合宿
夏休み初日、私たちは炎天下の中を歩いている。
うるさい蝉が泣く森を抜けて現れたのは、大豪邸。
物語に出てくるお城のようなレンガ造りの家。
というより、もうお城の域だよ。
「ついに来たぜ! 天文部合宿!」
ユウセンパイ、朝からうるさいです。
私の家から電車で十二駅、駅から徒歩八分。
ミホセンパイの家、もとい城に到着した。
「いらっしゃい」
「今日はよろしくお願いします」
出迎えてくれたのは、ミホセンパイのお母さま。
センパイに似て、すっごいきれいな人だなぁ。
「女の子はミホが案内して。男の子は私が案内するわ」
「わかった。こっちだよ」
私たち女子組が案内されたのは、三階にある大部屋。
広いなぁ……。迷っちゃいそう。
「窓の外、きれいですね」
「夜はもっときれいになるわよ。ここは都会だけど、うちの周りは完全に森で囲まれてるから星がきれいなの」
「去年見た時きれいだったよ、ココちゃん」
ココちゃんがきらきらと目を輝かせた。
「おーい!」
「なに入って来てんのよ、ユウ! このド変態!」
「誤解だって! 痛い痛い! 腕はダメだって! ギャー! 折れちゃうって、あーー!! 」
勝手に入ってきたユウセンパイ。
女の園に入ってきたからには、ただじゃすまないですよ。
ハルセンパイ、やっちゃってください!
「あ、もう九時だわ。そろそろ始めましょうか、天体観測」
「そうだね~」
漫画を読んでいたハルセンパイが顔を上げる。
私たちは屋上に移動した。
「すご~い!」
「きれいだな」
辺り一面、私たちを星の光がつつんだ。
「あれ! 天体望遠鏡ですか?」
隣にいたミホセンパイに、聞いてみた。
屋上の一角に、扉があった。
入ってきた扉とは反対側にあって、カーテンの隙間からレンズが顔をのぞかせている。
「そうだよ。私が小学生の時に買ってもらったの。見る?」
「はい!」
「おっきいですね~」
「お店で一番大きいのをください、っておじいさまが言ってね。私に買ってくれたの」
ミホセンパイは嬉しそうに話した。
大切なんだな、この望遠鏡が。
「よし、セットできたわ。覗いてみて」
ミホセンパイに言われて、私は望遠鏡のレンズを覗き込んだ。
私の目に映ってきたのは、輝かしくてまばゆい星の光だった。




