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ゴミクズ野郎の懺悔室   作者: 麺単品虎一
2/2

第1話 俺がMに目覚めた日は神にスカウトされた日

春と呼ぶには桜が散りすぎてしまった某日、

俺、大禍津おおまがつヤソマは

浜風が少し強く吹く並木道をいつもの時間に出発し、いつも同じ方向へ向かう学生達を横目に、いつものスピードで学校に向かっていた。

俺はこの登校という作業が割と好きだ。

毎日同じ時間に同じスピードで歩いているはずなのに、落ち葉の位置や鳥が羽を休める場所、風の吹く方向などで景色が毎日変わる。

地球が、自然が教えてくれる気がするのだ。

自然わたしたちは生きているのだと、

お前も生きているのだと。

ほら、今日も…

「きゃ〜!!」

上段左からピンク、ピンク、白!

中段水色、白、赤チェック!

下段白、黒、女の子の日!

浜風が俺に色彩鮮やかに生命の息吹を教えてくれる。グフフ。ごちそうさまです。

決して毎日ではないがかなりの確率で俺は彼女達のおパンティを視姦している。

そう、俺の選球眼パンティ・ハント・アイはどんなおパンティも見逃さないのである。

ちょうど3段×3列なので縦、横、ナナメで同じ色だった時は心の中でビンゴ!と叫び、1日の運勢を占ったりする。

そしてちょうど今日はナナメの白が成立していた。

イエス!ビンゴ!


「今日は何だかいい事ありそっ♡」


とついつい一時代前の少女漫画の主人公みたいなセリフをつぶやいてしまったその時、


「やーそまっ!」

「げっ…お前今日朝練じゃねーのかよ…」


振り返るとそこには茶色がかった髪に、ぱっちりした目、身長は少し小さめだが出るとこ出て締まるとこ締まったボディの同い年の幼馴染、

夢喰ゆめばみリリスがいた。


「げっ!て何よー?私がヤソマに声かけちゃいけないわけー?」

「いや、そんな事ねーんだけど…」


俺の歯切れの悪い返事に少ししかめっ面をしたリリスが嘆息をついて踵を返す。


「ま、いーけどね。んじゃあ私友達と待ち合わせってるから先行くね!じゃーねー。あ、あと独り言超キモいよ。」


俺は「うっせ。」と必要最低限のコミュニケーションで会話にピリオドをうつ。

「くそっ。あいつ前にも増してエロくなってないか…?」

幼馴染なだけあって体の成長も一番近くで見て来たからよくわかる。

ぶっちゃけ超エロい体してる。

さっきの美少女による「超キモいよ。」だってM気質だったなら軽くごはん3杯はいけると思う。

そんなリリスが走って友達の所へ向かっている時、少し強めの浜風が吹いた。



…紐、だと…!

…あなたのパンティ力は53万です。


イェーイ!ごはん3杯だよ〜!!

グッジョブ自然ネイチャー

そしてスカートをバッと押さえたリリスが振り返り、恥ずかしかったのか少し赤面しながらいわゆる「あかんべー」をしてきた。

…かわいっ。

かなりあざといが正直めちゃかわいい。

その「あかんべー」もあわせてごはん5杯はいけちゃうぜ。

ただ、この文句の付け所が無いシチュエーションにあえて一つだけ言うならば、この周りの視線である。

俺は性格上あまり好かれてはいない。

コミュ力はそれなりだが性格がクズすぎる為に、仲良くしてるつもりでもあまり好かれてはいないのである。

簡単に言うと中学の時、毎日一緒に登下校していた友達の携帯の電話帳カテゴリー区分、

例えば

・家族

・親友

・友達

・部活

の様に、わざわざ親友と友達を分ける意味が全くわからないそのカテゴリー区分の中、

俺のカテゴリーは「設定なし」だったりする。

え…友達にすらなれてないの…?

と軽くショックを受けたが、

「まぁ下等生物からしたら俺は神に近いから何かに分類するのを申し訳ないと思ったのだろう。」

と判断し、逆にその“友達と呼べない只の登下校を一緒にするだけの人”を可哀想な下々の民と思っていた。超憐れんでいた。

俺のこんな性格は変わる事なくそのまま続き、現在でもあまり好かれる事は無かった。

しかし、夢喰リリスは違った。

明るく気さくで気遣いも出来る。優しくて空気も読めて尚且つ皆を引っ張る事も出来る。そして何よりけしからん体をしている。

いわゆる「超人気者」なのである。

そんなリリスと話している所を見られると、

ひそひそと嫌な声が聞こえてくる。


「なんでアイツが夢喰と喋れんだよ…。」

「夢喰さんのお情けでしょ?」

「なるほどな。あんな性格がクズなヤツ情け以外で喋りかけねーよな。」


人間とは浅ましいもので、誰かを否定し、誰かより自分は優れている、自分はこいつよりも上なんだと自己暗示の優越感にすぐ浸りたがる。

人気者のリリスは否定せず、自分は喋りかけてもらえない劣等感を、数々の虚実織り交ぜた否定で塗りつぶして優越感に上書き保存する。

勝手に言われてるこっちとしてはたまったものではない。

故に、リリスとの交流を外で誰かに見られるのを俺は嫌がるのである。

2人きりなら超かまってもらいたいけどね!

ある程度の距離を保ちたかったのでリリスが去ってしばらくした後、引き続き俺は並木道を歩き出す。

リリスのパンチラ脳内リピートが10度目の再生を終えた頃、いつもの道に少し変化があった。

前方に恐らく黒人と思われる大柄の外国人が、ラジカセを肩に背負ってゆっさゆっさ揺れている。

その外国人は俺の方を見るとゆっさゆっさ揺れながら器用に近づいてきた。

(いやいや、俺!?…んなわけねーだろ。)

その外国人は俺の目の前に来て立ち止まった。

そしてゆっさゆっさ揺れながら俺に喋りかけてくる。


「ッアー!ッアー!ワッツァップ!?ブラザー!ヒーイェー!」


俺は余計なトラブルは避けたかったので目をそらしていた。

(勘弁してくんねーかな…。ラジカセも音鳴ってねーし、一体何でこんなにノリノリになってんだ?キモいな…。無視でいこう。)

と心の中でつぶやきながら外国人の横を通り過ぎようとした。


「ノーノー!メェーン!ワンサゲーン!アナタヤルマデオワラヘーン!」


…うざっ。ノリもかなりウザいし、何よりゆっさゆっさがウザい。

「ヘイ、メェーン!?ワッツァップヒェー!」

俺の明らかに迷惑そうな態度に対して臆するどころか逆にグイグイくるその外国人にだんだんと腹が立ってきた。

だがしかし、そこはノーと言えない日本人の俺だ。

俺は京都の風習、お茶漬けを勧められたら帰りなはれサインのように遠回しに相手を傷つけない気遣いの心でやんわりとこの外国人を拒絶する事にした。


「オーケーオーケー、ファッ○ユー!」


俺は中指を立ててその大柄な男を下から睨めつける。

既に脳内会議ではこの挑発で、暴行を受けた場合金銭で解決するプランが10通りはできていた。かかってー、こいやっ!

しかしその大柄外国人はニヤニヤしながら俺の事を見ている。


「OK、bro.オ前ノ血ノビート届イタゼ。ふるえるぞハート!燃えつきるほどヒートォォォ!」


…うざっ。しかもモノマネもけっこう似てるのが腹立つ。

多分俺の人生で一番の渾身のファッ○ユーを軽く受け流しやがった。こいつ…できる…。

このまま罵倒し続ける手もあるが、こいつには効果がなさそうなのでとりあえずコミュニケーションを取りながら打開策を考えていく事にした。


「あー…何、その…アナタ、ニホンゴ、ジョウズデスネ!ニホンゴデ、コミュニケーション、ダイジョブ?」


俺は何故か自分もカタコトになりながらその外国人に問いかける。

その大柄な外国人はやはり外国人らしく口を“へ”の字に曲げて、ちょっとオーバー気味に肩をすくめて首を振った。


「あ、ちょっと何言ってるかわかんない。」

「絶対わかってるだろ!超流暢じゃねーかよ!」

「まぁ、うん、そだネ。」

「そだネ。じゃねーよ!!だいたいお前何人なんだよ!」

「心ハ日本ノサムライデース!」

「京都に観光に来て新撰組の羽織と木刀買った外国人かよ!」

「ツッコミのタイミングはいいけど内容がクドいね。君、芸歴何年?」

「うるせぇぇぇぇ!!俺の中でお前のキャラがブッレブレで仕方ねーよ!色んな人と喋ってる気分だよ!」

「はぁ…もういいじゃないスか。これだからキレやすい世代を相手にするのは疲れる…」


俺は「ぐぬぬぬ…!」と怒りで震えていたがこのままツッコミ続けても埒があかないと判断し、一旦深呼吸してから問答を再開した。


「…お前、名前は?」

「普通名前聞く時はまず、自分から名乗るもんだよね?」


ビキビキッ!と俺のこめかみに青筋が立ったのがわかった。


「…大禍津ヤソマだ。日本人で17歳、高校生だ。あなたの名前を伺ってもよろしいですか!」


俺が言い終わると同時にその外国人の口から手が出てきて大柄な体を破り裂いた。


「ぎゃぁぁぁぁ!!」


中から出てきたのはどう見てもホスト風の男だった。


「俺?白鳥タツヒトでーす!神スカウトやってまーす!」

「登場の仕方が怖ぇーよ!!」

「いやー、ヤソマっち良いリアクションだったよー。」

「ふざけんなよ…。で?何?何スカウトって?」

「神だよ、かーみー。ネ申だよー。ちなみに俺も神様フゥー!!」

「…。じゃあ、そゆことで…」

「ちょっ!待っ…ちょ待てよ!」

「いちいちモノマネのクオリティが高いんだよ!…次ふざけたらもう行くからな!」

「オーケーオーケー。俺が悪かったよ。アイムソーリーヒゲソーリー。」

「ほんとに腹立つな…。で、チャラノリの自称神様が俺に何の用があんだよ?」


白鳥タツヒトはラジカセを地面に置き、真剣な顔つきになる。


「あー、一応俺?スカウトの神様やってんだけどー、ヤソマっち神様やってみねー?っつっても候補生だけど。」

「はぁ?俺が?何で?」

「いやー、何かオーラってーの?朝からここにずっと居たんだけどー、ヤソマっちはそのへんのモブ共とは一線画してるって感じ?唯我独尊系っぽいし神様向きっぽいんだよねー。ね?なろうよ神様。」

「もしもし警察ですか。」

「だぁー!ストップストップ!一回落ち着こう!ヤソマっち何がダメなのよ?」

「ハッキリ言うが、全く信用出来ない。明らかに偽名だし、そもそも神を名乗る時点で怪しさMAXだ。」


疑いの眼差し120%の俺に対し白鳥はポンと手を打つ。


「あーあー。なるほど。疑ってる系ね。そんじゃま、奇跡でもいっとく?流石のヤソマっちも奇跡見せられちゃあ信じるしかないっしょ!」

「ハッ。本当に奇跡を起こせるなら起こしてみやがれ。出来なけりゃさっさと示談金を置いて消えてもらうからな。で、どんな奇跡を起こすんだ?」

「オーケー。じゃあー…心眼いっときますか!」


白鳥はゆったりと歩きながら俺の正面に立つ。


「まぁー簡単な話、心を読んじゃうよー?」

「え、何かショボくないか?」

「ショボくないよー!超疲れるよコレ!とにかくいくよー!」


心 眼 !!



「ヤソマっち今リリスちゃんって子の紐パン考えたね?」

「!!」

「ほう…。「何でわかるんだ!?こいつあの現場にいたのか!?」かい?」

「へえ…。「おパンティ!おパンティ!ゲヘヘヘヘ!くんかくんか!ベロベロリンチョ!」だね?」

「そんなこと考えてねーよ!!」

「ははは、冗談だよ。ん〜、まだ半信半疑だね…。心眼解除っと。」

「…。」


まだ疑いの余地はあるが、こいつの心眼は確かに俺の心を読んでいた。

怪訝な顔で俺は白鳥を白鳥は少し疲れた顔で俺を見る。


「今のは神になれば誰でも出来るよ。候補生なら3秒間だけみたいだけどね。どう?信じた?」

「……。いや、まだだな。昨今ではメンタリズムなんかが流行っていたし、心の声を誘導された可能性がある。」

「えぇー。ヤソマっちもしつこいなぁ。そんなだからゆとり世代とか言われるんだよー。じゃあとっておきだよー?」


白鳥はきょろきょろと辺りを見回す。

そしていかにも真面目そうな女子生徒を見つけ指を差しながら


「ねぇねぇ、ヤソマっち。あの娘どう思う?」

「いや、どうって…。うちのクラスの委員長だな。」

「ふーん、そうなんだ。どんな娘?」

「まぁ頭良いんじゃねーの。校則もキッチリ守るから制服も着崩さねーし、真面目だと思うぜ。」

「あの娘…女王様の才能あるよ。」

「え?それはいわゆるアレか?SとMの事か?」

「そうだよ。俺はね、ヤソマっち。スカウトの神様なんだよ。特性はスカウト=いざなうなんだ。つまり、その人の才能を見抜いて才能を発揮できるように無意識レベルでその分野へといざなうのが仕事なんだよ。」

「…?それだと世の中才能を開花させた人だらけになってんじゃないか?」

「ノンノン。神様もそこまで万能じゃないんだ。例えば日本の国会議員と一緒さ。どれだけ努力しても誰もがなれるもんじゃないだろう?必ずそこには“運”の要素も必要なんだ。」

「つまりあれか?お前の目に止まってお前の気が向いた時だけスカウトするって事か?」

「イエス。細かく言えば週3日の平日17時〜21時、日曜9時〜15時かな。」

「バイト感覚かよ!」

「だって疲れるからね。そんな事よりヤソマっち、俺が彼女をスカウトするからさー、豚やってくんない?」

「何で俺が同じクラスの女子に豚をやんなきゃいけねーんだよ!俺はどっちかっつーとSだぞ!」

「あれ?奇跡見たくないのー?ヤソマっちが見せろって言い出したんだよー?」

「くっ…。マジか…!」

「ほらほらどーしたのー?自分で喧嘩売っときながらケツまくっちゃうのー?ニヤニヤ」


俺はしばしの葛藤の後、一つの決意をした。


「……。わーかったよ…。やってやんよ!」

「いいねー。やってくれるね?ヤソマっち!」

「おうよ!豚野郎に、俺は、なる!!」


まるで海賊王になると言わんばかりの勢いで俺は叫んだ。


「さて、どうすればいい?」

「作戦はないよ、ヤソマっち。ただ自分の感じるままに彼女の前で豚になればいい。」

「本当にいけるのか?失敗したらブタ箱行きだぞ。豚だけにな!」

「いいからいいからー↑テリーを信じてぇー↑」

「お前白鳥だろーがよ!」


そうこうしてる間に、委員長はすぐ目の前まで来ていた。

くっ。白鳥がいつの間にか物陰に隠れて“GO”のカンペを出しているのが腹立つが、やるしかねぇ!


見さらせっ!これが俺の生き様!


俺は凄い勢いでスライディングし、委員長の目の前に転がった。

もちろん2秒間のスライディング中に亀甲縛りは済ませ、ギャグボール、鼻フックも装着済みだ。


「ブヒィィィィ!ブヒッ!ブヒッ!ブヒィィィィ!!」


ブタの渾身の叫びよ!委員長に届け!!


……

………。


…あれ?静かすぎねーか?

俺は薄目を開けて委員長の足を見る。

そのほっそりとした頼りなく、内股気味の足はカタカタ震えていた。


「け、け、警察っ…!呼び、ますよ…!」


失敗してんじゃねーかよぉぉ!

ブタ箱行きだよぉぉ!!

俺は咄嗟に白鳥の方を見た。

だが白鳥のカンペは“大丈夫、顔見て↑”と書いてある。

大丈夫な訳ねーだろ!だって委員長はこんなにも足が震えて…?ん…?

俺はそこで異常に気づく。

足元に転がっていた為、最初に確認できたのは足の震えと「警察呼びますよ。」だけだった。

俺はゆっくりと舐めるように委員長の顔の方に視線を動かしていく。

息は荒く、顔が紅潮して、どことなく妖艶さがある。

“怯えた表情”よりも、どちらかと言えば“恍惚とした表情”に見える。

マジか!白鳥の言う通り女王様が今、羽化しようとしているのか?

俺はここで委員長をクールダウンさせてしまって警察を呼ばれるよりも俺のフルスロットルの豚による女王様の覚醒に人生を賭ける事にした。


「ブヒィィィィ!この醜い豚を踏んで下さいィィィ!お願いしますぅぅぅ!」


委員長はまだ覚醒しない。

俺はさらに全力の豚を続けた。


「ブヒィィィィ!ブヒィィィィ!」


委員長はしばらくカタカタ震えていたが、スッと目を閉じた数秒後、ゆっくりと目を開きながら髪をかき上げた。



「…仕方のない子ね…。おしおきの時間よ…!」




キターーー!!

委員長は尚も恍惚とした表情で俺に近づき膝を立てた。


「汚い豚ね…!さぁ四つん這いにおなりなさいな。」


俺は言われるがまま委員長の片膝をアーチする様に四つん這いになった。

その体制になった途端、委員長の手が俺のパンツをずり下げた。

声を出す間も無く、俺の尻は丸出しになった。

この体制は見覚えがある…。

俺の考えが正解ならば、恐らくこれはSMにおける、原点にして頂点!


お尻ペンペンだ!


委員長の細い腕が天を掴むように高く、高く掲げられる。

一定の滞空時間の後、それは音速の速さで俺に降ってくる。


ッパァン!!


「ハァンッ!」


何だこれは!?

一般的にお尻ペンペンとは親が子に罰として行う痛みを伴うだけの悲しい行為のはずなのに、これは…!新しい扉を開いてしまう!

そうこう考えている間にも第ニ撃目が降ってくる。


ッパァン!


「はぃぃんっ!」


い、痛気持ちいい…!

どうしたんだ俺!?

どちらかと言えばSのはずなのに!

俺はあまりにも感覚がおかしくなってきている為、深呼吸を一回挟み、冷静に現状を把握する事にした。

・白鳥が本当に神かどうか検証中

・委員長に女王様の才能がある事が判明

・俺、豚になる。

・同級生にプレイでお尻ペンペンされる


…最悪だ!社会的に死んでいる!

そんな事を考えている間にも委員長は、「ほ、ほら…。これが、ほ、欲しいんでしょ…?」とか言いながら三発目、四発目と平手打ちを繰り出してくる。

俺は痛みと快楽と絶望の感情に掻き乱されながら、助けを求める為に白鳥を見る。

白鳥はとても穏やかな表情で俺を見ていた。今白鳥に「神様です。」と言われれば信じてしまいそうな程にとても優しく穏やかな表情だった。その手のカンペには「何かあるかね?」と書かれていた。

そうか…。俺はもう助からないんだな。

ならば、辞世の句を詠もう。


往来おうらい

女子おなごに尻を

しばかれて

開眼せしは

M気なりけり


白鳥が誰よりも美しい姿勢で敬礼したのを横目に、俺は静かに目を閉じた。





「お前記憶操作とか便利な能力あるんだったら最初に言っとけよ!」

「いやー、ごめんごめん。ヤソマっちのおとこに魂ふるえちゃって…(笑)」


あの後の話をしよう。

委員長のご褒美の十五発目をくらい、俺が「もっと下さいぃぃ!」と言ってしまいそうになっている時、白鳥がフッと委員長の前に立ち人差し指で委員長の美しい額を小突いた。

すると委員長はふにゃふにゃと、まるで糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。


「おい!大丈夫なのか?」

「心配無いよー。記憶を弄っただけだからー。でも意外だね?ヤソマっち他人の心配なんかするんだ?」

「あぁ。もし何かあった場合俺が重要参考人になる可能性が高いからな。」

「ふふふ。いい具合にクズだね。」

「でもこのままここに委員長を置いとく訳にはいかないぞ?」

「あー、任して任して。」


白鳥は委員長の背後に回り肩甲骨の間に両手の親指をそえた。


「いつ起きるのかー?…今でしょ!」


だからモノマネのクオリティが割と高いんだよ!

白鳥が委員長の経絡秘孔に指をねじ込みピプーとどこかで音がした。

すると委員長にAEDを使用した時みたいな衝撃が走り、ビクビクと痙攣しだす。

これ…大丈夫なのか?

そして痙攣が止まった数秒後、いきなり委員長は立ち上がり何事も無かったかのように歩きだした。


「ね、大丈夫だったでしょ?」

「あぁ。白目をむいたままなのが気になるが宇宙規模で見れば些細な事だな。」



これにて一件落着だ。

俺は一仕事終えた感を出しながら歩き始める。


「いやちょっと待ってよ、ヤソマっち。」


白鳥が俺の肩を掴む。


「何だ?」

「もう俺の事信じたでしょー?神様なっちゃおうよ!」

「断る。」

「何でよー?神だよ?神!ゴッドだよー?」

「前向きに検討した結果今回は見送る。」

「それ最初っから見送るつもりだったやつだよ!」

「胡散臭いし、面倒臭さそうだからとにかく断る!」

「もー…。ここまでしたのにー。本当にいいの?俺にスカウトされるなんて滅多にない事なんだよ?」

「くどいな!とにかく俺はやらないったらやらないんだよ!もう行くぞ!じゃーな!クソ神!」


俺は言葉を荒くしながら白鳥に有無を言わさないように歩きだした。

よし、これで俺は日常に戻る。

毎朝のパンティ占いは守られた。


「まぁそこまで言うなら仕方ないねー。」


スタスタ。


「もう二度とこんな事ないのになぁ…。」


スタスタ。



「ハァァ…、神って超モテるんだけどなー…。」


ビタァッ!!



くっ…、俺の足が、動かない…!

体が言う事を聞かない…!

白鳥の言動から耳が離せない!!


「人気神になったらそりゃーモテるよー?合コンでも需要高いしね。まぁもうヤソマっちには関係ないけど。」


「あ、あの…。」

「ん?どうしたのかな?ヤソマくん?」


俺は震える唇を噛み締め、恥を忍んで白鳥に問う。


「どういった層に…モテますか…!」

「まぁ、信仰してる人とかはモチだけどメインはやっぱ…。」


ゴクリと自分でも生唾をのむ音が聞こえた。


「天使かな。」

「神様に、俺は、なる!!」


こうして俺、大禍津ヤソマは神様(候補生)になる事を決意した。

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