表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/44

魔術開発者


じゃあ僕は魔術に関しては一切役に立たない無能かといえば、そうではないとは言える。


これは僕が思っているだけではなく、大抵の人間は認めてくれると思う。魔術士としては無能なのは自他ともに認めるけど、()()()()()としては僕は無能ではない。


ただその上で無能ではないが役立たずだとは思われているだろうけど。


さっき教室でこっちの事を嘲ってきた連中が、その最たる例だ。彼らは僕に魔術の開発を頼んできた。それを断ったから、()()()()()役には立たないと、無能だと聞こえるように嘲笑してきたわけだ。


ウィザストという世界のフォールダウンによりもたらされた魔術。これは技術であって、例えば炎をイメージしたら炎が出るとか、適当に呪文を唱えたらいいとかそんな簡単な話ではない。


ウィザストの魔術は、いうなればプログラムだ。神代文字と呼ばれる特殊な言語でロジックを構築することでくみ上げた魔術式を実行することで行使する。この魔術式を作成するにはいくつかの資格が必要となっている。


設計者:最終的なアウトプット(魔術)に合わせて全体のフローを作成する。

構築者:設計書を元に、神代文字を用いて魔術式を構築する。

検証者:構築された魔術式を検証し、実行して問題かないかの確認を行う。

調整者:構築された魔術式を調整し、使用者に合わせて最適化することで容量や実行時魔力の削減を行う。


このうち設計者と構築者は比較的簡単に取得できる(ただし各資格は段階があり、より効果の大きい術を構築するため位は上位資格が必要となる)。


調整者は前述の二つより難易度が高い。ただ行わなくても術の行使としては可能なのでこの工程をすっ飛ばす奴が多いのは確かだ。


そして検証者。この資格は最難関となっている。構築された魔術式は検証者のチェックを通し、承認が出ない限り魔術として行使する事ができない。厳密なチェックを必要とするため、資格としてはかなり困難なものとなっている。学園卒業生を含めても数は少なく、学園内部でも最終学年までいかないとほとんど取得者がいない資格だった。


僕はこれらの資格をすべて持っている。さすがに最上位資格まですべて取得済みということはないけれど、多分資格取得率でいえば、少なくても学年ではトップクラスになるだろう。


そんなだから、例の連中のように僕に対して魔術の開発や検証を依頼してくる奴らはそれなりにいる──が、基本的に僕はそれを断っている。だから僕は役立たずの変人、無能者と呼ばれているのだ。


いやこうしてみると役立たずの変人は認めるけど、無能者はただの嫉妬だよねこれ。設計開発くらいは自分でやりなさいよ。検証はそもそも製作者以外の人間がやらなければいけないから仕方ないけどさ。


ちなみに検証に関しては、少なくとも学園にいる間は大っぴらにやるつもりはないし、学園からもそれで問題ないと言われている。検証作業は片手間でやっていいものではないので。検証者は最後の砦であり、片手間にやって見落としなどしてしまった場合は術士の身に危険……くらいならまだマシで、暴走したら広範囲に悪影響を与える可能性があるのだから。


責任の重い資格なのである。そんな作業を気軽に依頼されても困るって話だ。


それに僕には今はやりたいことがある。僕に魔術士としての実力はない以上いつまでも追い求め続けることはできないけど、それでも学園卒業までは続けたいのだ。だから僕には余計な事にかけている時間はない。今できるのはせいぜい設計開発に関するアドバイスくらいかなー、それも仲のいい友人あたり限定で。


なんでそれほど仲もよくないこっちを利用する気満々の相手に、そんな事してあげなくちゃいけないのかって話だよね?




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ