第54話 商業ギルドでの出来事
俺たちはこの街の商業ギルド支部の内部へと入った。
外もそうだったが、この商業ギルド支部はとても造りに凝っているのか地面もただの土や木の板でできたものではなく、白い石のタイルを敷き詰めた物だった。
「凄いですね…」
「…?何がですか?」
「いやっこの商業ギルド支部の外部と内部の造りがですよ!
外からこの建物を見た時から一瞬止まって眺めてしまうぐらいに建築士でない俺から見ても素晴らしい造りに見えましたよ〜!」
「あんた!わかっとるやないか!」
「え?…あなたは?」
「おおっと、自己紹介がまだやった
わいはこの商業ギルド支部のギルマス!カンナや!
わいを呼ぶ時は親しみを込めてカンナはんと呼んでくれ!」
「カ、カンナはんですか?」
「クスクス…あんたおもろいな〜!
別にカンナさんでええよ、他の呼び方がええんならカンナちゃんとかカンナ先輩でもええけどな。
それにしてもホンマに嬉しいよ!
君がホンマ久しぶりやからね〜!」
「???、何が久しぶり何ですか?」
「言ってたやないか!
この商業ギルド支部の建物の造りがどエライ素晴らしい!
感動する!もう、涙が出ちゃうって!」
「えっ…そこまで言いましたっけ?
確かに造りは凄いな…と思いましたし、感動も結構しましたけど…
それで?それの何が久しぶり何ですか?」
「その前に一ついいか?」
「?いいですよ」
「ンフフ…わいはこのショーバイギルド支部のギルマスを
受け継ぐ前から思っとったことがあったのよ…それは…
この商業ギルド支部が殺風景で尚且つ汚い!ちうことよ!
だから!わいは考えた…次わいがこの商業ギルド支部のギルマスになる時はいっぺんこの商業ギルド支部をぶち壊して新しく作り直してやろう!ってな!」
「はぁ…?」
「まず古くさいんよ…この商業ギルド支部も商業のやり方もね…
やからわいは考えた…商売とは何?ってな…
やっぱり商売ってのは…『信用』!この一つに尽きる!信用されなくなってショーバイギルドの支部は無くなってしもたっていうのも聞いたことあるしな…
それと!その『信用』をされとるだけでええのか?
それをわいは考えたんよ…!
ほんで思ったのよ…商売ってもんは、売る方も買う方も双方が喜ばなければいかんものやないのかって…買った人は、こういうものが買えて良かった、便利だとか、豊かになったとか、そういう喜びを持って帰る。
売った者も、その喜びを感じて更に利益も残った!
つまり!売り手も買い手も両方、得する商売にしよ!
と努力してきたんよ!」
「…えーと…それでこの建物は…」
「そうやった!まだ建物の話がまだやったな!
この建物にしたのは…趣味や!」
「…えっ、趣味ですか⁉︎」
「そう趣味や!わいはこのぼろっ臭い
建物を自分の好みの建物に立て直したんよ!」
「へぇ…(まだ続くのかな?)…」
「いや〜なかなか滅多に良いって言ってくれへんの
よ〜!
ホンマごっつ嬉しかったわ!ありがとう!」
「いえいえ、このくらい全然ですよ!
ああ、そうだった今回この商業ギルド支部に
来たのは部屋をできれば1つ貸してもらえないかと
思って来たんですよ」
「部屋?」
「はい、部屋です!」
「すまん…そいつは無理や」
「えっ?何でですか?」
「…この支部には…
「…ゴクッ!」
貸せる部屋があらへんのや!」
「えええ!一つもですか?」
「そうや、この商業ギルド支部には
わいら商業ギルドのもんや重要な者たちを集めて
する会議室とかわいら個人の部屋とか客人が泊まる部屋が少しあるだけしかあらへんのや…っ!」
「…結構ありますよね?それ」「あっはっは!ばれた?うん、案内したるよ」
「…こんな人ばかりなんですか?」
「うっ…すまん!
俺の選択ミスだ!」
「じゃあこれからどうするのよ!
またどっかに移動するの?」
「そうだなぁ…他には…」
「あんたらここに来る途中、クラーケンの手下には
会ってへんのか?」
「いえ、ここに来る途中…「私達で全部倒して来たのよ!」…はい、倒しました…」
「っ‼︎なんやと⁉︎あれ全部か!」
「そうよ⁉︎」
「すっ…」 「すっ?」
「凄いやないか〜!これなら!
いけるかも知れへんで!」
「何をですか?」
「そら決まっとる…この街からクラーケンを追い出すんや!
この街でこれ以上好き勝手させるわけには行かへんからな〜!」すると突然商業ギルドの扉が開いて人が入って来たその人はとても急いで来たのか息をきらしていたのだが…
「なっ⁉︎」…スタスタ…カンナさんが少し苛ついた様子でその人に向かって行き。
スッ、ビュ!
バギィ‼︎‼︎「何やってくれとんじゃあ〜‼︎‼︎」
思いっきり拳でなぐった。
「グッハァ〜〜⁉︎」ドッ…ドサッ
「ハァハァ…フゥ…」
「…はっ!早くしろ!
回復魔法使える奴は早くこっちに!」
「了解!あ!でも俺は使えねぇ…」
「じゃあ、引っ込んでろ!」
「はぁ…やろうか?」
「オオッ!あんたそういえば使えたって!
ありがたい!治してやってくれるか!」
「いいけど…お礼は期待してるよ?」
「くっ‼︎あそこにいるギルマスに聞いてくれ!」
「ふーん…」スタスタ…
「どのくらい治癒代をいただけるのかな?」
「…」ボソッ…
「ん?聞こえなかったんだが?」
「〜〜〜!今回のクラーケン襲来でウチのお金も
この支部の金もぼぼ無くなってしもたから、払えへんって言ったんよ!!」
キーン…「ううう…鼓膜破れるかと思ったよ…」
「ふんっ!」
「はぁ…仕方ない、このまま見捨てても目覚めが悪くなりそうだから治療してやるよ」
「お金の方は…」
「タダでいい…」
「やっ!「ただし!」え?…」
「昼飯はそっちが準備してくれ、俺は知ってるぞ?
そこの奴はギルマスとしての権限をフル活用して。
美味しい海鮮料理を食べたいが為だけにこの建物の
大部分を使っているとな!」
「……」ジー
「ううっ…仕方ないやないか…わいは
魚介類…好きなんよ…」
(いや…でもそれで金足りない時点でダメでしょ…絶対この人趣味を優先するタイプぽいな後は嫌なことよりも好きなことをする時はメッチャ張り切りそうだな…)
そう俺が思っている最中にも話は進んで。
「よし!いいだろう!だがいいか?
クラーケンが来てからもうかなり日数が経ってるから取りたての魚は無理だぞ?」
「それでもこの港街ならではの塩の多さを活かした
魚の塩漬けとか、干した魚とかはあるんだろ?」
「そりゃあるにはあるがそれでいいのか?」
「ああ、いいぞ!」
「そうか、ならそれでよろしく頼む!」
「よしっ!交渉成立だな!
早速治すぞ!」
スタスタ…
「こっちに横たわせてくれ」
「わかった。これでいいか?」
「ああ、これでいい」パァァァァ…
「うっ…」ピクピク…
「おおっ!」
「流石は早いな…」
「ええ…」
「こっ…ここは…」キョロキョロ…
「ここは商業ギルド支部だお前さん
一体どうしたんだい?」
「…ハッ!そうだった!」
「…?」
「でっ伝令です!」
「っ!何か動きがあったのか⁉︎」
「はいっ!この街にいるクラーケンの手下の魔物及び、海岸付近にいるクラーケンの手下の魔物が大きな
動きをし始めました!」
「…!ついにきたのか?」
「…いえ…監視している者からの伝令によるとあの夜のように一斉攻撃の予兆とは違うようです…」
「では、いったいなんだというんだ!」
「…伝令ではクラーケンの手下の魔物が全て残らず
撤退したとの事です。
それも何か別の自分達に迫る脅威から逃げるみたいに…」
「何だと?…いったい…何があったというんだ…」
「更に!クラーケンの大型魔力反応を観測している
者達からはクラーケンが沿岸付近からかなり離れた沖合いまで下がったそうです」
「…何?、理由はわかっているのか?」
「まだ完全には…しかしその魔物達が一斉に撤退し始めた時刻はこの街内部で観測された途轍もない
魔力反応を観測した時刻と一致していますので、それが何らかの影響を与えたのではないかと観測班は
考えているそうです」
「そうか…ご苦労だった!
それと、その途轍もない魔力反応の場所は?」
「はっ!この商業ギルド支部から西に少し行った、
クラーケンの手下の魔物がしたいとなって山ずみにされている場所です!」
「そうか、伝達ご苦労!後これを伝達してくれ…
『このまま観測は継続して行え!後監視している者達は半分を海の監視に残し後半分は街の修復作業を
手伝わさせるように!』
わかりました!」ダダダ…バタン!
「あの野郎…またやりやがって〜!」グヌヌヌ…
「まぁまぁ抑えて下さいよ…ギルマス」
「ちょっと」
「…?何ですか?」
「ちょっとこっちに来なさい!」
そう言われて俺はエリンダさんにリゼさんも含めた3人で部屋の隅へと移動させられた…




