始まりの波紋
今日は更新できました!
俺はしばらく歩き続けた。先ほど取得した闇属性魔法の効果と内容を頭の中で整理しながら歩いているとどこからか水の音が聞こえてきた。俺はその音がした方に向かっていくとそこには小さな湖があった。湖は穏やかで、静寂に包まれていた。しかし、俺がその場に近づくと、水面にさざ波が立ち、不自然な揺らめきが広がった。
「……なんだ?」
近づくにつれ、湖の中央付近が光を帯び始めた。青白い光が水中から浮かび上がり、やがて人の形を取った。それは水から生まれた精霊のような存在だった。女性の姿をしており、長い髪が水のように流れている。
「ここへ来る者は久しい……転生者よ。」
俺は驚いて足を止めた。どうして俺が転生者だとわかる?
「……俺のことを知っているのか?」
精霊はゆっくりとうなずいた。彼女の目には深い知識と慈悲が宿っているようにも見えた。精霊は俺を見つめたまま、静かに口を開いた。
「あなたの存在は、この地に新たな波紋を広げています。遠くからでもその力が感じられたのです。」
「力…?俺はただのレベル1だぞ。」
思わず苦笑してしまう。だが、精霊は首を横に振る。
「あなたが今、どのような状態であるかは問題ではありません。この地では、力とは必ずしも数値だけで測れるものではないのです。」
湖の表面に浮かんでいた光がゆっくりと消え、代わりに水面に映る俺の姿が歪んでいった。その歪みの中から、何かが見え始める__文字のような、形のような、はっきりとしない映像が映し出される。
「これは何だ?」
「それは、この地においてあなたが辿る可能性の一部です。」
精霊の言葉を聞きながら、水面に目を凝らす。そこには見覚えのない景色が広がっていた。険しい山々、広がる荒野、そして巨大な城のような構造物__どれも俺の知識にはないものばかりだった。
「これは…俺の未来なのか?」
「可能性の一つに過ぎません。」
精霊は微笑む。
「あなたがどう行動するかによって、これらは変化します。そして、その行動はあなたが選ぶべき道を示していくでしょう。」
精霊はゆっくりと腕を伸ばし、水面の上を指でなぞるような仕草をする。すると、水面の映像が消え、再び穏やかな湖に戻った。
「私はここで見守っています。どう進むべきか迷った時、この湖を訪れなさい。」
「見守るって…俺は具体的にどうすればいいんだ?」
「あなた自身が答えを見つけるのです。そのために歩みを止めないこと、それが重要です。」
そう言いながら湖の中に戻ろうとする精霊に俺はひとつ…いや、ふたつの質問をした。
「この近くに町はあるか?方向を教えてくれ!」
水の大精霊_セレーネは少し考えてから答えた。
「確か…あなたが来た方向に町があったはずよ」
俺は勘が外れたことにショックを覚えたがもう一つの質問をするため、直ぐに立ち直った。
「そうだ、名前…最後に名前を教えてくれ!」
精霊は穏やかな笑みを浮かべながら答えた。
「私は水の大精霊…セレーネよ。」
その言葉が静かに湖の上に響き渡ると、彼女の姿が徐々に薄れていき、水面に漂っていた光も消えていった。最後に彼女が微笑む姿が一瞬浮かび、やがて湖は元通りの静寂を取り戻した。
俺はその場でしばらく立ち尽くした。頭の中ではセレーネの言葉と、水面に映った未来のような映像が繰り返し思い返されていた。しかし、目の前にある湖は何事もなかったかのように静かで、風が水面をそっと揺らす音だけが耳に届いてくる。俺は湖まで来た時に通った道を戻りながら呟いた。
「俺の勘は……外れたか。」
ため息をつきつつも、少しだけ肩の力が抜けた気がする。セレーネとの出会いが何を意味するのかは分からないが、これが俺の冒険の始まりに過ぎないことだけは、確信できた。
前回手に入れた闇属性魔法使ってないね…次回か、その次か、その次ぐらいに使ってるシーンを書きたいと思います。




