2002年1月幣立神宮
6日二年越しの旅の途上にある。北海道まではいかずとも、九州は広い。
一番電車に乗って、一番飛行機で熊本空港に着くと9時20分。バスを乗り継ぎ目的地に到着したのが13時半頃か。途中、バイパスではない生活道を次々と通り抜けたけれど、懐かしい風景に再会したような心地になる。奈良の奥の方をもう少し大きく広くしたような、そんな感じだ。緩やかな傾斜地にある田畑がたっぷりとした冬の日差しを受けて、とろとろと眠っている。それなりに涼しいし水の確保も大変だろうに、そんなことで関係ないというように広々と続く。関東にもこういう所があるはずだが、家と人とビルしか思い浮かばない。あと、関東って関西と比べて冷たい感じがする。植生の違いとかなんだろうか。東北も良いけれど、九州や関西に感じるぬくもりがない。このぬくもりというのは、私が感じる西に共通する風土なのだと思う。お宮さんやお寺さん、道端にある祠、草木、日差し、等々目には確として見えぬものすべて。
熊本県上益城郡山都町大野にある幣立神宮に詣でるのが今回の一番の目的である。所在がはっきり把握出来ずにいるので、蘇陽高校をランドマークとして目指すお社を探すつもりだ。
蘇陽高校から道を少し引き返した所に幣立神宮はあった。冬の寒さも相まって、境内はピリッとした感がある。まだ正月7日が開けてないので、地元の方が数人初詣に来られている。悲しいかな凡人たる自分には、神威を感じることは無かった。ありがたいお社だというのに覚えていることはただ一つ。お社の裏手に回ると、寒さで凍てついた田畑が広がっていて、その端っこにねずみがチョロチョロしていたこと。
高千穂へのバス便が以前調べたよりも少なく、夕方18時半まで無いので、あちこちぶらぶらする。事前準備不足の為、中途半端になってしまった。まあ、スローな旅だしこういうのもアリ、だよね。初めてブルーベリー園っていうのを見たし。また今度来る時にはテント担いで(テント無くて寝袋だけでも)ゆっくりしたいな。
高千穂についたのが遅かったので、夜神楽を見逃した。毎夜20時〜21時の時間に神楽殿にて演じられているらしい。残念。
7日天の岩戸に行くのは熊本駅行きバスの時刻の都合から残念ながら割愛となる。高千穂峡とくしふる神社辺りを歩いて過ごした。それでも、棚田は素敵だったし、天真名井で御神水をいただいたし、テント泊に良さげな場所も見つけたし、なかなか有意義であったといえよう。
この後は、本当なら阿蘇で一泊して白水村辺りをぶらり歩きたかったのだけど費用を安くするパック旅行を使った為、熊本まで一足飛びに出てしまうことになり、阿蘇は次の機会となった。阿蘇経由で熊本行きバスの車窓は夕暮れ時も相まって、見ていて飽きなかった。
熊本で晩ご飯を食べる為彷徨いていた時に素敵なカフェを見つけた。カフェ・真源。アンティークショップと一緒になったお店で、古い商家をそのまま使っている。雰囲気抜群。値段はあの辺りにするとかなり高いかも。地下一階がバーになっているためか、かなり遅くまで営業しているので便利だ。またの機会があれば、横の懐石料理の店でお世話になりたいな。
8日ちょっとだらけて、熊本城を中心に歩いてうろうろ。土地カン無いのでかなり迷った。でも、それがおもしろかった。たまたま裏路地で1kg200円の河内みかんを手に入れたが、帰ってから食べてみるととても甘くて美味しかった。河内へ無理してでも出かけるべきだったかもと後悔。なにせ、みかんブランデーの蒸留所と温泉もあるのだ。ま、ことごとく今後の楽しみということで。
熊本城の中に加藤清正公の神社があってまだ松の内ということもあり、会社関係のお参りが頻りにあった。よほど人徳のあった方なのかと思う。ここのおみくじはユニークで風水みくじや恋愛みくじなど数種類あり、思わず買ってしまった。
さて、旅の総括をば。下調べが不足していて全てが後手に回っていたのは反省すべき点である。やはり西なので東の方より馴染み深い。なにより物価が安い。ラーメン一杯400〜500円。激安だと300円くらいから。そして水が甘い。幣立神宮と高千穂の天真名井で御神水をいただいて、それぞれお茶や珈琲を入れたけれど、まろやかで美味しい。これが同じ茶葉で入れたものであろうか?と愕然とするほど美味しかった。普段から石や炭である程度浄化した水を使うようにしているけど、それでも限界があることにまざまざと実感する。あと、美味しいと思ったのは屋久島の水だな。どれも南だ。南の方が合うのかもしれない。
それにしても、私の旅ってガイドの端っこやガイドの隙間などマイナーなとこばかり狙っているようで、他の人に説明する際、自分でも首を傾げるような説明になる。ほんと、それがどうした?ってかんじで。
幣立神宮はスピリチュアル系のパワースポットとして今では有名になっているが、2000年頃だと無名に近く何処にあるのか場所の特定に時間がかかった。神社研究書や由緒ある神社一覧には記載が全く無かった。
カフェ・真源はその後移転。現在営業しているがは不明。