教えません。
「なぁ伏谷、訓練棟行こうぜ」
休み時間毎に話しかけられるわ質問受けるわだったし、三限目の休憩時間あたりからは他のクラスにも話が伝わったらしくてこっちを見る視線の数が一気に増えて辟易したり、それに気づいた束本が友達と壁になって視線遮ってくれたりしたりということはあったけど、とりあえず大きなトラブルは発生せずに一日終わった。
なんとなくな感じだけど、最初に質問攻めにしてきた後は少し距離感を図っている感じ? まぁそれもしょうがないかな。
そして放課後、とりあえずそんな状態だし、今日はフラジールさんの所にステラを回収しに行く必要があるからと鞄を手に取り席を立った時、声を掛けられた。朝一番最初に声を掛けてきたクラスメイトだ。
「訓練棟? なんで?」
「だって、魔術使えるようになったんだろ? 伏谷が作っている魔術って見たことなかったら興味が……どうした? すごい真顔になって」
「いや……」
魔術はエディタを使って開発するが、当然作った魔術は実践で使ってみないとその魔術の使い方の練習もできない。かといってそこいらで好き勝手に魔術を行使する訳にいかない。だから訓練棟があるんだけど……
「え、魔術の内容秘密なの?」
「そんな事はないけど」
よくお話とかである魔術士同士の対人のランキング戦というのは存在しないし、それ以外の場合でも訓練以外で対人相手にバフや情報系の魔術以外を使う事はほぼありえないから魔術の内容を隠匿する意味合いはあまりない。そもそも僕の魔術はバフ、デバフ系に寄っているので、現場に出た時のことを考えればむしろ知っていてもらった方が都合がいいくらいだ。
ただ、えーと、そうだ。
「御免、今僕、杖を持ってないから……杖がないと魔力不足で使えない」
「あー……そういやそうだったな、悪い」
ふぅ……引き下がってもらえたか。
「じゃあ、明日以降なら大丈夫か?」
!?
いや、そうだよね、当然そういう話になるよね!
「えっと……」
「え、ちょっとまて何で赤くなる!?」
げ!
指摘されて、僕は慌てて頬を抑える。思わず例の恰好で人前に立つ自分の姿を思い浮かべてしまい、それが顔に出てしまったらしい。
あの姿はすでにJMAの職員さん達にはさんざん見られてしまっているけど、あの時はなんというかアドレナリンが出てるような状態だった。──素面で、しかもクラスメイトの前にあの恰好で立つとか、マジ?
「え、もしかして何か魔術使うのに恥ずかしい事あるの?」
不味い、返答に困って立ち止まってたら話を聞きつけた別のクラスメイト達も集まって来た。しかもその言葉に思わずビクッと震えちゃったから、それが理由だと気付かれた。
「魔術使うのに恥ずかしい事あるのか?」
「ものすごいやらしい雰囲気のある魔術を使うとか……」
「そんな訳ないだろ!」
……思わず突っ込んでしまった。ていうか、やらしい雰囲気のある魔術ってどんなのだよ。
「違うの?」
「違うってば……」
「じゃあ使う姿が恥ずかしいのか?」
うっ……
「そうなんだな?」
これ早く逃げた方がいいよね? 反応でバレる!
「でも使う時に恥ずかしいのって一体」
「魔術使う時に恥ずかしいセリフを言わなきゃいけないとか、恥ずかしいポーズとらなくちゃいけないとか?」
二人の会話を聞きながら、僕はこの話をステラが聞いていないことに安堵した。あの恰好を趣味と言い切ったステラなら、実はポーズとらないと最大の力が発揮できないといい出しかねないない気がする。
「……違うからね?」
「じゃぁ、何が恥ずかしいんだ?」
駄目だもう彼らの中では僕が術を使うのには恥ずかしいことをすることになってる。いやほぼあってるんだけど!
とにかく今は隠しておきたい。いずれ現場に出るかあるいはJMAから情報が流出してバレると思うけど嫌な事は出来るだけ後で!
「とにかく今は急いでいるから! それじゃサヨナラ!」
本来ならここで何かしら誤魔化すべきなんだろうけど、何も浮かばなかったので強行突破を図る。横をすり抜けると二人はあっという顔はしたが、引き留めることはなく「またな」と見送って来た。とりあえず脱走成功だ。……後でごまかす理由何か考えないとな。
……ちなみに、この行動だが完全に失敗だったよと束本に言われた。さんざん皆の間で話題になっていたと。
そうだよね、こんな逃げ方すればそりゃどんな恥ずかしいことだって気になるもんね……




