1997年4月白毫寺五色椿
13日本日、吉野の山桜と奈良の白毫寺の五色椿を観に出かけた。
吉野は下千本は散り果て、中千本も落花甚だしく、上千本は今まさに満開であり、奥千本は木によって違うけれど、全体としては三分咲きといったところか。良い天気に恵まれて素晴らしい一日だった。
朝一番の電車に乗って吉野まで移動し、ぼちぼちと上へ山道を登りつつ花見をし、奥千本まで行ってお昼ごはんを食べた後、またゆるゆると下りつつ花見をする。やはり桜は、葉っぱも一緒に出る山桜が良い。あかみを帯びた若葉の艶なこと。葉だけになっても、なお美しい。
ほんとうの早緑に、あかみを帯びた新緑、桜色の花びら、濃緑の杉木立ち…、様々な色が春霞の中溶け合わさって、えも言えぬほどの美しい一巻きの布のように拡がっている。
桜の花の下、お弁当を開げる人々の姿は、まるでスーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」のような、日本版ピクニックといった構図に思えて仕方ないのはどうしてだろう。
帰りのラッシュになる前にと、14時過ぎには下山し、奈良まで出る。今年こそ五色椿を…と思いたっての無理矢理な移動である。途中乗り換えれば早く着いたはずなのに、つい居眠りしてしまい奈良に着いたのは16時半頃になってしまった。仕方ないので、タクシーをとばす。滑り込みギリギリセーフの中で久方ぶりに観た五色椿の根元には、観光客やカメラマンの横暴ぶりを阻止する柵と鎖とじゃり石があった。前みたく、苔むした地面に柵も無い状態で、そっと五色椿に触れられたら良いのに。