平賀 量子(ひらが りょうこ)
朝食の準備を終えた彼は、まだ寝ているであろうこの家主を起こそうとする。
家主は寝相が悪くなかなか起きない、しかし放っておけば昼過ぎまで寝ている。余りにも起きるのを嫌がるので一度放っておいたことがあるが、なぜ起こしてくれなかったのだと、一週間ほど拗ねてしまった。
面倒なので毎朝家主を起こすのも日課となっている。
家主の寝室にいき扉をノックする、返事がない。何度か繰り返しノックする、やはり返事はない。
いつもではあるが確認をとって部屋に入る。「叔母さん、入るよ。」目にした光景に、嘆息する。
そこには上半身裸パンツ一枚の女性が仰向けに寝ていた。
その女性は二十代半ばであるが十代と言われてもおかしくなく、顔は整い美人と言われる類いであり、体は不摂生な生活をしていてもなぜか弛んでおらず見事なプロポーションを維持する。
家の外の評価は「才媛で知的な美人だが子供っぽい性格もあり親しみが持てる好人物」と呼ばれているが、家の中の僕の評価は「家事はできず,ずぼらな性格で、自分が指摘してやっと身だしなみを整えることが出来るダメな叔母」というものである。
客観的に見れば男性陣から羨ましいとお叱りが来るかもしれないが、内情を知っていれば勘弁してくれと思う。
例えどれだけ美しい花でもそれを維持するのがとても難しかったり、理不尽な要求を多々してくるとなれば、それが千年の恋でも色褪せるであろう、やはり花は遠くで愛でるものとしみじみ思う。
そんなことを思いながら、涎を滴ながら寝る家主を何度も揺り起こす。
「朝だから早く起きて。ご飯出来てるし、今日から僕、学校なんだから早く起きて。」なかなか起きずにむずがる叔母を起こすことに成功。
そんな叔母の朝の第一声は。「うーーーーー、あ、創くんもしかして夜這い?」
「・・・・・・もう朝だよ。」
げんなりしながら返す僕。
「そっか・・。男の子だから若いからしょうがないよね。」
「・・・・・・・」
「お姉さんが創くんをちゃんとリードしてあげるから。」
目を詰むってこちらに両手を差し出す叔母。
「創くんだったら・・・いいよ。」
そんな覚悟を決めたような顔の叔母に「量子さん・・・、。それじゃあ遠慮なく、いくよ。」
僕は機械駆動義手によるアイアンクローを決めた。
数分後、苦痛に泣きながら見悶え足元にうずくまる叔母を見やりながら、僕は「何でこの人はこの人なんだろう、動かず喋らなければ尊敬でき魅力的な女性なのに。」と親愛なる叔母にいつもの言葉をかける。
「おはよう、量子叔母さん。」そんないつものやり取りをしながら、平賀創(ひらが そう)と叔母である平賀量子(ひらが りょうこ)のいつもの朝がやって来た。