シュークリーム
「しっつれいしま~すっっ! 尾山さんいますか~?」
テンション高いな、この野郎!!
はっ! ワタシハナニヲイッテルンダ!?!?
「い、いるよ~」
平静を装って、寧宮のもとへ……。
「ご所望のシュークリームでござりまする」
「いつの時代の人間だよ」
立て膝をついて、コンビニの袋を差し出してきた。
「ありがと」
私が袋を受け取ると、寧宮は「宿題のためなら」と唇をかみしめながら走り去る。
宿題のためならって……。
彼の言葉に苦笑した私は、遠くなっていく彼の背中に大声で叫んだ。
「部活頑張ってねー」
「おーう」
振り返らずにずっと前を向いて手を振る寧宮は、教室での彼とは違う私の知らない姿に見えて、ちょっと遠く感じてしまった。
「Hello、みんな~! 俺がいなくて寂しくなかった~?」
キラキラオーラを振りまいて、みんなに手を振るユウセンパイ。(結果、すべってるけど……)
「うるさいわよ、ユウ! あんたはアイドルかっ!!」
「ハルが怒った~。ヒロくん助けて~」
ユウセンパイは机の陰に隠れて、コウハイのヒロくんこと、城田 千紘くんを盾にする。
「イヤです」
「そんな~」
うるさい先輩が来てしまった……。
ここは見つかってしまう前に、シュークリームを食べてしまわなくては!
「ヒカリちゃん、何食ってんの?」
いきなり後ろから声をかけられる。
見つかっちゃったよ……。
おそるおそる後ろを振り向く。
「ケンタセンパイ!?」
ユウセンパイかと思って振り向いたところにいたのは、ケンタセンパイだった。
「おっ、シュークリーム。ちょっともらっていい?」
「ああ、どうぞ……」
そういったところで私は気づいてしまった。
「いただきまーす」
よく考えたら、間接Kiss!
ああ、やってしまった……。
「ケンタセンパイ? 何してるんですか?~」
「ソラー! な~んもないよ♪ じゃあね、ヒカリちゃん」
ケンタセンパイは藤井くんに連れられて行く。
そして私は、ケンタセンパイがほおばったシュークリームを口へ放り込み、みんなのもとへ向かった。
「あのー……」
「ヒカリちゃん! いたんなら声かけてよ~。ハルもケンタもソラもいなくなっちゃったしー」
部誌―――と言ってもただのノートだけど―――を右手に、ユウセンパイが驚きつつもお得意の笑顔。
「ハルセンパイいないんですか?」
おっかしいな~。
さっき私の目の前にいる人がギャーギャー騒いでたのに……。
「そうなんだよ。まったく、どこ行きやがったんだ、あいつは」
「ハルセンパイ、さっき生徒会の腕章つけた人に連れていかれてましたよ」
いきなり会話に入ってっ来たのは、コンちゃんこと、今野 瑞季ちゃん。
美人さんで、同学年からも上級生からもモテモテな、学校のアイドル的女の子。
いわゆる、マドンナってやつだ。
でも、実は熱狂的なアイドルファン。
聞いた話によると、とあるアイドルのコンサートに行ったとき、そのアイドルの事務所からスカウトされたとか。
「生徒会……。てことは、陽哉かな? ならいいや」
聞き覚えのある名前。誰だっけな?
「白昼堂々、2人で駆け落ちだったりして~」
駆け落ちって……。
ハルセンパイの彼氏さん、永矢 陽哉先輩のことか。
「本当に駆け落ちかもしれませんね」
「誰と誰が駆け落ちだって?」
私が冗談っぽく笑ったとき、後ろから嫌な予感がした。
「ハルセンパイ……。いつからそこにいたんですか?」
おびえた様子のコンちゃんに、ハルセンパイは笑って返す。
あくまでも、怖いほうの笑顔だけど……。
「ユウが、『白昼堂々、2人で駆け落ちだったりして~』って、笑ったとこらへんかな」
顔は満面の笑み。でも手元は……。
「ごめん、ごめん。冗談だって。そんなに怒んなって、痛っぁ~!!!」
ユウセンパイよ、星になれ。
手を合わせて、私とコンちゃんはユウセンパイの哀れな一部始終を見届けた。
天文部の部室を出て、私は昇降口へと向かっていた。
「このレンズをここにはめて……」
この声、藤井くん?
いきなり入って、驚かしてやれ!
「失礼しま~す!!」
「うわっ!」
部屋の中にいた男の子は宙に舞ったレンズを慌ててキャッチして、そっと床に置いた。
「ヒカリちゃんかよ~。びっくりしたじゃん」
「かよってなんなんですか? それに、驚かしてるんだから驚いていいんですよ。というか、藤井くんここにいたんですね」
「まあな。てゆうか」
彼は肩を落としてため息をついた。
てゆうかで切るなよ!
続き気になるじゃん!
「ヒカリちゃんも、ソラって呼んでよ。藤井くんって、なんかよそよそしいし。あと、敬語もダメ」
…………?
この人なんて言った? ソラと呼べだと?
藤井くんは私に不満そうな視線を送ってくる。
しかもほっぺを膨らませて……。
ああダメだ、これ以上は私の良心が傷んでいくだけだ。
「わ、わかりました。ソラくんですね?」
「敬語じゃなくて」
しぶしぶ私は藤井くん&敬語を改めさせられ、ソラくん&タメ口にすることにした。
藤井くん改め、ソラくんはさっきと真逆の態度で目を輝かせている。
ユウセンパイと同類だな。
なんで私の周りには、強引な人が集まるの?




