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カーディガンと優しさ

「寒っ……」

もうすぐ夏。空も晴れてるけど、気温は肌寒い。

よりによって、カーディガンを忘れるなんて。

昇降口で身を縮こめながら靴を履きかえる。

「ヒカリちゃん、寒いの?」

「ソラくん……」

あらわれたのは、初めて見たカーディガンソラくん。

「だ、大丈夫だよ?」

「なぜに疑問形? はい」

彼は自分の着ていたカーディガンを差し出す。

大丈夫なのに……。

でも、今までの経験上断っても無駄だと思ったから、渋々受け入れることにした。

「ありがと」

「今日は素直だね」

ソラくんの中で、普段の私どんだけひねくれてんの?

「寒くなくなったら、返しに来てね~」

手を振って階段を上っていくソラくんの後姿を眺めて、「ありがと」ともう一度お礼をつぶやいた。


「ヒカリ、それ藤井くんのカーディガンじゃない?」

教室に上がってくると、同じ班の千冬ちふゆ 李衣りいが話しかけてきた。

「へ? なんでわかったの?」

「グレーのカーディガンで、裾に1本白いラインが入ってるの、藤井くんのだから」

気まずそうに、リイは私に言った。

よく知ってんな。そうだった……。

リイはソラくんのことが好きなんだ。

「ごめん、リイ! 私……」

「いいよ。天文部仲良いし。藤井くん優しいし」

彼女はそう言って、笑った。

鈍感でひねくれ者の私にだって、その笑顔が無理して作ったものだってことはわかった。

リイの言うとおりだ。

私だけが特別だと思ってドキドキなんてしてたけど、ソラくんはみんなに優しいんじゃん。

私にだけ優しいわけじゃ……。

ソラくんは人気者。普段近くにいるから実感なかったけど。

てか、なんで私落ち込んでんの!?

これじゃまるで……。私がソラくんのこと好きみたいじゃん。

好きなわけ、ないよね? ない、よね?


「ヒカリちゃん、寒いのましになった?」

「あっ、ソラくん! ありがと、ましになったよ」

「よかった」

そう言って彼は私の頭をなでた。

何でソラくんは私に優しくするんだろ?

同じクラスになったことない、たまたま同じ部活動の私に。

しかも、入部して間もないのに。

「ソラくん、なんで私に優しくするの?」

言った後で私は後悔した。

だってソラくんが。驚いたように、悲しそうに私のほうを見ているから。

困らせるようなこと言っちゃったかな。

「優しくされたくないなら、もうしないよ」

「ち、違うの! なんで私なのかなって……」

「へ?」

彼は戸惑った様子で私を見ている。

「ほっとけないんだって、ヒカリちゃん」

ほっとけない……。

私ってもしかして危なっかしいタイプ?

「優しくされたくないわけじゃないの。なんでであって間もない私に優しくするのかな? って思って」

しどろもどろに誤解を解こうとした。

でも、彼にはそんなの必要なかった。

「そんなことだろうと思った」

それが、私をからかって言った嘘なのかはわからない。

でも私の中には、安心している私がいた。

なんで、嬉しいんだろうな。

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