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「こんにちは」


「やあ」


厳の家の近くまで車で迎えにきたのはやはり伸治だった。


後部座席には先に拾われた花と咲が乗っている。


なので厳は助手席に乗り込んだ。


「どうした?」


ルームミラー越しの咲の様子に、伸治が尋ねると、


「……いいえ、何でも……ただ……」


「ただ?」


「田村君、なんかいつもと違うなって……」


ごめんなさい、気にしないでください、と小さくなる咲。


何で謝るんだよ? と軽くツッコんでから、


「俺には昨日と変わらないように見えるがな〜」


わからん、と伸治は首をかしげる。


何か言いたげな花は咲からの、余計なことは言わないでね! という視線に笑いつつ、


「私服だからじゃない?」


とだけコメントした。


そんな話をしているうちに陰陽課に着くと、


「こんにちは……あら? 厳君、なんだか昨日と違うわね?」


美幸も咲と同じようなことをいう。


「なんだ? このお嬢さんもそんなことを言ってたぜ。やっぱなんかあるのかい?」


美幸も咲も霊力感知能力者だ。


その二人が何かを感じたのだったら、自分には分からなかった何かがあるはず。


そう考え伸治と花は改めて厳をよく見るがやはり何も感じられない。


当の厳は、


「今日呼ばれたのは、今後の話しをするためでしたよね? もし時間があるのならその前に少し聞きたいことがあるのですが、いいですか?」


「いいけれど……それはあなたの"変化"に関係すること?」


「そうだと思います」


「分かったわ。とりあえず座りましょう」


この大部屋は真ん中の低いテーブルの長辺側に3人掛け、短辺側には一人掛けのソファーが配置されている。


美幸は一人掛けに、花と咲で一緒に座ったので、厳はその向かいに座った。


ソファーは嫌いでね、という伸治は向こうからカウンターチェアを持ってきて美幸と厳の間に座る。


「どんな話?」


飲み物が運ばれ、落ち着いてからそう美幸が切り出すと、


「陰陽課は、陰陽寮の方針や慣習を引き継いでいるのですか?」


厳は質問で返した。


表情が固い。


その中にうっすら敵意を見て取った美幸は、


「昨日別れてから……何があったの? ……もしかして」


花と咲をチラリと見て、ここで話を進めて良いものかと逡巡するが、隠し事は逆効果だと直感した美幸は、


「叔母さんになにかあるの?」


自分が結に感じたことを厳にぶつけてみることにした。


「叔母さんがあなたを病院に迎えに来た時ね、おかしな霊力に気付いたのよ。何かに似ているな、ってね。後で考えたら、それは封印された霊力だったわ」


何の話? となっている咲に花が小声で掻い摘んで説明している。


それには構わず美幸は話を進めた。


「でもね、あなたの叔母さんは高霊力者リストに載っていないし、そもそも自然に霊力が封じられることなんてない。となれば……」


「そうです。叔母は祖父に霊力を封じられたと言っていました」


「……やっぱり。でも何のため? それを話してくれるの?」


「はい。でもその前に、先程の質問に答えてください」


「陰陽寮から続いていることがあるのか? ってこと?」


「はい」


「仕事はもちろん引き継いでいるわ」


全国に沢山ある呪物・禍神の遺跡などの管理が最も大切な仕事で、それ以外の高霊力者の監視などは先日話したとおりだという。


「それだけですか?」


「? 他に何があるというの?」


「国家権力、それに反するものは粛清されますか?」


「どういうこと? それも前に話したわよね。霊的な力を使ってテロを企てる輩は……」


「いいえ、そういうのではなく、意に反する者を封じるようなことをしますか?」


「意に? 政府の方針に逆らうとか、そういう意味?」


「そうです」


「それはないわ。職務内容が特殊だから陰陽課に内閣だとかは口出しできないの。宮内庁直轄で、明治以降仕事の内容はずっと変わっていないし、敗戦後は特にその時々の権力からは切り離された組織よ。どうして?」


そろそろ話してくれてもいいんじゃない? と美幸が少しじれ始めたので、


「これは昨夜、叔母から聞いたことなのですが……」


厳が話したことは、皆を驚かせた。

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