど、どうしたんですか?」

「え!?あ、はい、あのー…あ、えっと…」

なんだなんだ、騒がしいな。

「あの、落ち着いて。制服から見て、雫高校生ですよね」

「え、あ、はい。あ、ホントだ、あなたも雫ですか」

「はい。あの、どうかしたんですか?」

「え、えっと、このグッズが欲しいけど、お金がないなあと思ってて…」

見ると、それは某大手ゲーム会社の主力キャラクター、ドラギンだった。竜のようなペンギンのような…。なんとも言えないデザインで、あまり評価も高くは無いが…。

「ドラギン、好きなんですか…?」

「はい!もう家にはドラギングッズしかないと言っても過言じゃないくらいたくさんあるんです!…でも、もうお金もスペースも無くて…」

「そ、そうですか…」

「…ん?あなた、ひょっとして『過具(カオス・ウェポン)』所有者ですか?」

「ぇ!?どうしてそれを…?」

変な声が出た。

「私も持ってますから。『滝壺の聖魔弓(フロスティネボティ)』と言います。弓矢の能力ですね。気配でわかるんです」


 少し話が聞きたくなり、そのコンビニが家から近いこともあって、家に誘った。相手も、「はい!ぜひぜひ!」と言うから家で話し合うことになった。


 道中。軽く世間話をする。

「…じゃあまず、お名前を…あ、僕は西田和紀といいますけど」

「木津麻里奈と申します。2-1です。…西田君は2-3ですよね」

「あ、はい」

 …特に話すことがないなー…。こういう沈黙は嫌いだ…。

 と、道の端に何やら怪しげな少年を見つける。その少年は何かを呟いている。

「…古の時、我は失われし闇を必ず取り戻すと神に誓った……」

…近寄っちゃいけないタイプだろうか…?

「ん…?そこの男…何やら魔のオーラを感じる……貴様もあの『組織』の一員なのか…!?俺は誰からも逃れられないのか…!?」

その少年は俺を指さす。

「は、はい?ってか俺、聖槍つかいなんだけど」

「否。『組織』をも壊滅させてみせる。『黄昏の斧槍(トゥルー・ハルバード)』…!!」

「…」

 えーと…こいつは……かなり重度の中二病患者だ…!

「さあ、我の一撃をくらうがよい…!『Full Shelling』…!!!!」

「もー、ヒロ、いいから帰るよ」

木津さんがその少年の襟首をつかむ。

「ぐぇ…我、『蘇眼の霹靂』にはそれしきの」

「紹介します。幼馴染の石高博成といいます。御覧の通り、かなり『イタい』中二病ですね。あ、誤解しないでほしいんですけど、決して『過具(カオス・ウェポン)』所有者ではないので、すごく弱いです。勝負とかにならないので注意してください」

「何を言う。我の『蘇眼の霹靂』は神をも戦慄させた。『組織』ごときに屈したりしないのだ」

「和紀…この者……怖い」

「大丈夫だ。多分リーアの方が強いくらいだと思う」

「ええ。決して悪い奴じゃないんで、仲良くしてあげてください」

「何故…『組織』の者と交流せねば…?…そうか、これは情報戦なのか…!」

 なんかよくわかんないけど納得してくれた…のかな。


 どうやらこの生活、賑やかになりそうです。


設定の洪水回。後々への伏線が多く張られていますので、しっかり読み込んでいただきますと後々さらに楽しめるかなと。

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