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「チッ。見え始めたぞ」


伸治は舌打ちする。


憑依しているアレ(・・)が人の体に収まりきらず滲み出始めた。


二人のところに戻った伸治が、


「やばいっすよ。どんどん濃くなる。これじゃいくら祓ってもまた入り込まれて切がねえ」


そう言ったそばからアレ(・・)が"ぬるり"と地面から生えるように現われた。


「うへっ,憑依しねえで動き始めやがった!」


負の霊力が、それだけ濃く強くなったということだ。


パンッ!


人に憑依してないなら、と友里恵がいつの間にか持ち替えたハンドガンを前置きなしに撃つ。


「うわっ、言ってくれよ」


銃声に耳が痛いと伸治が抗議すると、


「えッ?」


ちゃっかり自分だけ耳栓をしている友里恵がとぼけて聞き返す。


「ったく……」


友里恵さんにはかなわねえや、と諦める伸治に、岩笠は、


アレ(・・)をここで調伏し続けるのはむりだね。きっともっともっと出てくる」


「そうっすね。早いとこ首塚に行って調べて……」


伸治の言葉を、


「本部にもどりましょ」


引き取った友里恵がまた、


パンッ、パンッ!


二体消した。


「だから〜」


文句を言いつつも、伸治は今度は耳を塞ぐのに間に合った。




「むちゃくちゃだな。やっぱ西村は避難するか?」


新子(あたらし)がそういうのも無理はない。


道端の死体に咲の顔は青い。


しかし咲は、


「嫌です。一緒に行きます」


はっきりそう応えた。


が、確かにショッキングな光景で(いつき)がいなければ泣き出してしまいたいくらいだ。


なのに岩渕は平気な顔をしているのを不思議に思い、


「……智香先生は、なんともないんですか?」


咲が尋ねると、


「平安時代ってこんな感じだったんだって」


そんな斜めからの応えに ? となる咲と新子だが、


「ああ、"羅生門"とかですね。確かに」


と同意する厳。


「……なんだい、本の虫ってやっぱ、頭おかしいじゃねえか……」


新子が理解できない気味の悪いものを見るように二人を見る。


「頭おかしいはひどいっ!」


岩渕の頬を膨らませた顔が可笑しくて新子が笑うと厳も咲も釣られて笑い、田村くん裏切ったな、と岩渕も笑った。


そんな和やかなのも束の間。


「シッ!」


角を曲がる前に新子が静かにするようゼスチャーで知らせる。


「向こうにいるぜ」


覗くと、それほど遠くないところにコンビニを略奪している一団。


中から一人出てきた。


手には酒瓶。


それをラッパ呑みしている。


他はまだ店内。


「ちょうどいい。岩渕先生」


あれ、射っちゃえば? と新子。


「え? ……人を、ですか?」


「神社での試し撃ちで的の損傷ってなかったじゃないっすか。きっと大丈夫ですよ」


言われてみれば確かにそうだ。


この弓は霊的な光の矢で負の霊力のみを攻撃し、憑依されている人は傷つけないように思える。


「まあ、もし人にもダメージがいっちゃってもしょうがないんじゃないですかね? あんな奴らだしかまわないでしょ」


と教育者らしからぬ新子に、


「たしかにそうですね。やってみないとわからないのでやってみます」


岩渕も反論しなかった。


厳と咲も(? いいのかな?)となるが、止めはしない。


岩渕が弦を引くと、


ヒュイイイィィィ……


弓場で見たように光の矢がゆっくりと形成されてゆく。


ハシッ


岩渕の放った矢は、


ヒョウ


きれいな弧を描き、酒瓶を(あお)っていた男の胸に音もなく吸い込まれ、消えた。


ドサリ


男はその場で崩れるように倒れる。


それに気付き店内から出てくる者はいなかったが念の為四人は建物の影に隠れ、


「岩渕先生、お見事」


様子を窺いながら新子がそう褒めても、


「でも矢が現れるのに時間がかかりすぎます」


渋い顔をする。


岩渕の、


「私が少しでも霊力を使えれば、もっと速いのかしら?」


そんな独り言ともつかぬ言葉に、ハッとなった厳は、


「智香先生、もう一度やってみてください」


ちょうど店内からまた二人出てきた。


倒れている仲間を見つけ、もう酔ったのか? だらしねえな、と笑っている。


「二人いるわ。気づかれれば仲間を呼ばれてこっちに来るんじゃない?」


そんな岩渕の心配に、


「来ても問題ありませんよ。俺も田村もいる」


新子がそう応え、それより厳が何に気付いたのか知りたくて、


「さあ、早くやっちゃって」


と急かす。


なんだか緊張感にかけるが仕方ない、と岩渕が弓を引くとその右腕に厳が手を添えた。


ヒュフウン


一瞬で矢が具現化し、


ヒョウ


放たれた矢は一人目同様、男の体に吸い込まれるように消え、


ドサリ


倒れた。


何事かともう一人があたりを見回すが、こちらを見つけるより先に、


「智香先生、二射目」


厳に促され、ハッとなってまた厳を引くと、


ヒュフウン


やはり一瞬で矢が現われたので、


ヒョウ


ドサリ


同じように放って二人目にも()てた。


「……これって」


どういうこと? と振り返る岩渕に、


「そうか! 田村の霊力を渡せば自然に集めるより速いんだ!」


なるほど、と興奮気味の新子。


説明の必要がなくなり、新子の無邪気さに、ふふふ、と微笑むしかない厳だった。

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