私と外の世界 2
街の名前がとある小説と一文字違いだったので一応変えておきました。
ヘルン⇒ヘッタナ
になってます。
あの後、なんとか気まずい空気から脱出して今は四人でヘッタナの街に向かってます。
男の人はマーカスさんで女の人はマーカスさんの奥さんでメアリーさんと言うらしい。さっきは緊張して二人のことまで気が回らなかったけど一緒に歩いているうちに二人のことも少しずつ分かってきた。マーカスさんは明るくて話しやすい人、なんか小説で真面目で爽やかな好青年っているけどそんな感じだよね。畑仕事とか似合いそう。奥さんのメアリーさんは一見、冷たそうな印象なんだけど会話をしてる時とかマーカスを見てる時は表情豊かで優しい人。でも、メアリーさんはマーカスさんと違って隙がない歩き方なんだよね。私みたいに狩りで鍛えたのかな。二人は花畑でデートの予定だったらしいけど私みたいな記憶喪失の女の子を一人で歩かせるなんて心配だから一緒に来てくれるんだって。とっても心強いです。二人に足向けて寝れませんな。
ああ、そうそう二人のことと言えば驚きの情報があったんだよね。なんと二人とも今、向かってる街の冒険者ギルドの職員さんなんだって。吃驚だよね。外の世界で初めて会った人が用事のある組織の関係者だもん。歩きながら冒険者ギルドのことを教えてもらって、ギルドに着いたら登録の手続きをしてくれるみたい。こんなにトントン拍子で私たち幸先良いよね。
「サツキちゃんは何か武器を使えるかい?」
「武器ですか?」
「ああ、登録するときに使用武器の登録もするんだ。勿論、ギルド側から武器の扱い方を習うことも可能だよ」
ほほう、武器の使い方を教えてくれるとはなんて親切なんだ。まあ、私は使えるけどね。うーん、武器かぁ。短剣とクロスボウかな。他の攻撃方法だと全部魔法だし。外の世界の魔法技術がどれくらいかわからないから黙っといた方が良いかな。まだ、こっちに来たばっかりだから目立つフラグとか立てたくないし。でも、クロスボウってあるのか?弓はあると思うけどクロスボウは小説だと無いパターンの方が多かったし、どうなんだろ。ウィニティー知ってるかな。
『ウィニティー、ウィニティー』
『何?』
『クロスボウって、ここあるかな?説明書に書いてなかった?』
『あるよ。でも、弓を使う人の方が多い』
『そうなんだ。じゃあ、登録のときに短剣とクロスボウって書いても問題ないよね』
『大丈夫。唯、サツキ様が持ってる連射式は無いから人前でやるときは単発でやって』
連射式無いのか。別に単発でも問題は無いけど打つまでが遅いしセットするのめんどくさいんだよね。まあ、そこは我慢するしかないか。
「起きてすぐに鞄の中をみたらクロスボウと短剣があったのでたぶん、使えると思います」
「そっか・・・ギルドで仲間が生きて待っててくれるといいね」
え!?ちょっとマーカスさん、小声で何言ってんの!?聞こえてないと思ったら大間違いだよ!帽子で隠してあっても私の耳にはちゃんと聞こえてるんだから!
『サツキ様、この二人は俺たちが盗賊とかに襲われて仲間と逸れた子供だと思ってんじゃねえか?』
『そんなわけ――――』
『記憶喪失もさ、襲われたときのショックで一時的になくなったとかそんな感じじゃないか?』
『えー、私そんな風に見えるの』
『サツキ様の身長って、外の世界だとかなり低いってヒイロ様が言ってた』
『143センチの16歳なら探せばいるでしょ』
『16歳の平均身長は168センチだって、ヒイロ様言ってたぞ』
168センチだと・・・そんなバカな。
って、言うべきシーンなんですよね。残念ながら私は気にしないのだよ。平均が168なら今の私って10歳か11歳、もしかするともっと下に見られてるんでしょ?つまり、私の外見は恐らく小さな子供なわけだ。子供なら、子供らしく世の中のことなんてわかりませーんみたいな態度をとるのに最適じゃないか。もしロリコンがいたとしても自衛出来るし、私の外見がこの世界で幼く見えるなら好都合。情報を聞き出しやすいから凹む要素などないのだよ。
それに幼女チートの主人公とか好きなんだよね。自分がそのポジションを獲得出来るなんて願ったりかなったりですな。良心?未知の世界では身の安全の方が優先順位が高いのだよ。
『はあ』
ウィニティー何故そこで溜息をつくのだ。そこは前向きな主の姿に尊敬の眼差しを向けるところだろう。え、また溜息つかれた。何故だ。
「サツキちゃん、疲れてない?」
「大丈夫です」
「疲れたら言ってね」
「はい」
メアリーさんが心配して声をかけてくれた。外の人はメアリーさんやマーカスさんみたいに良い人が沢山いるのかな。でも、冒険者ギルドは荒くれ者が定番だよね。私みたいな子供が来るところじゃねぇって怒鳴られたりとか絡んでくる危なそうな人もいるのかな。是非、テンプレな態度をしてくる冒険者さんを見たいです。
「冒険者ギルドは乱暴な人は多いけど殆どの人は貴方ぐらいの年の子供には優しいからそんなに緊張しなくても大丈夫よ」
冒険者さんの態度にワクワクしてたら緊張してるって思われたみたい。ヤバイ、さっきは良心よりも自分の安全優先なんて言ったけどこれはかなり辛いかも。
メアリーさん、あなたの私に向ける子供を安心させるための笑顔が眩しすぎます・・・。
――――――――――――
メアリーさんの笑顔という攻撃に良心をチクチク痛めながら歩き続けること30分。
やっと、やっと街の門が見えてきた。大事なことなのでもう一度言おう。
ま・ち・の・も・ん・が・み・え・て・き・た・!
うむ、ここまで近づくと街をぐるっと囲っているらしい石壁の向こう側から数えきれないほど生き物の気配がする。気配が多すぎて鬱陶しく感じるが気のせいだろう・・・。
冒険者ギルドのことについて説明を受けた時に一緒に街のことも聞いてみたらなんとヘッタナは今私がいる国。ルドベキアの首都なんだそうな。おまけにルドベキアはギルド関係の組織の総本部があるらしい。ギルドも冒険者ギルドだけじゃなくて職人ギルドや商業ギルドがあって、それぞれ世界中に支部があるらしい。ますます、ファンタジーっぽい世界ですな。
頭の中で教えてもらったことを復習しているとどうやら、外門の目の前まで来ていたらしい。門の前には馬車と・・・バイク!?バイクあるの!?いや、実物は初めて見たから違うかもしれないけどね。でも、私の記憶が正しければあの二輪車はバイクのはず・・・。マーカスさんに聞いてみるか。
「マーカスさん、馬車と一緒に並んでるあの乗り物はなんという名前なんですか?」
「ああ、初めて見るのか。あれはバイクという乗り物だよ。前輪と後輪の二つの車輪でバランスをとって、魔石か魔油を燃料にして動かすんだ」
「バイク、魔石、魔油・・・」
「魔石は魔力が宿った石のことだよ。魔油も魔石と同じで魔力を含んだ油のこと。唯、魔油の方は魔石よりも魔力量が少ないから燃料にはあんまり向いてない。殆どの人は魔石型のバイクに乗っているんだ。バイクに興味があるなら冒険者ギルドの登録者に見せてもらうと良い。高ランクの冒険者ならたいていの移動方法がバイクだからお願いすれば見せてもらえると思うよ」
バイクだそうな。しかも魔力で動いてるらしい。
へー本物のバイクだー。お母さんから聞いたバイクはガソリンって、名前の液体を燃料にする奴だったけどもしかして魔油のことかな。
後ろからだけどいろんなデザインのバイクがあるなぁ。でも、ここにあるのは全部二輪のバイクだ。写真集には三輪もあったけど三輪はないのかな?あれ?でも、三輪はバイクじゃなくて車だってお母さん言ってたけどあるのかな。
『サツキ様、ちゃんと前観て歩いて』
考え事してたら無意識のうちに下を見ていたらしい。ウィニティーに怒られた。言われた通り前を向くと街門に続く列が二つあった。
「マーカスさん、私たちはどっちの列に並べばいいんですか?」
私たちから見て右が馬車やバイク、乗り物に乗ってる人たちが並んでる列。左が徒歩の人かな?荷物が多くて服が汚れてる人が旅人、荷物が少なかったり服が綺麗な人は街の住人だと思う。
「私たちが並ぶのは左の列だよ。サツキちゃんは街の住民じゃないから銀貨二枚を払わないといけないけどお金持ってるかな?」
お金?街に入るだけでお金取られるの?なんてけちくさいんだ。
『サツキ様、初めての街で入場料を取られるのはお約束じゃないのか?』
言われてみれば確かにそうだ。でも、お金なんてどこに入れてあったけ?
『サツキ様?』
うーん、確かメインじゃない方に入れた気がする。
「マーカスさん、ちょっとこの子持っててください」
「ああ、良いよ」
地面じゃ可哀想だからね。よいしょっと、お金~お金~どーこーだー。お、それっぽいのあったあった。ん?紙と銅貨と金貨?あれ銀貨は?
「サツキちゃん大丈夫?もうすぐ私たちよ」
うそ!?進むの速いな!
「えーっと、ちょっと待ってください。すぐに見つけます」
「無いのなら私たちが払うよ。銀貨二枚なら大した金額じゃな―――――――」
「いえ、大丈夫です!ちゃんと自分で払います!」
お金あるのに借金してたまるか!お金と女ほど怖いものはないって、本に載ってたんだから!
うーん、それにしても銀貨ないぞ。金貨があるのに銀貨がないってどういうことだ。最悪、金貨を出すしかないけどこんなところで目立ちたくないし。ええい、こうなったら袋ごと出して漁ってやる!
『サツキ様!?ちょっと待って』
ズシッ
重い!?まあ、金属が入ってるんだから当たり前か。ちょっと地面に下ろしてと。銀貨、銀貨~。あ、あった!銀貨二枚だっけ?二枚抜き取ってと。よし、後は仕舞っとこう。それにしてもなんで底の方に入ってるの。よく使うお金なら上の方に入れてよ。
『サツキ様、袋ごと出しちゃ駄目だろ・・・』
ん?なんで?借金よりマシでしょ?
『そういうことじゃない』
え、なんかウィニティー怒ってる。借金回避って、良いことだよね?なんで怒ってるの?あれ?なんで皆、口開けて私のこと見てるの?
「サツキちゃん」
「うえっ!?」
あれれ?メアリーさんも怒ってるよ。というか腕痛いです、顔近いです、メッチャ怖いですぅぅぅ。
「サツキちゃん、こんな目立つところであんな大金、無闇に出したりしちゃ駄目じゃない。悪い大人に盗まれちゃうわよ」
へ?悪い大人?
「それにその鞄、アイテムバックでしょ。お金だけじゃないわ。その鞄だって、盗られてしまうかもしれない。・・・それに貴女自身が攫われる可能性もあるのよ」
フムフム、私がこの世界の基準だと貴重な物を持ってるから持ち物を盗られるかもしれない。さらには、私自身が攫われるかもしれないと。
・・・まあ、持ち物がヤバイのはわかる。リストと中身を確認したときにチラ見したけど全部魔力が宿ってた。世間知らずの私でもあれは貴重な物ってのはわかる。でも、私が攫われるのはないよ。今のも真剣に言われたけど私に危機感持たせるためのはったりでしょ。大丈夫ですよ、メアリーさん。こう見えて私、しっかりしてるんです。だから安心してくださいと気持ちを込めてメアリーさんに笑顔を向ける。うむ、これで伝わるはずだ。
『はあ・・・』
ウィニティー何故、お主が溜息をつくのだ。私は危機感、ちゃんと持ってるぞ~。あ、ウィニティーと言えばマーカスさんに持っててもらったまんまだ。完全に荷物のように脇に抱えられてるな。ウィニティーの顔、下向いてるし、早く私のモフモフを返してもらわねば。
「マーカスさん、ぬいぐるみ持っててくれてありがとうございます」
「あ、ああ。はい、どうぞ」
おお、私のモフモフが帰ってきたぞ。まだ、花臭いけど洗えば落ちるだろうし夜は是非、抱き枕となって欲しいですな。
「こんにちは、お嬢ちゃん。自分の名前は書けるかい?」
おや、いつの間にか私たちの番になってた。なんか子供が好きそうなチョビ髭のおじさんだ。名前ぐらい書けるけどそういえばこの世界は何語なんだろう。まあ、なんとかなるでしょ。
「書けます」
「!そ、そうか。じゃあ、ここに名前を書いてくれ」
「はい」
おじさん、おじさん。何故、聞いてきたあなたがそんなに驚いているんですか。
私、馬鹿じゃないですよ~ちゃんと教養ありますよ~。常識はないかもしれないけど・・・。
あ、もしかして外の世界での常識だと10歳の女の子は文字が書けないのが当たり前なのかな。もしそうだったらおじさんが驚いても仕方ないよね。だって、書けないのが当たり前の年齢に見える女の子が書けるって返事したのはおじさんにとって予想してない出来事だったんだよね。おじさん、ごめんね~。今、あなたの目の前にいる子供は身長がかなり低くって常識がない。唯の16歳の女の子なんですよ~
・・・まあ、口に出して言ったりはしないけどさ。
さて、後ろに並んでいる人がいるんだからさっさと書類に目を通しますか。
・・・・・・おじさん、職務怠慢は良くないんだよ。
読み終えておじさんの顔を見る。
子供が好きそうな顔してるから仕事は真面目にやってると思ったんだけどなぁ。ほら、たまにいるじゃん。「俺は大人だからな。子供の手本となるような生き方をするように心がけているんだ」とか言ってる男性キャラクター。このおじさん、酔ったりするとそんな感じのこと言ってそう。でもなー私がその人に抱く印象って全部本を元にしてるらなー。結局、本と現実は違うってことか、残念。
改めて書類を読む。別にこの書類が間違ってるとかすでに記入済みの書類をおじさんが渡してきたわけじゃない。内容も名前と滞在期間についての記入欄。これだけならおじさんも職務怠慢にはならないと思うんだ。問題はね。二枚目の滞在期間中に問題行動を起こした場合の処罰に対する同意書。この書類なんだけど下のほうに注意書きで「未成年のみの入場の場合、書類記入の前に係りの者が別室にて説明いたします。」って、日本語で書いてあるんだよ。おじさん、なーんにも言わなかったね。全く、私が幼女っぽくて加害者になることはなさそうだからって仕事はサボっちゃ駄目だよ。私は読めるし内容も理解したから良いけど私が文字読めなかったらどうするつもりだったんだ。・・・後ろの人が待ってるし、さっさと書くか。
名前と滞在期間、んー滞在期間は情報収集もしたいから一ヶ月でいいか。お母さんの友達だもん、ナントカ秘境とか幻の島とか私の常識ではありえないところに住んでいるに違いない。後、ヘッタナの観光もしたい。よし、同意書もサインしたし問題ないはず。
「これでいいですか?」
「・・・ああ、大丈夫だ。入場料に銀貨二枚払ってくれ」
「はい」
おじさんが差し出した手の上に銀貨を置く。
「じゃあな、お嬢ちゃん」
「はい、さよならです」
おじさんと別れてマーカスさんとメアリーさんと一緒に街門を潜る。因みにマーカスさんとメアリーさんは私が書類とにらめっこしてる間に手続きを済ませていたらしい。
「「おお!!」」
人間だ!森の動物じゃない。私と同じ二足歩行の人間が沢山いるよ!ウィニティーもこれには吃驚したのかな。テレパシーじゃなくなってるよ。周りがうるさいからばれてないと思うけど気を付けないとまだ外のことをわかってない私たちは大人しくしてないとメアリーさんが言ってたように悪人に騙されちゃうよ。
目の前に広がる人間の多さに圧倒されているとマーカスさんが肩を叩いてきた。
「さあ、逸れないように手を繋いで行こうか」
「そうね。サツキちゃん、私と手を繋ぎましょう?」
完全に子供扱いですな。
メアリーさんに右手を差しだし、左手でウィニティーを抱える。
「ギルドまで私がぬいぐるみを運ぼうか?」
「いえ、大丈夫です」
「そう」
マーカスさん、あなたもメアリーさんと一緒か!その小さいのに偉いね、みたいな笑顔をやめてくれ!心が、私の良心にチクチク棘が刺さって痛いんだ!!




