恋と星
「あれ! 夏の大三角形だ!」
「ベガ、デネブ、アルタイルね。よく見えるでしょう?」
「はい!」
ミホセンパイの天体望遠鏡で星を探す。
ミホセンパイはうっとりして空を見上げた。
「ヒカリちゃん、知ってる? 星座ってね、星がつながって形ができるんだよ」
「そういうものじゃないんですか? 星一つじゃ星座とは言わないですし……。どうしたんですか? いきなり改まって」
当たり前のことを言い出したセンパイにつっこむ。
クエスチョンマークを頭に浮かべる私に、センパイは笑って話をつづけた。
「一つだけで見つけてもらえる星は少ない。地球に近くて、光の強い一等星や二等星だけだわ。一つだけじゃわかってもらえないの。それってね、なんにでも同じことだと思うの。そうね~。たとえば、恋」
恋と星が同じ? どういうこと?
私には、センパイの言いたいことがよくわからなかった。
「一方的に思っても、星座にはならない。二人の気持ちっていう星がつながって、恋っていう星座になる。昔、誰かが言っていたわ。お母さまか、おじいさまか。もしかしたら、テレビや本でかもしれないけれど。ヒカリちゃんの思いも、星座になるといいわね。ソラくんへの。彼のことが好きなんでしょ? まちがってるかな?」
ミホセンパイは知ってたんだ。私がソラくんのことを好きだって。
センパイ、私がソラくんのことで悩んでると思ってこんな話を?
優しいな、ミホセンパイ。
「頑張れ! 夏はまだまだ始まったばっかりだよ。夏は短し、恋せよ乙女! って、ちょっと上からになっちゃったかな?」
「あ、ありがとうございます!」
ミホセンパイのエールが、私を強くした。
そして前を向かせてくれた。
頑張ろう、恋愛だって。
ソラくんへの思いを星座にするんだ。
思いが小さいなら、大きくすればいい。
気づいてもらえないなら、振り向かせればいい。
恋を、叶えるためならば。
「お、ヒカリちゃん! ヒカリちゃんも眠れないの?」
廊下の窓から星を眺めていた私は、ふと顔を声のしたほうへ向けた。
「も、ってことは、ソラくんも?」
「まあな~」
そう言って彼は私の左隣に来た。
一つの窓枠に二人が入るんだから、当然ソラくんとの距離が近い。
時々、彼の息が耳元にかかる。
そのたびに、私はドキドキしてたまらない……。
「俺さー、ヒカリちゃんのこと、好きなんだよね」
軽い口調でソラくんはそう私に言った。
突然の告白。
口調は軽いけれど、その言葉が心からのものなんてことくらい、私にでもわかった。
真剣なソラくんのまなざし、照れたそらくんの表情。
その表情は、私が見た初めてのソラくんだった。




