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1990年3月南青山ルポゼ

仕事絡みの展示会が東京で開催され、泊まりがけで出かけることになる。展示会翌日は休みにして、長年憧れで終わっていたケーキ屋さんに行ってみたいと思う。

8日展示会は午後からなので、その前に国会図書館で児童書の絶版本を読んでみたいと朝一の新幹線で移動する。国会図書館に行く途中、国会議事堂を10年ぶりくらいで目にするが、記憶がさっぱり無くていかに興味がなかったかがよくわかった。

国会図書館は閉架式なので、閲覧したい書籍情報を所定の用紙に記入して受付カウンターに申請する。受付番号を渡されてしばらく待つ。研究者っぽい人が多いけれど、若い女性もいる。いったいどういった本を閲覧申請しているのかしらん。用意が出来たら電光掲示板に番号が表示されるので、申請した本を受け取りにいく。中学生の頃に読んで、もう一度読みたかった本。懐かしいなぁと思いつつ、目を通す。後の予定があるので、図書館内で早めのお昼を食べたら名残惜しいが外に出る。

展示会は夕方の立食パーティーまで続き、緊張感ある半日だった。

9日JR原宿駅から表参道を通り、南青山へ…。中学生の頃、憧れたケーキ屋さんを梯子する。

まずは原宿駅近辺を彷徨く。人が多い。最初のお店は皇室御用達のコロンバン。確かバタークリームのケーキを食べたはず。お次はあまり時間を置かず、デメルのザッハトルテを珈琲と共に。美味しいけれど、お腹がもたれる。それでも10年以上も前に行って食べてみたいと憧れた老舗の看板ケーキを食べることが出来て、ちょっとだけ感動した。中学生の頃だったら、感動の嵐だったかもしれないけれど、流石に関西から一人で東京まで出て行くまでにはならなかった。お金がないのもあるけれど、神戸から芦屋にかけても沢山美味しいケーキ屋さんはあったのだ。G線とか、ユーハイム、神戸風月堂、モロゾフ、アンリ・シャルパンティエ、元町ケーキ…。パンだったら、フロインドリーブ。むしろ、こっちの方が歴史が古い店もある。

昼ご飯はケーキがお腹にもたれて食べる気にならない。最後のお店ルポゼを目指して、南青山へと歩いて行く。期待して訪れたお店は少々アテが外れた。私が中学生の頃にはカクシャクしたおばさまだったろう、綺麗なショートカットの髪型の上品な老婦人が「今日はテイクアウトだけです」と仰るのだ。残念だけれど、休みよりはマシだ。買って帰って食べようと幾つかのパイを指差してオーダーした後が…ね。震える手付きで二度三度とパイを取り落とす、その老いの悲しさが見ていて辛かった。それでも、こうまでしてもまだ仕事をしようとするその心意気には感服し、素晴らしいと思えた。二つの感情に挟まれてとても複雑な気分の内に店を出る。店名は経年劣化しないけれど、店舗や人は歳を取る。私もルポゼの老婦人も、その他大勢の人すべて。ルポゼの老婦人がそうだったように、私も10年前の私とは違う。同じところもあるけれど、かなり変わってきていると思う。10年という歳月の重さを考えてしまった。

14時上野駅待ち合わせでYと国立西洋美術館と国立近代美術館に行く。常設展のみの為、人の入りはまばら。

コロンバン、デメルは現在でも営業しているが、残念ながらルポゼは閉店して久しいようだ。

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