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巡回開始


「あれ、そんなガチガチの私服なの?」

「……うん」


夜のパトロールをするために合流した僕の姿を見て、明らかに驚いた様子で言った束本の言葉に僕は力なく頷いた。


街灯の明かりに照らされる束本の恰好は、学園から支給される魔装服だ。


魔装服は服と一緒に渡される専用の術式を起動することで、使用者の魔力を取り込んでその耐久力を上げる効果の組み込まれた特殊な服だ。付与系の術式を特定の素材によく馴染むような形にしているらしい。


一応魔術士の恰好はこれ! と決められているわけではなく個人の裁量に任されているので必ずしもこの格好をしないといけないわけではないけど、学園の魔術士の大部分はこれを着ている。


自分の魔力を使うとはいえ防御効果の高い服で魔装服を超えるものはなかなかないし、超えたり同様の効果を持つ装備品を揃えようとするとお値段はるからね。


ただこの魔装服、女子には概ね不評ではある。理由は可愛くないから。


いやまぁ防御用の服だから下はズボン上は長袖の全身覆うような恰好だし、動きまわるから無駄な装飾もついていない。機能性重視の恰好だから当然なんだけどね。


なんで、自分の防御系の術式に自信のある子や前衛に出ない支援系の術士は割とすきずきな恰好をしている。束本は割とソロで動く事が多いので基本的に魔装服だけど。


それに対して僕の恰好はパーカーにズボンという完全な私服だ。


「おかしい……かな?」


Dランクで基本的に前に出る事がない僕が魔装服ではなく私服姿なのは、別段おかしな事ではないはずだけど……


束本は僕の問いに、一通り僕の姿を見回してから


「いや、可愛いけど」

「……そういう話じゃなくてね?」

「魔装服着てくると思ってた。まだ支給されてないの?」


現場に出る事になった術士には魔装服は支給されるけど、以前の時は僕は受け取っていなかった。だって魔装服、結局魔力いるからね。せいぜい解析と支援術使ったら後退する僕には無用の長物だ。その術つかったせいで支援術も使えなくなりそうだし。


そして、ステラと契約し魔力を豊富に使えるようになった今も当然受け取ってない。だって、それこそ何の意味もないので。


「……実はさ、魔術使うためにステラとリンクすると、その際に専用の衣装──僕じゃなくてステラが用意した奴に恰好が自動的に交換されるんだ。だから魔装服は支給断った」

「へぇ~、そんな機能もあるんだね」


どうせ魔術を使う事になったらわかる事なので説明すると、束本は感心したようにうなずいた。


「でもそしたらそっちには着替えないの?」

「……それは、そっちに着替えると魔力消費しちゃうから。僕回復量も多くないから、出来るだけ消費は抑えておきたくて」

『衣装の交換は私の標準機能だし、あの服は元々高い防御性能を持っている奴だから殆ど魔力消費しないわよ?』


ステラうるさい。


『この娘と一緒に行動するなら、どうせ見られるんだしもう見せちゃってもよくない?』


よくないよ!


語モノが出なければ魔術使う必要はないから今日はあの恰好はしないで済むかもしれない。いずれ見せる事は確実でも、先延ばしにできるなら先延ばしにしたい。


それにこの辺りはまだ進入禁止地域じゃないので、数は少ないにしろ普通に人が歩いている。こんな所で着替えるとかはありえない。


「どうしたの?」

「あ、ううん。なんでもない」


ステラと脳内会話を始めたせいで黙ってしまった僕に束本が怪訝そうに声を掛けてきたので、僕は慌てて首を振る。ステラの言葉は他の人間には聞こえないからね。聞こえなくてよかったと思うけど。


「そろそろ行く?」

「うん、行こうか」

「あ、そうそう那岐」


いざ先に歩き出そうとして、すぐ立ち止まった束本は振り返り僕の名を呼んだ。


「何?」

「この時間にその外見で私服で歩いていると、いろいろ声かけられると思うけど気を付けて。ナンパとか」


……そっか、魔装服着てれば天津原の住人ならこれから巡回に行くってわかるもんな。でもそれの為に魔装服支給してもらうのはさすがにアレだしなぁ……



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