5 私と旅立ち・・・
取り敢えずお母さんの指示通り動かないと後で何が起こるかわからないから出発の準備しようかな。
立ち上がった私に気付いたウィニティーは机の上に飛び乗りお母さんのメモと一緒に置いてあった鞄の中身を確認し始めた。
それを見た私も強制的に追い出される前に出掛けるために机の上にあった説明書―――「下界の常識!~知らない君は必ず・・・フラグを立てるだろう~」と命名された説明書・・・。
中身はまともなのに!ちゃんと常識っぽいのが書かれてるのに!なんでこんなにサブタイトルが不穏な意味を含んでそうなの!?
フラグのまえに明らかに含んでいるのがすごく気に入らない!そんなに私は頼りないですか!?私が覚えている限りではお母さんから出された課題の本とか勉強はちゃんとこなしていたし、教えられたことを応用して自分なりに理解を深めていたのはお母さんも知ってるはずなのに・・・。
「サツキ様、旅の服があったからこれに着替えてきて」
「・・・」
「サツキ様?」
「・・・え!な、何!?」
「・・・まあ、いいや。サツキ様これに着替えてきて。後、これ鞄に入っていたもののリストね。他に持っていきたい物があったらこの中に詰めて」
「わかった」
ヤバイヤバイ、説明書の題名が気に入らないからって考え込んでてみたい。
ささっとウィニティーから着替えと鞄を受け取って自分の部屋まで駆け足で向かう。
自分の部屋に入るとそこは16年間過ごしてきた自分の部屋。入ってすぐに目を引くのは壁一面にある大量の本。右側には専門書やお母さんがくれた教科書や問題集。左も本棚は右よりも圧倒的に多い。本棚の前にちょっとした本のタワーが5・6個ある。そのタワーと天井まである本棚の本は全て小説や漫画。私に外の世界への希望と好奇心を抱かせた宝たちだ。そんな部屋のど真ん中に鎮座する。ベッド、本当ならこっちが先に目に入るんだと思う。でも、私の部屋は戸側にあるクローゼットと左側のタワーの後ろにある小物入れ用の棚とたった一つの窓以外の全ての壁に本が並べてある。
なんでそんな部屋が暗くなりそうな配置なのかと言うと私が漫画で見た禁書庫を自分の部屋に再現したかったからである。本の内容は完全に読みたいものだけで禁書庫感が全くないけどパッと見だとわからないし、なによりこの本に囲まれた空間がすっごく落ち着くから気にいってる。あー外の世界に行ったら本物の禁書庫とか入れないかな?本物の雰囲気を味わいたいな~。
おっと、いけない!すぐに着替えて準備しなくちゃ。
「何これ・・・」
ウィニティーから渡された服を広げてみると赤色のチュニックに小動物をメインに森の動物たちが戯れているデザインである。
別にデザインに文句があるわけじゃない、寧ろ可愛いと思うデザインで嬉しい。
そう、デザインは問題ないのだ。じゃあ、何が問題かって?
「なんでこんなに術式が仕込まれてるのよ・・・」
具体的に上げていけば洗浄効果(体の洗浄も可)、自然治癒向上、物理軽減大、体力向上、暗視モノクロ、重力軽減大、魔砲無効化、魅了効果、運気向上、炎の加護である。
可笑しいでしょ!?なんで加護が魔術式で組み込めるんだよ!それに「魔砲無効化」ってなんだよ!?あれか、飛んでくる攻撃魔法だけ無効化するってか!?なんでそんな中途半端なの!
普通ここは「魔法攻撃無効化」じゃないの!?ねぇ、お約束は!?何故、私の憧れを裏切るんだ!
心の中でギャーギャー憧れを裏切られたことについて文句を言いつつも手は止めない。
これ以上、お母さんに私の憧れである「お約束」を裏切られては心が折れてしまう。折られるわけにはいかない!すぐに家を出なければ!!
―――――――――――――
そんなこんなで私の心の平穏を保つために鞄の中に必要な荷物を詰めていき準備万端の状態でリビングへ行けばすでにウィニティーも―――お母さんがウィニティーの分も用意してくれた!---鞄の中身の確認が終わったみたいで椅子にテディベア座りしながら説明書を読んでいた。ウサギの癖にその座り方が似合っていて、可愛すぎてこっそり悶えていたのは本人には内緒だ。
「ウィニティーお待たせ」
「遅いよ、サツキ様」
「仕方ないじゃん、女の子は必要なものが多いんだよ」
「ヒイロ様が殆ど揃えてくれたはずだけど」
「まあ、細かいこと気にすんな。それより今日中に森を出ないとお母さんに何されるかわかんないし、早く行こう」
なんか後ろからブツブツ聞こえるけど私は気にしないのさ
スキップしながら機嫌良く家を出て手紙の裏に書かれていた地図を頼りにウィニティーと一緒に目的の洞窟まで向かう。途中でウィニティーを置いて行ったりとちょっとしたトラブルもあったけど無事に洞窟までたどり着いた。
正直に言えば16年間、この小さな箱庭と言っても差し支えのない森の中に洞窟があることを知らなかった。お母さんが「山の方は近づいちゃ駄目よ」と言っても、狩りや魔法の練習を言い訳に何度も山脈に近づき何度も何度も一周したのにこの洞窟のことを知らなかった。不思議に思って、入口の壁や地面を調べていると洞窟の外側に無造作に置かれた石に半径一キロ圏内の生物に認識阻害の魔法が掛かるように仕込まれた魔法陣があった。
洞窟の地面や壁ではなく、その辺に転がってるだけの石に魔法陣を施すのがお母さんらしいと言えばらしい。謎が解けてすっきりした私は再びウィニティーをつれて洞窟の中を進む。
五分ぐらいだろうか、前方に広場のような場所が見えてきた。
「おお!」
一歩踏み込めば今まで真っ暗だった洞窟が天井に生えている水晶の明かりで周りを見渡せるようになった。
幻想的な風景とかそういうのはないけど―――天井の水晶以外は唯の土壁だもん―――入口からここまで服に組み込まれた暗視便りだったから色のある世界が目の前にあるのが嬉しい。
なんとなく足元にいたウィニティーを抱き上げて、部屋の中央に歩いていけば思っていたよりもこの部屋が広いことがわかる。大体、部屋の端から中央までが十メートル程あるのだ。
半分歩いたころから走って中央まで行き、グルッと体を回転させながら部屋の中を見渡す。どうやらここが洞窟の奥地らしい、入口からはそんなに歩いてないぞ。たぶん、五分くらいだ。・・・洞窟短いな。
部屋の中央でどうすればいいのかわからず、地図が書かれていた手紙を取り出して何か他に書いてないか見落としがないかと探すが何もない。じゃあ、説明書かと思って出そうと鞄の中に手を突っ込むとクイクイと腕の中にいたウィニティーが服の袖を引っ張って足元を小さな前足?で指すからなんだろうと思って下を見ればさっきまで無かったはずの魔法陣・・・。
「いつの間に!?」
「サツキ様がヒイロ様の手紙を読み直し始めたあたりから」
「もっと早くに言えよぉぉぉぉぉおおおぉぉおぉっぉぉぉぉぉぉぉ!?」
そして私はまるで迷宮でパニックに陥った小説の主人公たちのように叫びながら魔法陣から放たれる真っ白な光に包まれた。
ウィニティー「サツキ様、石なんか見てないで早く行こうぜ」
サツキ「・・・」
ウィニティー「サーツーキーさーまー」
サツキ「・・・」
ウィニティー(・・・サツキ様、攫われそうだな。俺がしっかり守らないとだな)




