表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

第1章 《とある少年》

これ、しばらく投稿しないと思うから、少し長めね。六神七王国八王記をよろしく!Novyi Mirは少し待ってね!

――――間もなく、マリアージュ行き、

特急列車が発車します。まだお乗りになってないお客様はお急ぎくださいませ




ここはシャルドネ公国首都にある総合駅。多くの蒸気機関車が毎日出入りしている。





「…」

人混みの中、切符をジッと眺めてる軍服姿の少年がいた。その顔は深くかぶった軍帽により伺うことができない。


彼は直立不動でその場にいた。周囲の人達はそんな彼を迷惑そうに睨むが、あるものを見た途端、顔を真っ青にし、そくさく列車の中に入る。



しばらく動かなかった少年はため息をつき、三等列車に入る。







彼の手にある切符には…



マリアージュ行き特急列車“ブラン”


学園都市“マリアージュ”下車


Erehwonエレホン Dertahデルター


C1等車





彼は適当な椅子を見つけると座り、深い眠りに入った。








「―――――…様、…様、起きて…」


彼は目をぱちっと開ける




「お客様…お目覚めのところ申し訳ありません。切符を拝見させて頂きます」

車掌がうんざりしたような顔で言う


おそらく、自分を起こそうと少し手間をかけてしまったのだろう。


彼は、目で詫びを入れつつ、切符を渡す



切符を見た車掌は困ったような顔をして、

「申し訳ございません。お客様…こちらは1等車ではなく3等車でございます。お客様の切符は1等車のものでございますので、ご移動をお願いいたします」



「そうか…その切符では、ここにいられないのか…てっきり、その切符は1等以下の所に乗れると思ったんだがな。君…切符は車内でも販売してるんだろう?買おういくらだ?」

少年は財布を取り出す。


車掌は慌てる

「お客様!切符を買う必要はございません…せっかく1等車の切符をお待ちですので、ご移動を…」



「エレ君~さがしましたわぁよぉ~ここにいらしたのですねぇ~さぁ、行きましょう~」

突如、一人の長身の女性が現れる


彼女の顔を見た周囲の人は心理的嫌悪感を抱く。


闇のような漆黒に染まった、膝まである、長く美しい髪。中分けにされたその前髪から覗く、芸術品の様な、白く整った造形された人形のような顔をしている。

しかし顔には、常ににやけているような目元。薄く開かれたツリ目から覗く、血のような赤黒い瞳。嘲るようにつり上がった口元。

口からゆっくりと紡がれる甘い声色は人間を惑わす淫魔のよう。



人々は彼女を食虫植物のような女と例える





「姉上…私は豪勢なものを好みません。故に、3等車の席を予約したのに、何故姉上から頂いた切符が3等車なのか理解できませぬ」

少年は軍帽を脱ぐ


現れたのは、燃え盛る猛火のような紅い短髪。炎のようにうねる癖が特徴的だ。顔には大きく開かれた瞼から覗く赤みがかった黒色の瞳が強い光を灯している。



「いいじゃぁなぁい~車掌さんごめんなさいねぇ~今弟を連れていきますぅ~いきますわぁよぉ」

姉は嫌がる弟を引きずる



少年はこうなった原因を回想する





「父上!何故私が“マリアージュ”に行かなければならないのです!私は今年から最前線に…長城へ8年配属されるはずです!」

少年…エレホンが吠える



「仕方があるまい…事情が事情だ。我ら北方十家は中央からの要請をことごとく断ってきたが、今回は、他の地方の貴族や王族が文句を言ってきたのだ。北方だけ、人を出してないとな。勿論、反対したが、奴ら王命まで出しやがった。そして、軍もな…」

真っ赤な髪を後ろに流し、高い背丈に肥えた体をブルブル震わせ、蔑むような目つきで自分の息子をにらみつけ、地の底から響くような低く重い声で紡ぐ。



学園都市“マリアージュ”は毎年多くの若者が学びにやって来る。しかし、誰にでも行けるわけでもなく、数には限りがある。その数は各国3000人。これを多いと捉えるか、少ないと捉えるかはお任せする。


ちなみに、3000人まで、ではなく3000人である。つまり、優秀な人材3000人が国から消えるのである。これは国家にとっては大きな損失である。優秀な人材が集まる中央では多くの貴族の子弟を送り出しているが、それだけでは数が足りず地方にも要請を出している。貴族も嫡子である長男や長女を除いた子供を送っている。それでも足りず優秀な庶民の子供を送って、やっと3000に届いたのである。


この協定は奴隷解放を進めているカベルネや、冗官と呼ばれる失業官吏が多く存在するシラー、学者を数多く抱えるメルローにとっては有利に働くが…優秀な大人を国務や軍務、地方運営に回してるシャルドネにとっては大きな負担である。子供を出すしかないのである。



多くの地方領主が苦しんでいる中、北方の領主だけが人員を出してないのだ。


 

北方領主、俗に北方十家とよばれてる四候六伯の貴族が治める地は長城に接し、大帝国に近いという特殊な理由上、数多くの特権が存在する。


その一つが王命の拒否があげられる。これは、昔長城が完成しておらず大帝国からの襲撃が絶えなかったとき、当時の北方の領主たちは連合して未完成の長城にこもり攻撃に耐えていた。


しかし、守るのみで積極的に攻撃にでなかったのだ。当時の公王はそのことにイラつき、司令官や参謀などの指揮官全てを罷免し、中央から新しい指揮官を任命した。その後、新司令官から援軍を要請される。要請曰く、北方軍は新司令官の命令を拒否し、挙句の果てに仮病を使うありさまであることが書かれていた。その後、中央から精鋭10万を派遣し、大帝国の軍に積極的に攻撃を仕掛けた。しかし、結果は6割戦死という大敗北、司令官は辛くも長城に逃げ込んだが…


調子づいた大帝国軍は攻撃を強め、長城南関が陥落は間近という報告が中央に届き、公王は自らの失態を認め、罷免した指揮官達を復職させるが、彼らは病気だといって断った。ますます焦った公王は「なんでもいうことを聞く」という手紙を出してしまい、司令官たちはしぶしぶ復職、北方軍も復活した。その後、様々な策を用い、大帝国軍10万を殺して、この一連の戦いは終了した。


その後、当時の司令官は更に高い爵位をもらい、今の四候六伯となった。謁見の時、彼らは公王に手紙を見せつけ、今の特権を勝ち取ったのだ。




「王命なら握りつぶせばよい…しかし、軍が来ると話は別だ。今内乱を起こすわけにはいかない。そして人狩りでもされたら面倒だ。そこで、我々は面倒だが出すことにした。それもとびっきりの者をだ。中央の奴らが考えている以上の極上の者を放出し、奴らを後悔させるんだよ。これ以上優秀な人材を国外に放出してもいいのか?とな。」

高圧的に答えるのは、黒髪を腰まで伸ばし、目つきはまるで氷で出来た刃のように鋭く冷たい女だ。そしてその顔は表情に乏しく、人形のほうがまだ表情豊かであるといえる。



「それが私ですか…Yruf(ユルフ)女侯爵」


「私のことは伯母と呼べ甥よ」

ユルフ女侯爵が甥をしかる


この女は目の前にいるエレホンの父Deerg(ディールグ)の義理の姉である。そして、ユルフ家は北方十家のうち、武闘派五家の筆頭である。一方のエレホンのデルター家は内政を担当する五家の筆頭でもある。


「お前は目の前にいる数字しか数えることができないディールグと違い、戦士としての才能がある。幼少のころから私が直々に鍛え上げた。そういえば、甥よ。徴兵過程は修了しただろ」


シャルドネは徴兵制と志願制を平行して行っている。男子は18歳から22歳までに必ず軍に入らなければならない。そして3ヶ月の基礎教育と1年間の基礎訓練、そして3年の長城の防衛を行わなければならない。これを終了したら今度は10年間、予備役に登録され、半年のうち6日間は訓練を受けなければならない。それを終了したら60歳まで、後備役に登録される。後備役には訓練はない。


一方で、徴兵の現役を終えた者の中で現役の続行を望む者が幾らかいることで、そのニーズを叶えるために作られたのが志願制である。


志願制に入った志願兵は1年の教育を受け、3年の訓練を経て、5年の長城防衛任務を全うする。その後10年間は、士官を勤める。





ちなみにこれは平民の場合である。通常の将校志望の貴族は徴兵が免除され、5年の防衛任務は長城ではなく公都の防衛である。


故に、貴族や王族、騎士出身の軍は、平民出身の職業軍人よりも質が下とされ、実際の戦いでも無能な指揮官の戦略ミスが目立っている。また、要職は王族や上位貴族が独占しており、軍内の腐敗も進んでいるため軍規が乱れている。その一方、平民で構成された国軍、義勇軍や北方兵に対して高圧的な態度もとることがある。かつて、戦場で物資がなくなったとき、自国民に対して略奪行為も行ったことは最大の汚点として語り継がれている。




ちなみに、平民による国軍や予備役で構成される義勇軍の質は高い。



そして、北方の兵で構成される北方軍はシャルドネ最強とされている。彼らは他の地域の軍とは体制が少し異なるのだ。


北方は男子だけでなく女子も徴兵の対象となる。それだけでなく貴族や騎士にも徴兵が適用され、平民より3年早い15歳から徴兵が行われる。そして、他の地域以上に厳しい訓練を受け、極上の兵が完成する。




エレホン デルター


3か月の基礎教育、1年の基礎訓練、1年の上級教育、3年の上級訓練において、歴代最優秀記録を達成した極上の人材である。






Pihsnikピスニック酷いなぁ、我輩も徴兵は受けたぞ。しかし、今は文官を務めておるが…毎日の軍備費を稼ぐのは大変だぞ。ただでさえ、戦争は金がかかる…」

ディールグがうんざりしたような顔をする。



「まぁ、そう言うな。こちらも何も金食い虫をしてるわけではない。軍の兵士を屯田兵にして、この地方の食料はおろか、他の地区の軍の食料の1割をも支えている」



「まぁ、その代わり男は重工業、女子供は軽工業、外国人犯罪者は鉱山という単純な配置が可能になり、生産力が上がって他の地区にも販売できる水準にまで成長させたのは、流石は我輩である」

ディールグは偉そうにでっぷりと肥えた腹を突きだす。



「ふ…流石だな…懐かしいな…かつて、私はお前の事を愛していた…何で、こんなデブで…顔面凶器の男が好きになったのかは…わからん!まぁ、結局お前は妹を選んだのだがな」

ユルフ女侯爵は顔を暗くする。


「確かに…我輩はPihsrowピスロウを選んだが、決してそなたの事は今でも愛しておるぞ。そなたは戦の才があり、家督を継がねばならぬという使命があった…故に我は…」



「もう言うな…ディールグ…ありがとう。私に息子をくれてな」

ユルフ女侯爵はエレホンの頭を撫でる



ちなみにエレホンは今ユルフ家の養子として出されている。しかし、名字は変更してない。



エレホンは二人の甘甘な雰囲気に吐き気を覚える寸前である。






…回想から戻ると



目の前にはEnuarlaエヌアーラが手を組み、その上に顎を乗せて…ニタァと真っ赤に染まった唇の口角を上げる。目には妖しげな光を灯らせながら細める。



…本人はニコニコしてるつもりなのだが…いつ見ても恐ろしい顔だは



エレホンは自分の姉をそう評価する。




姉は幼少の頃から異常な執着を見せ、特に自分と少しでも関わる女性に対しては憎しみを抱いている。勿論、母親も例外ではない。



「お父様も酷いですぅわぁ~エレ君の願いを踏みにじってぇ~こんなぁ安全な所にぃ~追放するなんてぇ~それよりもぉ~おばさまは大罪人ですわぁ~あの雌豚がぁ~お父様を誘惑したに違いませんわぁ~それに騙されるお父様も戦犯ですわぁ~ああ、そうですわぁ~彼らのことなんかぁ~ほっといってぇ~二人だけで暮らしましょ~私アナタの子供なら沢山生めるわよぉ~」



こんな感じになるから嫌だって言ったんだ…姉は武も最高級だが、文が人外レベルまでに発達してるからな…


現在ディールグ家は祖父が内政、父が財政、そして姉は外交の分野において才能を爆発させている。




エレホンは一枚の紙を出す。“マリアージュ”で研究されている学問の一覧である。全部で11科存在する。



理想的な君主観と冠婚葬祭を研究する孔学

戦闘の回避と防衛戦を研究する墨学

法と刑罰を研究する法学

哲学を研究する道学

論理を研究する名学

魔法等の超自然を研究する陰陽学

外交や策を研究する縦横学

全部の学問の良いところを研究する雑学

農業技術を研究する農学

各地の伝説や歴史を集めまとめ上げる小説学

戦略を研究する兵学



「エレ君はぁ、何を選んだのかしらぁ~」


「ッ!」

いつの間にか自分の横には姉がいた。腕は自分の首に絡めて、しなだれかかる。そして、耳元に吐息を甘く吐き出しながら、淫らな声で自分に問いかける


――いつの間に…全く感知することができなかった…


エレホンは武の才能はユルフ女侯爵が認めるほどの極上の戦士だが、そんな彼から見ても姉は化け物だった…彼女が文の道に行くことは案外良いことなのかもしれない



「兵学、墨学、法学、縦横学、陰陽学、農学ねぇ~いいんじゃぁなぁいのぉ~エレ君がやりたいことをやればいいのよぉ~私が支えて上げるぅ~挫折したら私が守って上げるぅ~」


姉が抱きつく…とても柔らかい体…強く抱き締めれば壊れそうな華奢な体…姉の温かい体温が流れてくる…そして、強烈な華の臭い、香水ではないらしい…姉の心臓の鼓動、ドキドキとした音が体で感じる



普通の男なら欲情するが…自分は恐怖で固まっていた。まるで蛇に締め付けられたネズミのように…いや、食虫植物に捕まった虫のように、姉に心臓を握られているのではないのかと錯覚する。体が寒い…体の芯の底が氷で出来たかのように…寒い…気がつくと、体が震えていた



「フフフフ、可愛いわぁ~私の私の大事な大事なエレ君~食べたくなっちゃう」



姉はいきなり自分の首にかぶりつく…


ザシュ



血が溢れる。それをピチャピチャと真っ赤な舌で舐めとる。片手が伸び、自分の下半身を撫でる。



一連の行為が終わり、姉は眼を三日月のようにニンマリと細め、声のない声で自分に魔法をかける。



――私に頂戴なぁ~






―――――――間もなく、終点“マリアージュ”に到着致します。お客様、長時間お疲れ様でした。お忘れものがございませんようお気をつけ下さいませ。





乗客がぞろぞろと降りていく一方で、自分らはその場で座り続けていた。



コンコン




「長旅お疲れ様二人とも、はじめましてだね。僕は Ecnarepmet Aitnarepmeエスナレメト アイナレメ、これでもシャルドネの宰相を勤めている」



姉は珍しく表情を崩して一言こぼす


「四君子…学園都市“マリアージュ”の創設者の一人」


宰相はフフンと鼻を鳴らす

「ご名答!そして、ようこそ!“マリアージュ”へ」


“マリアージュ”フランス語で結婚を意味します。しかし、ここでは意味が少し違います。ワイン用語に違う種類のワインを組み合わせて、一見不味そうに思えるが飲んでみると意外に美味しいということがあります。これを“マリアージュ=結婚”と言います。周囲に馴染めない少年が意外なことに周りと馴染んでします。そんな意味を込めてます!これからもよろしくです(*´・ω・`)b

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ