表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/60

13.二十日間で、結婚を前提とした真剣交際!?

 とかやっているうちに、夜になる。


 イルマに促されて晩餐用のドレスに着替えたカタリナは、同じくピシッとした正装に着替えたギュンターにエスコートされて、ダイニングに向かった。

 ま、出てくるのは、芸術的に盛り付けられた例の意識が高すぎるメニューだったが。


 向かいのギュンターには、同じ魚でもたっぷりバターを使ったムニエルが出されている。

 カタリナは、おいしそうにムニエルを食べるギュンターをついついガン見し、怯えられてしまった。


「さて。カタリナの婚活の今後についてだけれど」


 食事が済んで、サロンに移ると、ユリアーナは口を開いた。


「まず、明日は昼前に、大神殿を参拝。

 あそこの空中庭園には、皇族方がどなたか必ずいらっしゃるから、適宜ご挨拶。

 ウィノウの皇族方はもちろん、国外からの訪問者にも、身分を問わず、丁寧に、愛想よくね。

 夜は、ウィノウで一番の社交場に行きましょう。

 ギュンターは、留守番をお願いね。

 冬にデビューするあなたが前倒しでカタリナをエスコートしたら、又従姉弟同士で婚約するのかと勘違いされるでしょうし」


「「あ、はい……」」


 又従姉弟二人は、深々と溜息をついた。


「十日後、旧市街の離宮で夏の大舞踏会があるから、それまでにある程度は目星をつけないと。

 大舞踏会の次の日は『炎鳳の夜』だから、お相手をここにお招きしてゆっくり鑑賞できるといいけれど」


 「炎鳳の夜」とは、8月の新月の夜に行われる祭りだ。

 紅の塔を中心に、4つの塔から打ち上げられる壮麗な魔導花火で有名な、夏のウィノウの目玉イベントだが──


「「え!? 十日後!?」」


 またまた又従姉弟二人の声がかぶった。


 ユリアーナがイラッとした顔で、扇をパチリと鳴らす。


「なにを驚いているの。

 ランデールの貴族学院の秋学期が始まるのは一ヶ月後。

 間に合うように帰国するなら、二十日しかないじゃない」


「はぁ……」


 カタリナはげんなりした。


「ああそうだ。カタリナ、あなた宛の手紙は、国元から来たものを除き、すべてわたくしとイルマが精査します。

 どんな方とどんなお話をしたかも、随時報告するように。

 お誘いをいただいても、その場ではお約束せずに、いったん持ち帰りなさい」


「は!? プライバシーとかいう概念も、この世にあったはずでは?」


 ユリアーナは気に入らぬげに片眉を上げた。


「受けても良いお誘いと、受けたら面倒なことになるお誘いの区別が自分でつけられるとでも言うの?」


「い、いいえ」


「でしょ? もちろん、あなたにふさわしい殿方一人に絞れたら、そこから先の手紙は触らない」


「一人に、絞る……」


 カタリナは、くらりとした。

 たった十日間、最長二十日間で、結婚を前提とした真剣交際まで行けということか。


 おろおろとギュンターがカタリナとユリアーナを見比べる。


「お祖母様、今日、ウィノウに着いたばかりなのに、ちょっと急ぎすぎじゃないですか?

 せめて二三日、ゆっくり観光しても。

 僕にわかるところなら、案内します。

 春に来た時に、主だったところは回ってますし」


「そんなもの、結婚相手を探している貴公子に連れて行ってもらえばいいじゃない。

 むしろ、観光なんてしない方がいいわ。

 『まだどこにも行ってないんです』と言えば、『じゃあ私がご案内しましょう』ってなるじゃない」


 ギュンターの助け船は、一瞬で撃沈された。

 ユリアーナは、柄付き眼鏡を取り出して、新聞の社交欄を広げる。


「離宮の大舞踏会までに、魔獣闘技場と競馬、ダルトワ公爵夫人のサロンは行くとして。

 もう少し、昼の会がほしいわね」


 ユリアーナはイルマとあれこれ検討したが、ちょうどいいイベントは見当たらないようだ。


「ま、情報収集は明日にしましょう。

 明日は昼前から夜までフル回転だから、カタリナは早く寝なさい。

 美しい肌は夜、作られるのだから」


「ひゃい……」


 ギュンターに気の毒そうな眼で見送られながら、カタリナは客室へと戻った。

 やっぱり、祖母の館の方がマシだったかもしれない。


レティシア:さて、ローデオン大公国の公子にして又従兄弟のギュンター様が登板ですが。

ジュリエット:ギュンター様はカタリナ様に初恋フォーリンラブ!て感じですけど、カタリナ様的には眼中にないっぽい雰囲気ですね。

レティシア:年下は、カタリナ様はあまり考えていらっしゃらないのかもしれないわね。ギュンター様が社交界デビュー前だというのも大きいのかも。

ジュリエット:ていうか、クルト様、上陸したらすぐどっかいっちゃうってアリなんですか?? 貴公子ってこういう時に、いらないって言っても送るとかなんとかぐだぐだ言い出すじゃないですか。アレ?って思ったんですけど!

レティシア:そこ、わたくしもびっくりしました。特殊なお立場だから感覚が違うのかしら? とりあえず、ジュリエットの体感オッズはどんな感じ?

ジュリエット:んー……クルト様ちょっとオッズ上がって9倍、ギュンター様は30倍くらいですかね。

レティシア:いわゆる万馬券がオッズ100倍以上。そこまでは行かない、という感じかしら。

ジュリエット:そですそです。まだ出揃ってないので、ちょう当てずっぽうですが。次章もよろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ