新たな能力
続編です。多分12話かな。
楽しんでくれると嬉しいです。
《スキル名:神の目》
スキルの詳細を確認する。
―――――――――――【神の目】対象のステータスとスキルを閲覧可能。任意でスキルを一つだけ削除可能。削除したスキルは、必要SPの半分の消費で自身が習得可能。※一日に一度のみ使用可能―――――――――――
「……これ、やばくないか?」
ステータス閲覧、スキル削除、しかもそれを自分で習得できる。使用制限こそあるが、使いようによっては一気に戦局を傾けられる切り札だ。俺は高鳴る胸を押さえながら、隣に佇む狼の様子を窺った。
鋭い耳がわずかに揺れ、黒曜石のような瞳が一点を見据える。
「……敵か?」
次の瞬間、狼が低く唸った。
「……あーもう、そろそろ名前つけてやらねぇとな。呼びづれぇし」
俺はポツリと呟きながら、背中に手を回し、戦闘態勢を取った。
「黒くて、速くて……お前は『影牙』だな。しっくりくるだろ?」
黒狼――影牙はちらとこちらを見て、鋭く鼻を鳴らした。どうやら気に入ったらしい。
そして――現れたのは、漆黒の魔紋を刻んだ異形のゴブリン。いや、ゴブリン・ロード。通常の個体とは明らかに違う。
「よりによって、こいつが……!」
俺は警戒しつつ『神の目』を起動。視界が青白く染まり、相手の情報が浮かぶ。
―――――――――――【個体名:ゴブリン・ロード】レベル:12HP:310MP:89スキル:・指揮(仲間の能力を微強化)・野生の直感(敵の攻撃を察知)・激昂(HPが半分以下になると攻撃力アップ)―――――――――――
「野生の直感……面倒だな」
俺は迷わず削除対象を選ぶ。
「『野生の直感』、削除!」
瞬間、ゴブリン・ロードの気配がわずかに乱れた。機を逃さず俺は叫ぶ。
「行け、影牙!」
影牙が闇を裂いて走る。一閃、鋭い牙が奴の肩に食い込んだ。吠えるような声が響き渡り、ゴブリン・ロードは反射的に肘で影牙を弾き飛ばす。
「シャドウバインド!」
影がうねり、敵の脚を絡め取る。しかし、ゴブリン・ロードは獣じみた力で拘束を破ると、俺に向かって突進してきた。
「っく……!」
すぐさま影に潜って躱す。棍棒が俺の立っていた地面を砕き、砂塵が舞い上がった。
「本気で殺しに来てるな、コイツ……!」
背後で影牙が吠える。再び飛びかかるが、敵の蹴りが腹を捉える。影牙が地面に叩きつけられた。
「影牙っ!」
俺の叫びに反応するように、影牙が再び立ち上がる。俺は術式を急ぎ構築した。
「シャドウレーザー!」
闇の光線が一直線に奴の胸を穿つ。が、耐えられた。
「激昂が発動……!」
赤黒いオーラを纏い、ゴブリン・ロードが狂ったように突進してくる。
「やるしかない! シャドウストーム!」
俺を中心に影の竜巻が吹き荒れる。敵がひるみ、一瞬だけ動きが鈍る。
「今だ、影牙っ!」
影牙が横合いから跳躍、鋭い牙が喉笛を深く抉る。
ガクリと膝をつき、ゴブリン・ロードが崩れ落ちた。
「……終わったか」
影牙が戻ってきて、俺の頬をぺろりと舐めた。俺は微笑む。
「よくやった、影牙」
ステータスに表示されたログを見る。
《削除スキル:野生の直感》《習得可能SP:2(元スキル必要SP:4)》《現在所持SP:5》
「……習得。っと」
俺は深く息をついた。ひとつ、また一歩先へ進めた。
この力で、俺は“定め”に抗ってみせる。
次回も楽しみにしていてください。