2005年12月雪の宮島
18日夜行バスで移動し、入院中の母を見舞う。相変わらず意識不明。何をするでも無いので、昼を潮時に病院を出て実家のあれこれを片付ける。父に晩ご飯を食べさせ後片付けをしたら、広島へ移動する。
もう一年以上前からの課題の一つである、宮島に鎮座する安芸国一ノ宮厳島神社に詣でる為だ。折からの寒波で18年かそこいらぶりの大雪。広島に夜遅く着いた時、辺りは一面の雪で白く凍てついていた。
19日朝早く、8時頃の宮島行きフェリーに乗ったら、宮島は白く薄化粧をしていて美しかった。雲が多く、輝くとはいかなかったが、雲間より鈍い赤銅色の朝日が薄っすらと波の上を一筋走っている。あたかも、船を、私を、導いてくれるかのようだ。
島に着いて驚いたのは、奈良の春日大社の辺りと同じく、鹿がのんびり道をウロウロしていること。近寄っても逃げずにじっとしており、機会ある度に鹿の頭を撫でる。島に住むせいか、奈良の鹿より小ぶりな身体つきだ。そこここで目にする糞も小さい。冬毛に変わって間もないので、毛並みはもこもことして美しい。生まれて一年にならない子鹿もちんまりと愛らしい。
厳島神社には二度詣でる。一度目は朝9時前の干潮時。二度目は昼13時頃、満潮を過ぎた時分。満潮時にお社の姿を映す方が美しいとは思うけれど、朝も早い頃の白雪が一面に広がった屋根や渡り廊下等、朱に映えて美しい。積雪のあった今日、詣でることが出来て幸運だったのかもしれない。
その後、辺りをふらり歩いて、ロープウェイで途中まで行き弥山頂上へ登る。ロープウェイ辺りは観光客も多いが、積雪の為弥山頂上まで行く人は少なく、工事の方とお坊さんを入れて5人しか見かけなかった。
頂上は巨石文明の遺産のごとく、岩々が聳え、鏡岩のようなものや門のように組み上がったものがある。
後の時間を気にせずにいられるならば、一日中のんびりしてもいい、気持ちの良い場所だった。潮と風とお日様と大地がお互いに支え合っている場所。久々にうーんとのびをした。いつもこんなふうにのんびり日向ぼっこ出来るといいのに。
私の昔からの願いは、たまに人気の無い気持ちのいい所でのんびり日向ぼっこがしたいということだ。そういう所で、本を読んだり、うたた寝をしたり、あれこれ考えを巡らせたり、散歩したり…。そうして、「○○をせねばならない」を取っ払って、新しいその向こう側を覗いて、歩いて、みる。とても素敵なことだと思う。