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花物語  作者: 浅見カフカ


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第四章 ブーケ⑨

介護付き高齢者入居施設 さくら。

連理桜のエンブレムが印象的な施設だ。

吹き抜けのエントランスに差し込む陽光が柔らかく、一年を通して春の陽だまりを思わせる。

(締切明けに来たら寝るな)

以前、菫子さんに取材に来た時も同じことを思った気がする。


「こんにちは遠藤さん」

「お忙しいところ取材を許可頂きありがとうございます」

広報の田中さんが私たちを迎えてくれた。

「初めまして。撮影を担当します上田です」

上田さんが名刺を差し出すと田中さんも同様に差し出し交換をした。


「今回は菫子さんの想い出ですか」

田中さんが取材目的の再確認をするように言った。

「はい。来月の清明祭に向けての特集です」

騙しているわけでは無いが北浦将吉の名前はここでは伏せることにした。

彼の名前は取材の中で浮かんだていでいく。

彼はここの入居者であり、トップだった人物。

いきなり本丸を攻めるのは悪手だろう


「ICレコーダ、回しますね」

これは不親切だった。

「録音、しますね」

言い直すと目の前の老女は「はい」と小さく何度も頷いた。

「キミさんは菫子さんとは親しくなさってたのですか?」

ゆっくりと大きな声で尋ねる。

キミさんは正面を向かずに話を聞いた。

そしてこちらを向くと、再び小さく何度も頷いて「よく百人一首や句会を一緒にしましたよ」と、少しだけしわがれた声で話した。

後で田中さんが教えてくれたが、百人一首ではなくカルタだそうだ。

それでもキミさんは私が話すと横を向いて、一生懸命聞き取ろうと耳を向けてくれた。

いくつかのインタヴューの後、私はキーとなる質問をしてみた。

「それじゃぁ、キミさんが一番親しくなさって他のですね」

「一番は将吉さんじゃの。北浦将吉さん。ラブリャブじゃの」

そう言ってキミさんは可愛らしく笑った。

思わず私たちも大笑いしてしまった。

横目で見た田中さんだけが、困ったように

な苦笑いを見せた。


「田中さん。北浦将吉さんというのは、どのような人物なのですか?」

数人のインタヴューの終えた後、知らぬ風を装って尋ねてみた。

「物静かで優しい方でしたね」

「どうしても下世話な言い方になってしまって申し訳ないのですが——」

私は恐縮したように、そう前置きをした。

「皆さんのお話を聞くに、おふたりは恋人同士だったのでしょうか?」

「私が見る限りは、一言で表すには難しいですね。北浦さんは常に『菫子お嬢様』と呼んでましたし——」

田中さんは少し考えてから何かを思い出すように言葉を止めた。


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