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プロローグ

 熱湯をかけられた時に人間は、正確にいえば私という存在は、熱さになど目がいかない。そう気づいたのは、中学生の頃だった。


 私を罵倒する家族の声が今も遠くの方で響いている。

――こんな下等能力者、私の家族じゃないわ! さっさとここから消えて! 死んでしまえ!

 私には、熱湯の、物理的な苦痛の何千倍も、信頼してきた人から裏切られたという事実に心を締め付けられたのだ。自分というものの終末すら、覚悟した。


 人体とは不思議なもので、何があろうと、どんな時でも、鼓動というものは鳴り止まないのだ。一定間隔で鳴り響くそれに合わせて血潮が指先を流れる度、私は思い知らされるのだ。今の私には、居場所なんてどこにもない。


 その日以来、私が再び家族と相見えることはなかった。今度はきっと、殺されてしまうから。まだ、生きていたかったから。


 そんな私が惨殺事件を起こすのは、それから3ヶ月後のことである。

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