雨上がり
降り続いていた雨が上がる。
雨上がりの朝はいつ見ても素敵だ。
青空は常よりもいっそう色が深く、ぴかぴかと輝いて見える。
辺り一面、目に入るものすべてが雨によって磨きあげられたように、視界がクリアだ。
春先は特に、草木の伸びること著しく、さまざまな緑の色が乱舞する。草木が雨水を呑み、日の光を受けて、今から花を咲かせるぞー、葉っぱを広げるぞー、と生きる喜びを謳歌する様はたとえようもない。
雨上がりの夕暮れもいい。暮れゆく山あいの細道を一人歩いていると、なんとも言えない心ぼそさがじわり滲んでくる。そういう時に、夕霧が立ち込めてくると、何をか言わんや。
まさに百人一首にある寂蓮法師の歌のような。
つい、霧たちのぼる秋の夕暮れ、と呟くこともよくある。
夜もまたいい。いつだったか、東北にある七時雨山荘に泊まった時のこと。夕方激しく雨が降った。さほど時間が経たぬうちに雨はやみ、夜空が広がる。降るような星空のなか、まるく明るい月が東の山際から登ってくる。すると、一面の草原に小さな光があちらこちらに灯っていくではないか。よく見ると、草葉に乗っている雨露が月の光を受けて輝いている。月明かりの中雨露は輝き、虫の音もしっとりした暗がりから辺りへ溶けてゆく。このような素晴らしい光景に巡り会えたことは奇跡に近い。以降、願わくば今一度と思うのだが、同じような光景に巡り会えずにいる。




