表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/55

52

「……それなら」


ここで咲が、


「私が智香先生に触れるのでもいいのかしら?」


「たぶんね」


厳の返事に、だったらその役は私がやったほうがいいわよね? と咲。


「だって、厳くんは霊力を温存しておいたほうがいいでしょ?」


新子も、


「確かにそうだな。これから将門の首塚をなんとかしようってんだから、田村の負担は少ないほどいい」


同意した。


新たに店内から出てきた者達が三人も倒れていることに流石に異状を感じ、厳たちを見つけて指を指している。


「お、気づかれたぜ。じゃあ、岩渕先生と西村とで出来るだけ減らして、残りは俺と田村でなんとかしよう」


向かってくるならず者集団に新子は不敵に笑う。


その嬉々とした様子に、本当にこの人は教師なのか? 教師でいいのか? と顔を見合わせる厳と咲だった。




「コンビニ全部無料」


衝撃的なタイトルの動画がすごい速さで拡散していた。


発信元は迷惑系として有名な動画投稿者。


興味本位で再生した者はその内容に驚く。


略奪する暴徒。


駆けつけた警察は囲まれ殺され、銃が奪われる。


フェイクではない。


これだけ精巧なフェイク動画を作る技術も予算もないはずだ。


ただ、納得のゆかないことがある。


ライブ配信をしようとしても通信が圏外になってできなかった、と動画の解説にあることだ。


都心も都心。


そんなはずはない。


そう考え、続いて現地に乗り込む者が出たが、皆、本当につながらないと証言する。


そして持ち帰られる動画は時間を追うごとに悲惨なものになっていった。


どうやら(たち)の悪いフェイクではない、との見方がネット上で優勢になるが、


「だったらなんで大手のマスコミが報じない?」


という疑問が湧いてくる。


そして、


『オールドメディア隠蔽』


こんなつぶやきが投稿され拡散。


こうなると面白くないのは自粛要請に従っていたマスコミ各社だ。


「発表はまだないのか?」


警察・官邸からの続報はない。


「このまま言われっぱなしでいいんすか?」


裏付けもなしに無責任な情報を垂れ流すネットの素人達に日頃から辟易している若手が息巻くが、


「だからって手持ちを出してみろ。二番煎じでしかない。警察発表と併せて報じるのが我々の社会的責任だろう」


先輩からそう諭されても納得できず、


「お上の顔色なんて伺わずに、すぐに報じればよかったんですよ! 機動隊が帰ってこないことを出しちゃいましょうよ!」


「バカ! そんなことすればパニックになるぞ」


「なりませんよ。都心の事件なんて、地方の人からしたら遠くの出来事です。それだけ危険だって知らせれば馬鹿な奴らがあの地域に入る抑止にもなるでしょう?」


「ならないと思うぞ。むしろ煽るだけだろう」


「バカは勝手に危険な目にあえばいいんですよ」


「なんてことを言うんだ。だが……」


他社でも同じようなことを考えているだろう。


何もしないでいて出し抜かれては、事態が収まったあと政治権力に媚びて何もしなかった、と批判されかねない。


それも困るな、となり、


「わかった。だそう。だがネット記事のような上辺だけのものは駄目だ。注意喚起になるよう専門家の意見もとってこい」


「はい!」


こうして速報が飛び交い都心での怪異に日本中の耳目が集まってしまった。


当然警察や自衛隊は何をしている、という声が上がるが命令は"待機"のまま。


情報収集中としか理由は聞かされていない。


もどかしい時間がすぎるのみだった。




陰陽課に着いた花は学校での出来事を全て(・・)報告した。


「どうしよう……、あたしのせいで封印が……」


青い顔の花に、


「花のせいじゃないわ。(いつき)君の言うとおり、いずれ解かれていたでしょうね」


美幸は慰めでなく事実としてそう応える。


とっさに制した厳君みたいに思慮深くなれるといいわね、と付け加えはしたが責めたりはしなかった。


「その厳君たちって……」


この部屋にいるのは、花、美幸の他に四人。


呪符師 卜部トヨ。


霊視能力者 鐘沢たまゑ。


そして陰陽師 磯旗光雄。


同じく陰陽師 水屋省吾。


トヨ以外、厳と咲には直接会っていない。


省吾は厳と咲に興味を持ったらしく、


「どんな子達なんです?」


「どんなって、伝えたとおりだけれど……」


招集をかける際に知らせたこと以上に何かあるか? と美幸がトヨを見ると、


「そうですわね。とてもいい子よ」


「いや、そういうことを聞いているんじゃなくって……」


いつもどおりマイペースなトヨには笑ってしまうが、


「いい子ってことはね、共感力も高いことですわよね」


話に続きがあったので、おや? という顔で先を待つ省吾。


「共感力が高さは霊力を使いこなす条件の一つなのは、ご存知の通りですわ」


皆の頷きに、


「あの二人はそれがとても高いように見えましたの。それも違う性質でね」


「違う性質?」


トヨの分析には美幸も興味をひかれた。


伸治達が戻るまで動けないのだ。


それまでの暇つぶしのつもりで聞くことにしたが、話は暇つぶしどころではない方向へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ