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桐生院 文香


結局そのまま抱えられて、僕は連行された。


後、空を飛んだと思ったけど大跳躍していただけだった。まぁ飛行系は消耗大きいしね。何度も地面を蹴っての大跳躍を繰り返し、僕は運ばれていく。


……いや、これさ。繰り返し激しく上下に振られていることになるわけでさ。自分の意思じゃない状態で。


うん、酔ったよ。その状況が続いたのはほんの数分だけだったハズだったけど、目的地に到着する事には結構グロッキーになっていた。


到着した後那美が心配そうにしてたけど、うん全て那美のせいだからね?


何の説明もなく、人がスカートなのを一切考慮せずに、強制ジェットコースター体験させてきた那美には後でがっつり説教しようと僕は心に決める。


……すぐに説教しないのは、連れてこられた場所が場所だったからだ。


那美によって僕が連行された場所は、進入禁止区域の中。そして那美(と抱えられた僕)が降り立った場所には、すでに一人の少女が立っていた。知っている顔だ。といっても直接の面識はないんだけど。


桐生院 文香。最高学年である6年生であり、そして那美と並ぶ、学年には現在4人しか存在していない最高位の魔術士。


そんなエリートがいる場所に急に連行されて頭に「?」を浮かべてる僕に対して、桐生院先輩は那美に対して呆れた視線を向けながら説明してくれた。


なんでも、強力な語モノが出現する前兆が確認されたため、Sランク魔術士に出動要請が出たとの事。


幸いな事に現在ゲートは開いておらず、Sランクは殆どが天津原市内に滞在していたため、Sランクだけに依頼が出た感じだ。最高峰戦力があるなら、わざわざその下のランクの魔術士を出して怪我人を出すリスクを負う必要はないからね。ちなみに他の6年生Sランカーや卒業生たちも別の場所で待機しているそうだ。


で、だ。お気づきだと思うけど、招集が掛かったのはSランクだけなんだよね。そんでもって僕はDランク。Sランクに掠ってもいない。そんな僕をなんで連れて来たの!? と那美に問いただしたら「お姉ちゃんの格好いいところ見せようと思って!」という返事がかえってきた。


その返答に桐生院先輩は大きなため息を吐き、僕は実の姉ながら頭が湧いてるんじゃないかと思った。


ていうかDランクは個人での禁止区域の進入は不可で、上位ランクと一緒に参加する際は申請書が……と思ったら那美がすでにその辺はちゃんと提出していた。そういえば、Dランクに上がった時に念のためとか那美に言われて申請書書いたな……まぁ一緒する事は実際にないかなと思ってたから忘れてた。


ただそっちの申請書は提出されててもSランクしか招集されていない場所にDランク連れてきてたら不味いんじゃないのと思ったら、そっちもちゃんと確認取ってあった。そこまでちゃんと確認とってるんだったら、僕にも最初から話を通しておこうよ……。


ちなみにこれは僕が特例なわけじゃなくて、他の区域に来ているSランクの中にはAやBランクの術士を連れてきているのもいるとのこと。さすがにDランクは僕だけだけどね。


「とにかく、貴女は下がっていてくださいな。大丈夫、私がいる限り貴女に危険が及び事はありませんので」

「あ、はい。わかりました、桐生院先輩」


説明が終わった後そう声をかけてくれた先輩に対して、僕は頷きを返すと素直に彼女たちの後ろに下がった。


桐生院先輩はSランクの中でも特に防御に優れた魔術士だ。彼女がそう言い切る以上、そうさせてもらった方がいいだろう。というかSランクが招集される戦場で、Dランクの出番なんか欠片もないですよ。


下がる時に那美がいい笑顔でサムズアップしてきたけど、スルーしてやったら悲しそうな顔していた。少し反省をしてください。


尤も、その悲しそうな顔は別に長くは続かなかったけれど。


語モノが出現したからだ。──それもとてつもなく巨大な。

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