決定
「直りました~!!」
・・・早っ!
藤……、あっ、やべっ!
ソラくんが自慢げに、天体望遠鏡にかかっていた布をとった。
「ソラくんすご~い」
「センパイやりますね」
「おまえ天才か!?」
ソラくんの周りに人だかりができる。
私も便乗して、彼に近づいた。
「やっぱりすごいね、ソラくん」
「ヒカリちゃん、今日は素直だ」
今日は?
私、そんなにひねくれてるのか?
「いつも素直じゃないかな?」
「素直じゃないよ」
グサッ、と胸に突き刺さるセリフを吐いたのはソラくん。
ではなく、ユウセンパイ。
「まあ、従順じゃないことくらいは自覚してますけど」
純粋なヒカリちゃんは、遠い空の彼方に消えたからね。
「でもさー、ひねくれてるほうがよくない?」
「け、ケンタセンパイ!?」
「おっ、ケンタそういうタイプ?」
ひねくれてるほうがいい?
変わってるなぁ……。
「手のかかる子ほどかわいいってね」
そういって、ケンタセンパイは私の頭をなでる。
大きくて優しいケンタセンパイの手は、とても優しい。
やっぱり、大好きだなぁ。
「ヒカリちゃん、もしかして」
「ソラくん、なんか言った?」
「ん? なんもないよ」
ゔ、言葉濁されたし……。
ま、いっか~。
「呼び方、いつの間に変わったんですか?」
「なんの?」
帰り道、ココちゃんが謎の質問をしてきた。
あくまでも主語がないから謎なだけだ。
「ソラセンパイですよ。藤井くんだったのに、ソラくんって」
「ああ。なんか強引にね」
私は苦笑いして、ココちゃんを見る。
彼女が不機嫌そうなのは、私の思い違いだろうか?
「へ~、そうですか。そんなことより、夏休みの天体観測合宿やるんですよね?」
夏休み? もうそんな時期か~。
ていうか、ココちゃんの威圧感が半端ないんだけど。
「やりたいよね。ココちゃん、合宿って言っても、ミホセンパイのお家に泊まるだけだよ」
ミホセンパイこと、夜沢 美穂センパイは、天文部の副部長にして、超の字が付くお嬢様。
毎年、ミホセンパイの家に泊まって、天体観測するのが恒例(?)。
「ココちゃんたちは初参戦なのに、なんで合宿のこと知ってるの?」
「ユウセンパイがミホセンパイに言い寄ってましたよ」
あの人かー!!
「そっかそっか……」
でも楽しみだなぁ、天体観測。
「今年もやるぞ、天体観測合宿!」
わー、あはははは……。
明らかにいらないプリントの裏に書かれたであろう、『決定』の二文字。
もう少し工夫できないんですかね、このセンパイ。
「結局、決まったんですね」
「そうなんだな~」
ユウセンパイ、ドヤ顔してるけど、あなたの手柄じゃなくてミホセンパイのおかげです。
「計画立てましょうよ。あっ、鉛筆の芯折れてるし」
部長の机に置かれている鉛筆入れ。
中に入っている鉛筆は、みんな芯が折れていた。
「誰か鉛筆削りもってませんか~?」
ヒカリちゃん、それ貸して~」
ゴミ箱の前で何やら構えをとるミホセンパイ。
なに考えてんだ?
「でも芯が……」
「いいから、いいから」
半ば強引に私から鉛筆を奪い取ると、彼女は右手に握っていた小刀を器用に動かし始めた。
みるみるうちに、鉛筆の先が尖っていく。
「はい、どうぞ」
ミホセンパイの小刀さばきに見とれていると、センパイは鉛筆を削り終えていた。
「ありがとうございます」
ミホセンパイは満面の笑み。
でも、この光景を始めて見たコウハイチームは、思いっきり引いてましたよ。




