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2000年8月奈良三笠温泉

13日天理近辺の山の辺の道を汗だくになりながらしばらく歩いた。石上神宮に詣で、神鳥である逞しくもふてぶてしい鶏達を眺めた後、暑さに負けて温泉で汗を流そうなどと思い、奈良公園の奥にある三笠温泉に行くことにする。

バスで奈良公園まで移動したら、早足で二月堂を目指す。二月堂からの道は夏にあるくのは初めてで、とても新鮮に見えた。それでもって、すらり伸びた草やら羊歯やら道を通せんぼしている朽木を見るに付け、このはろばろした場所は人を遠ざけようとしているのかな…となど考えてしまう。なにしろ二月堂から三笠温泉までは20分ほどの道のりなのに、人の気配がしない。鹿には会っても、人にあったことは無い。その方が都合が良いので、誰にも教えないでおこうと思う。

カラスの行水のように温泉に浸かってさっぱりしたら、濡れた髪を乾かしがてら二月堂への途中にある岩の上に大の字になり梢の若枝と若葉の響めきをしげしげと眺める。人目を気にせず寝っ転がって空を眺めるなんて滅多にないことだ。風の又三郎のことなぞ考えつつ、ほけほけする。適度に木蔭で暑くなく心地良い。この時期鹿はこの辺を歩かないのか、一頭わ見かけることなく残念に思う。

のんびり二月堂まで歩いてそこの茶店で梅葛切りを頼む。これが暑い時期、やたらさっぱりして美味しい。3月のお水取りの際、寒々しく見えた同じメニューと思えない。喉ごしつるり、梅の爽やかさ、あまり冷たくもない冷え加減。

これから暑いさ中、あるくのが嫌なときはこのコースが増えそうだ。二月堂からぶらり三笠温泉まで温泉に入りがてらの往復、帰りの梅葛切り…。いっとう最後に一杯の美味しい珈琲をいただいて、JR大和路線で帰途に着く。近鉄だとなんだか情緒が無い。JR大和路線でお日様にあたりながらうつらうつら帰る幸せ。谷崎潤一郎氏の陰翳礼讃にそんな記述はなかったか?春先の頃ということで、うつらうつらしながらの汽車旅。

二月堂から三笠温泉への道はその後いつだったか忘れたけれど、行ってみるととば口辺りがフェンスで遮られて先に行けないようになっていた。それからずっと今まで歩いていない。残念だ。

陰翳礼讃の中の旅のいろいろにあった。未読の方は是非目を通すことをお勧めする。

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