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ヴァンドル・バード  作者: 天猫紅楼
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逃亡! 巨体のガラオル、姿を消す!

 ディックに導かれてヤツハのもとに駆け込んだサクは、息が上がり興奮している。 サクは部屋の奥にヤツハの姿を見つけると、目を見開いて声をかけた。

「ヤツハ! 大丈夫かっ? ケガとかないか?」

 ヤツハは床にペタリと座ったまま呆然とサクを見つめていた。

「サク……」

 それ以上は言葉にならなかった。 サクは部屋の中央に陣取るガラオルを見ると、激昂した。

「お前だな! ヤツハをさらったのは!」

 サクは拳を握って気を溜めた。 壁ぎわに立って、必死にカイルを押さえていたシリウが

「よくここが分かりましたね?」

 と言うと、サクは彼らにも吠えかかった。

「ディックが案内してくれたんだ! お前ら、オレを置いていくとはどういうことだよっ!」

 シリウは苦笑した。

「まだ気を失ってたので、荷物になると思いまして」

「荷物ってなんだよ!」

 サクは今にもシリウに噛み付く勢いだったが、ふと我に返ってガラオルを睨んだ。

「喧嘩は後だ! まずはこいつを倒す!」

 カイルも頷いてシリウを振り払うと、剣を構えた。 サクとカイル、いや、シリウも含めて三人揃えば力は何十倍にもなるだろう。

 その時、それまで呆然としていたヤツハが声を上げた。

 

 

「やめて!」

 

 

 サクとカイルは驚いてヤツハの方を見た。 ヤツハは震えながら床にペタリと座ったままそう叫んだ。

「それはどういう事だ、ヤツハ?」

 目を丸くして言うカイルに、ヤツハはそれ以上何も言えないまま俯いていたが、それを見たガラオルはまた豪快に笑った。

「そうだな! それがいい!」

 笑い続けるガラオルに訳が分からず、ヤツハとガラオルを見比べるカイルとシリウ。 ガラオルは壁ぎわにゆっくりとにじりよった。

「ヤツハ、今回は見逃してやる! だがな、次は確実に食うからな! 気を付けていろよ!」

「待って!」

 ヤツハがガラオルを呼び止めた。

 

 

「本当に……本当に、あたしのお父さんなの?」

 

 

 震える声で言うヤツハに、サクを始めシリウやカイルも身震いがするほど驚いた。 ガラオルは

「ちょっと違うがな。 俺様のなかにお前の父親は生きている。 確実にな」

 と不敵な微笑みを残しながらその太く分厚い手で壁をポンと叩くと、同時に壁が回転し、その姿は一瞬で壁の向こうへと消えた。

「待て! 逃げるのかっ!」

 慌ててカイルが追い掛けようとしたが、すぐに壁はもとのように戻り、どんなに叩いてもピクリとも動かなかった。

「カイル! どいてろ!」

 サクの声にカイルが壁から離れると同時に、サクの拳が壁に撃ち付けられた。

爆拳弾バッケンダン!」

 幾つもの拳が弾の様に壁を攻撃し、土煙と共に瓦礫が飛び散ったが、そこには大きな穴が空いただけだった。

「なんだよ? 向こう側に道があるんじゃないのかよ?」

 サクが驚き、カイルも信じられないという表情をした。

「何らかの念が込められているんでしょう。 このルートは望めないようですね」

 シリウが冷静に分析すると

「くそっ!」

 カイルとサクは、取り逃がした悔しさに壁を叩いた。

 その時、天井から小さな石が落ち始めた。 同時に壁に亀裂が生じ始めた。

「いけません! 洞窟が崩れます! すぐにここを出ましょう!」

「ああ! ヤツハ! 立てるか?」

 サクは座り込んだままのヤツハを無理やり立たせ、抱えると、四人と一匹は洞窟を脱出した。


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