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016

「あの、エスメラルダ様…これは一体?」


 一番初めに声をかけてきたのはキールだった。

 その後に、クラリーチェと父も私に意識を向け出した。


「いや…その〜…ね?」


「ちゃんと答えなさい。お前にはその義務があるだろう?」


 いえ、お父様。

 その様な義務は聞いたことも無いのですが。

 ふふっ、でも今日の私には父に勝つ手段がある。

 なんてったって…。


「…メイドが…お父様が、不倫って言うのをして弟が出来たって言うから…私兄弟が欲しくて…お父様に会いに来たの。そしたらお父様はいなくて、そこにはルリトが居たの」


「エ、エメっ?」


 お!驚いてる驚いてる。

 と言うか、7歳の娘の口から不倫って言葉が出たからだろうな。


「それでね?ルリトの魔力が溢れそうだったから、助けてあげようとして…」


 一生懸命上目遣いをして父を見上げる。

 ちょっとぶりっ子っぽくなってしまったが、そこはご勘弁を。


「お、お嬢様…なんて優しい方なのでしょう」


 私を何故か弱愛しているクラリーチェがそう言った。

 クラリーチェは、私の悪役令嬢として活躍?していた時から何故か私を慕ってくれて居るのだ。

 それに、彼女の口からは、たまにそう言う言葉が漏れる。

 どうしたものか…。


「…エメお嬢様。私は、魔法はやらないで下さいと言いませんでしたか?」


 ところが、上目遣い程度では騙されてくれないキール。

 声色から怒っているのが良く分かる。


「…私、そんな事言われてないわ。キールは私に魔法を教えてくれないとは言ったけれど」


「…教えないと言うことは駄目だと分からなかったのですか?」


「だって…」


「だってではありませんっ!」


 キールの強い言葉に私の肩がビクッと震える。

 キールが怒ってる。

 私が…悪い子だから…?


「…エメ姉を虐めるな……」


 …?エメ姉?

 私のことを姉って呼ぶのは一人しか…。


「エメ姉を虐めるなっっ!!」


 やっぱり!

 ルリトだ。

 でも…どうして…。


「エメ姉はホントに俺を助けてくれたんだよっ。魔力持ちでも無いお前らに、魔力持ちの苦しさが分かるもんかっ!」


 …ルリト…ごめん。

 私、魔力で半分遊んでます。現在進行形で。

 うん、…なんか…ごめん。


「ルリト…」


「リトでいい。母さんもそう呼んでた。…あと」


「リト、リトね。ああ、私のことをエメ姉って呼んだこと?別に良いわよ。結構気に入ったし。公の場ではエスメラルダお姉様と呼んでくれれば」


「…ありがとう」


 …デレたな。


 さっきのリトの言葉でキールまで黙ってしまった。

 キールは幾ら魔法を使えると言ったって、魔力持ちとはまた違う。

 戦争した時、敵国が魔法を使ってきた時、応戦する為だけに覚えさせられた技術だ。


 それに比べて私たちは、オッドアイを見れば魔力持ちだと直ぐに分かり、それだけでいじめの対象になる。

 お茶会などをすれば、壁の花になる事間違いなしだ。


 私も、近づいてくる人はお家目的か、いやらしい目で見てくるので、冷たくあしらう。

 だが、それが噂を。

 噂は噂を呼び、私は悪徳令嬢と化してしまった。


 初めてお茶会に出た時は、いっそ亡命してしまおうかと思うほどだった。


 まぁ、今はあの誕生日パーティーの挨拶のお陰でマシになっているけれど。


「…はぁ。分かりました。魔法に関しては何も言わないことにします。ですが!変なところから問題を持ってくるのはやめてくださいよ」


「分かっています」


「よろしい」


 おおっ、キールが許してくれたよ!

 しかも、魔法についてお許しが出たっ。

 これで気兼ねなく…。


「ですが、今後は魔法が使えるとバレないようにする事と、魔法でイタズラなどはしないようにして下さい」


 …まぁ、それくらいなら許容範囲…で…。


「あと、緊急事態以外、私に許可なく魔法を使うことを禁止します。ルリト様もですよ」


 それ、全然自由じゃ無いじゃん…。

 リトが不意を突かれて「えっ?俺も?」みたいな表情をしている。

 可愛い。


 …そう言えば大事な事を忘れてた。


「お父様っ!」


「なんだい?」


「リトは絶対、弟にならなきゃ嫌ですからねっ。そうじゃなきゃ私、家出してリトと暮らしますからっ」


「エメ姉様〜!」


 リトがキラキラした目で私を見る反面、父は沈んだ目で私を見る。


「エメ…分かった。尽力する」


「絶対ですからねっ」


「分かった…」


 よし。

 これでリトとずっと一緒にいられるよね。



 …ん?あれれ?

 確か《プラネット》では、リトは姫巫女の攻略対象で、エスメラルダに義理の弟だと虐められているルリトは心を閉ざしてしまって…そんなルリトの心を姫巫女が溶かしていくとかじゃ…。


 うん。

 フラグは折りましょう。

 私は絶対にリトを虐めたりしません。

 と言うか、虐める気なんて微塵もありません!!

 この命に誓います!!


『エメ…?』


 意気込んでいた私を、ラルダが不思議そうな目で見つめてきた。


『ドウしたの…?』


「な、なんでも無いわ。リトも行きましょう。今夜はまだ部屋がないでしょう?私の部屋で一緒に寝ましょう」


「ああ。そうする」


 ふふっ。

 私のベッドは広いので、二人くらいなら余裕で寝れるはず…。

 勿論、ラルダとフィルも一緒に。


 今日はいい夢が見られそうです!

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