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ステラ


普通は使用者が道具を選ぶが、思考する(インテリジェンス)道具(・ツール)の場合は道具が使用者を選ぶ。選ばれていない人間が使用しようとしても、ただのガラクタにしかならない。


そして思考する(インテリジェンス)道具(・ツール)"ステラ"が選んだのが僕なのだそうだ。


いや、選んだというのはちょっと語弊があるかもしれない。


ステラ曰く、彼女は波長が会う人間としか会話できないらしい。だからこの30年他の人間は勿論、フラジールさんですら声を聴くことができなかった。そんな彼女が、この世界にやってきて初めて声を届けるのができたのが僕だったそうだ。『私達は運命の相手なのよ!』とステラは以前言っていた。


まぁ彼女の能力を見れば確かに運命の相手かもしれない。


なにせ彼女の能力は"魔力の蓄積"だ。


ステラは契約者の魔力を吸収し、専用のカートリッジ(×5)に蓄積する事ができる。


つまり、総魔力以上に、魔力を貯める事ができるのだ。


絶望的に総魔力が少ない僕の欠点を埋めてくれる神アイテム、そんな彼女が僕を契約者として選ぼうとしてくれている……本来ならとてもありがたい事だ。が、僕は契約者になる気はなかった。


その理由は大きく分けて二つ。


一つは、僕より彼女を有効に活かせる人間がいるだろうという事。

彼女を最も有効に活かせるのは、魔力回復速度が速い人間だ。それに対して僕の回復速度は総魔力のように絶望的な数値ではないにしろ、せいぜいが平均レベルかそれ以下でしかない。


勿論彼女と契約して今構築している魔術を実行してみたい気持ちはある。正直、後述の問題と一つの制約がなければ一度契約していたと思う。


──そう、一度契約した場合その契約者が死ぬまで契約者の変更は行えないなんて問題がなければ。


ステラの能力は優秀だ。だとしたら"魔術を使ってみたい"程度の気持ちで契約すべきではないだろう。使う人間が使えば継戦能力が跳ね上がる力なんだから。


とまぁ偉そうに語ってみたけど、理由としてはもう一つの方が圧倒的に強い。さっきも言ったとおりこっちの問題がなければ契約していた可能性が高い……なにせこっちは自分の将来に大きく関係する上、後戻りも効かないことだから。()()()も含めて、いずれ現れるであろう彼女に合う相手に譲るべきだと考えている。


『心配しなくても大丈夫よ。優しくするから。天井のシミを数えているうちに終わってるわよ!』

「なんの話だよ」


後どこでそんなフレーズ覚えてくるの? 


「なんだい、また夫婦漫才しているのかい?」

「……夫婦漫才ってなんですか。そもそもステラの声聞こえてるんですか?」


ステラと阿呆な会話をしている間に、フラジールさんは本を読み終わったらしい。本を置いて、安楽椅子から立ち上がっていた。


そうして彼女はステラの方へちらりと視線を向けつつ、


「あんたの言葉と伝え聞いている彼女の言動から予測はある程度つくね。ま、そんな事より今日の用件は何だい?」

「あ、えっとですね」

『ちょっと! もう少しアタシに付き合いなさい!』

「後でね」


お前と違ってフラジールさんは別に暇じゃないんだよ(さっきは漫画読んでたけど)。

ステラをあしらい、魔術構築用のエディター魔術(無料配布)を起動する。フラジールさんにとってもらえる時間は制限があるので無駄にはできない。


「継続して魔術に必要となるコスト削減に努めてるんですけど、それでちょいと判断に迷ってるところがあって」

「……まだまだ削るのかい。よくやるよ」

「自分で使えないのは置いておいたとしても、コストの重い魔術ですからね。誰かに譲るにしても削れるだけ削っておかないと」

「……使える相手は現れるのかねぇ。あんたと同じ空間適性持ちでかつ平均以上の総魔力を持っていないと無理だよ?」


魔術器官(マジック・オルガン)にはそれぞれ適性が存在する。そしてその適性がない属性の神代文字を使った魔術を起動しようとした場合、使用コストは格段に跳ね上がる。


「それはわかってますけど……もし使える人間がいたら、非常に有効な魔術になりますよね」

「それは認めるよ。……どれ、見せてみな」

「よろしくお願いします」


僕は学園を卒業したら、人の望む魔術だけを作っていく事になるだろう。


だから学生の間位いいじゃないか、幼い頃自分が空想した理想の魔術をくみ上げたって。


例えその魔術を自分が使える日はこないとしても。


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