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2007年12月春日大社おん祭

17日春日大社のおん祭を見るべく泊まり掛けで奈良に出かける。贅沢を言えば、16日から泊まり掛けで遷幸の儀から観ることが出来ると良いけれど、この時期3連休は無理だ。曜日の巡りによっては、2連休でも取れるかどうか。まあ、幸運なことに今回は2連休が取れた。

おん祭の流れをさらっとこう。

17日に日が変わったら若宮本殿にて遷幸の儀が始まり若宮様をお旅所へお連れする。この後、お旅所にお移りになられた若宮様に朝の御饌をお供えして神楽の奉納がある。ここまでが午前2時頃まである儀式になる。

朝9時頃からお旅所にて本殿祭、昼を過ぎる頃から13時頃まで奈良駅周辺をぐるりとお渡り行列が練り歩く。行列は一の鳥居に入ってすぐ南側「影向の松」の前で「松の下式」を行ってお旅所へ入って行き、お旅所祭の準備に入る。

お旅所祭は14時半から始まり22時過ぎまで続く。この日最後の還幸の儀は23時頃から始まって日が変わる前に若宮様は元の御殿にお鎮まりになる。

全部観ようとすると大変だ。なので、一番観たいものに時間を合わせて行動することになる。

朝8時にJR奈良駅着。バスで春日大社前まで移動して本殿祭を観る。本殿祭終了後、春日大社本殿にお詣りする。この後、宝物殿側を通り、水谷神社経由でおん祭とは直接関係はない手向山八幡宮にお詣りする。それでも、普段とは違い、立派な神饌が神前に供えられている。

県庁前の大通りに出ると行列を観んと待ち構える人が大勢いる。もうちょっと駅寄りの所で行列を観る。行列が通り過ぎたら、お昼ご飯だ。駅から少し離れたもちいど商店街で薬膳料理をいただく。

三条通りを避け、2本ほど南の通りをぶらりJR奈良駅まで歩いて行く。ビジネスホテルに15時チェックインして、還幸の儀までの寒さ対策をする。使い捨てカイロを背中、お腹、足のつま先にセット。山用の上下のダウンを着込みマフラー、毛糸の耳付き帽子、革手袋を準備。サブザックに折りたたみ傘、水筒、携行食、大きなビニール袋、筆記用具。準備が出来たらバスで国立博物館前まで移動する。ここでトイレを済ませて寒さ対策の最終形態になる。もこもこで動くと暑いくらいだ。

お旅所まではすぐそこで、たくさんの人がお旅所を囲んで立っている。16時過ぎて日がもうじき暮れる頃だ。お旅所祭もだいぶ進行して、田楽が始まっている。ちょうどいい頃に来れた。お旅所の真ん前に潜り込んで田楽を観る。

観るうちにだんだんと辺りが暗くなってくる。昼から観ている方はこの辺りでお帰りになる。人の動きに併せて最前列まで出る。これで視界を邪魔する者なくかぶり付きで細男(せいのお)を観ることが出来る。

闇が辺りを覆い、松明の灯にパチパチ木が焼ける音がする中で細男(せいのお)は始まる。白い浄衣に単純な動き。笛と小鼓。短いながらとても神秘的な舞で、辺りの闇から浮かび上がるような白衣の動きが呪術的にも見えてくる。神様の正面でこの舞を観る幸運。

神楽式(かぐらしき)和舞(やまとまい)舞楽(ぶがく)と続いていく。舞楽の中でも蘭陵王が一番気に入っている。戦が終わった後平和を寿いだ舞とされるが、奏楽の調べを耳にしながら観ていると、何故か私には、何ものにも屈せずに立つ降魔の舞にしか見えない。鞨鼓(かっこ)と大太鼓の音の調子が暗闇に響くのは、なんとも言い難い。

やがて奉納舞が全て終わると、22時をだいぶ過ぎている。寒さの中、じっと立ち続けていたので身体がカチカチになっている。還幸の儀の前準備でお旅所に供えられた物全てが下げられていく。準備完了後司会の方の「還幸の儀」という宣言と共に先触れの大松明以外の灯が全て消える。辺り一面の闇の中、神職一堂の上げる「ヲー、ヲー」という唸るような声と道楽が奏される中、若宮様は元の御殿に戻って行かれる。神職に続いておん祭保存会の方、その後に一般の人が続く。先行く神職の方の声や道楽が途切れ途切れ暗闇の中から聞こえてくる。星明かりだけを頼りに前へ前へと歩いて行く。

そのうち、私からは見えないけれど若宮様は無事元の御殿にお鎮まりになる。この時点で各所の灯が点灯される。そうして神楽殿にて神楽が奉じられおん祭は終わりを迎える。後は各自、若宮様にお詣りをして帰途に着くだけ。長かった一日が終わる。

18日朝早くから昨日のお礼方々、春日大社に詣でる。早朝の奈良公園を散歩した後、駅近くでモーニングをいただく。

昨日の余韻はそのままに、今日は何故だか10数年ぶりに法隆寺を訪れる。前回訪れた際は、北海道のSさんと一緒だった。今回訪れてみると、榊莫山さんが「大和千年の路」で書いていたように、以前全く感じなかった異国情緒をありありと感ずる。そして、今と昔が混在し、ふと目の端から聖徳太子や親鸞上人が入って来そうな、そんな気分になる。綺麗に建てられた宝物殿には莫山さん作の扁額がどんと掲げられている。莫山さんの慕われた百濟観音さんは…、私にはどうしても女性に見えなかった。年齢不詳の洒落た男性…、日本人離れした、でもヨーロッパ風でもない。現世ではあまりお見かけしない、垢抜けた風情でいらっしゃる。そんな風に、私の目には見えた。

細男(せいのお)がどんなものか知りたい方はYouTubeで検索してもらえば、いくつか動画を見ることが出来る。それでも、実際に観るのとでは臨場感が違う。

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