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ヴァンドル・バード  作者: 天猫紅楼
39/95

驚愕の事実!?

「ヤツハーー!」

 カイルの怒号が洞窟のなかに響いた。 その足元には、見張り番をしていた男二人が倒れている。

「カイル! そんな大きな声を出しては、相手に『出てこい』と言っているようなものです!」

 シリウが慌ててカイルの前に立って制止した。 その身体を押し返すようにのけると、カイルは前へと進んだ。

「出てきてくれるならその方が早い! 行くぞ!」

 そのうち、なんだなんだと入り口の異変に気付いた仲間たちが出てきた。

「なんだ、お前ら? ここはガキが来るところじゃねえ! 帰れ帰れ!」

 シッシッと手で払う仕草をしながら近づいてくる男に、カイルの体が飛んだ。

「!」

 カイルの後ろで倒れる男に、仲間たちは驚き、次の瞬間には激昂した。 次々に現れ近づいてくる男たちに、カイルの両手が振り下ろされた。

蒼刃壁砕(ソウハヘキサイ)!」

 気合と共に振り下ろした剣から蒼い切っ先が二本、地面をひた走り、男たちを薙ぎ倒した。

「シリウ! 急ぐぞ!」

 カイルは振り向きもせずに走り始め、シリウは無言でその背中を追い掛けた。 しかし、二人はすぐに立ち止まってしまった。

 穴が縦横無尽に走り、まるで迷路のようだった。 真っ暗闇のなか、標識があるわけでもない。 闇雲に走り回っても迷うだけだ。

「くそっ!」

 ちぎれるかと思うほどに唇をかみ、悔しがるカイルの肩をシリウが掴んだ。

「カイル! 落ち着いて!」

 その腕を振り払い、カイルはシリウを睨んだ。

「一刻を争うんだ! アイツにさらわれたとしたら、こんな所で立ち止まっている余裕なんて無いんだよ!」

「カイル、もしかしてガラオルとは流族の……」

 シリウはあえて静かな口調でカイルに尋ねた。 カイルは小さく、それでもしっかりと頷いた。 その瞳は、焦りでユラユラと泳いでいた。

「アイツは……マチさんの仇だ!」

 シリウは息を飲んだ。 そして自身を落ち着かせるように眼鏡を上げ

「そうでしたか……」

 と息をついた。

「ガラオルは女好きで有名な流族だ。 今までにたくさんの女たちが餌食になってきた。 まさかヤツハがアイツなんかに捕まったなんて!」

 憎たらしそうに周りを見るカイル。 シリウが冷静に判断を下した。

「ガラオルがボスだとするなら、多分一番奥の方に居るでしょうね」

「くそっ! 足止め食ってる場合じゃないのに!」

 壁を蹴り上げるカイル。 その時、遠く小さく吠える声が聞こえた。

「!」

 二人が振り向くと、猛スピードで走ってくる小さな二つの光が見えた。

「ディック!」

 小さな二つの光は、ディックの目だった。 あっという間に二人を追い抜くと、くるっと振り向いてひと吠えした。

「ディック! やっと気が付いたんですね! ヤツハの所へ案内してください!」

 嬉しそうに言うシリウ。 二人は走り始めたディックを追い、洞窟の暗やみの中へ消えていった。

 

 

「!」

 ヤツハの体から離れたガラオルは、再びあぐらをかいて、太い葉巻に火をつけた。 ガラオルはヤツハを襲わなかった。 腕を取り馬乗りにはなったが、すぐに身体を離したのだ。

『なんなの?』

 ガラオルの意図がわからずにただ黙っていると、ガラオルはふっと鼻で笑い、俯いた。

「やはりとは思ったが、さすがにいい気分はしねえな、自分の娘を手に掛けるのは」

「? それ、どういうこと?」

 ヤツハが恐る恐る尋ねると、ガラオルはニヤリと微笑んだ。

 

「お前は、俺の娘だってことだよ!」

 

 その時、仲間の男が駆け込んできた。

「ボスっ! 侵入者ですっ!」

 そしてその場で倒れた背後に、カイルの姿があった。 その脇を、風のようにディックが走り込み、ヤツハの傍に寄り添った。 ヤツハを守るように、唸り声を上げるディック。

「ヤツハ、大丈夫ですか?」

 すぐにシリウの姿も現れた。 カイルは床にあぐらをかくガラオルを睨んでいた。 ガラオルは驚く様子もなく、落ち着いた目でじっとカイルを見ていた。

「マチさんの仇! 覚悟しろ!」

 カイルは剣を構えるとガラオルへと突っ込んでいった。

「うぁっ!」

 うめき声と共に、カイルの体は横殴りにされ吹き飛ばされた。 壁に叩きつけられ、剣はくぐもった金属音と共に床に転がった。 その隙に、何故かディックが外へと飛び出して行った。

「カイルっ!」

 シリウは倒れているカイルの前に立ち、ガラオルに向かって構えた。

「無茶です! 相手もよく知らないで突っ込むなんて!」

「くっ……!」

 カイルは腕を立てて起き上がり、拳を握った。 そしてソレを振りかざした。

弾刃抜花ダンパバッカ!」

 シリウの脇を抜けて、ガラオルへと気の弾が飛びかかった。 ガラオルはそれを事もなげに手で払った。

 気の弾は壁に当たり、拳大の穴にへこんだ。 瓦礫がパラパラと地面に落ちた。

「素手で弾いた!」

 カイルは驚いた声を上げた。 ガラオルは太く笑い、空気を揺らした。

「挨拶にしては手荒すぎだな! この女を助けに来たのか? ガキのくせに、たいした勇気だ!」

 余裕の表情で笑い続けるガラオルに、遂にカイルがキレた。

「お前は必ず殺す!」

 シリウを突き飛ばして地面に転がる剣を拾うと、ガラオルへとまた襲い掛かった。

「まだ分からんか?」

 ガラオルはカイルが振り下ろした剣を軽くかわし、片手でその両腕をつかむと引き上げた。

「このっ!」

 足が地面から離れ、吊されたカイルは必死でもがいた。 シリウも手出しが出来ないでいた。

 ガラオルはカイルの顔を覗き込んだ。

「ほほう。 よく見るとお前もなかなか綺麗な顔をしてるな!」

 カイルはそのいやらしく笑うガラオルに唾を飛ばした。 ガラオルは一瞬驚いた顔をしたが、すぐににやけた。

「ふん。 威勢のいいガキだ。 心配するな。 俺はそっちの趣味はねえ!」

 そう言うと、ガラオルはカイルをシリウに向けて投げ飛ばした。

「カイルっ!」

 シリウに受けとめられたカイルは、すぐに立ち上がった。

「カイル! 落ち着いて!」

 肩を掴むシリウに、カイルは構わずまた向かっていこうとしている。 シリウの言葉などまるで耳に入っていないようだった。

 

 その時、轟音と共に入り口付近の壁が崩れ、大きな穴が開き、土煙が部屋を待った。

「ヤツハ!」

 荒い息と共に現れたのはサクだった。

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