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おはよう


「あれ……?」


目を覚ますと見知らぬ天井だった。


「どこだ、ここ?」

「JMAの病室だよ。おはよう、那岐」

「へ」


突然かけられた声。その聞き覚えのある声に首をそちらに向けると、そこには患者衣のガウンを纏った一人の少女が座っていた。


「束本っ……つっ」

「ダメだよ、那岐。ちゃんと寝ていないと」


反射的に横たわっていた体を起こしたら、立ち眩み(?)がして体がふらついた。そんな僕を見て束本は椅子から立つと、そっと肩を掴んでベッドに僕を押し返す。


……そう、僕はベッドに寝ていた。ついでにいうと、僕の恰好も彼女と同じ患者用のガウンになっている。


「……なんで僕がベッドに」

「魔術の行使のし過ぎで倒れたんだってね。聞いたよ、私を助けるために那岐が必死に頑張ってくれたの。そんな可愛い姿になってまで」


彼女は柔らかい笑みを浮かべて、横たわった僕の頬を撫でてくる。


可愛い姿……そういわれて自分の体を見下ろすと、目の前に小山があった。……実は目が覚めると元の体に戻ってるのを3%くらい期待していたんだけど、そんな事はなかったね。


まぁ例の恰好じゃなくなってるだけで万々歳だ。ステラの口ぶりからして、あの恰好は魔術を使用するときだけの姿なんだろう。その点は一安心できた。日常生活まであの恰好は生き地獄すぎる。


「顔つきまで変わっちゃってさ。もう完全に女の子だよ」

「そうなの?」


そういえば自分の顔がどうなってるかなんて気にしてもいなかった。てっきり男の時の顔のまま女の子の姿になってるのかと思ったけど、顔つきも変わってるのか。


そんなことをぽやんとしながら考えていると、束本がベッドの上に上がって来た。そしてもう片方の手も僕の頬に当ててくる。


「束本……?」

「でも、どんな姿になっても那岐は那岐だよね。ありがとう、私を助けてくれて」


そういって顔が近づいてくる。


……え、ちょっとまって、ちょっとまって? なんで顔が近づいてくるの? このままだとキキキキキ


頭がパニクっている間にも、束本の顔は近づいてきて……そしてついにはぶつかった。


──額と額が。


彼女はそのままの状態で目をつむり、口を開く。


「私が那岐を護るつもりだったのに、逆に守られちゃった。……本当にありがとう、那岐」


ささやくようにいって、束本が顔を話していく。


あーびっくりした、びっくりした!


心の中で深呼吸をして、バクバクする鼓動をなんとか抑えつける。


「と、とにかく束本が無事でよかったよ」

「うん。このお礼は必ずするよ」

「そこは気にしなくていい……といっても気にするだろうから、今度僕が困った時には助けてもらうよ」

「うん、任せて。……でも計画狂っちゃったなぁ、どうしよ」

「ん? 計画って何?」

「あ、なんでもない。気にしないで」


? なんだろう。あー、もしかして。


「別に自分で魔術が使えるようになっても、魔術開発はするつもりだから安心してよ」

「えっと、そういうわけじゃなくて」


違うの? ステラと契約したことで僕は魔術を行使できるようになったから、将来的に僕に魔術を依頼するつもりであっただろう束本の計画が崩れたのかと思ったんだけど。


「今はとにかく気にしないで。ちょっといろいろ考えるから」

「はぁ。まぁいいけど」


暗そうな雰囲気ではないし、別に無理して聞き出すような話でもないだろう。


「ふぁ……」


一通り自分と束本の状態が分かると、眠気がぶり返してきた。さっきまでどれだけの時間寝ていたかわからないけどまだ寝たりないらしい。その様子を見た束本がクスリと笑う。


「また寝るといいよ、大分消耗してたみたいだからね」

「束本は? もう退院するの?」


僕の言葉に、彼女は首を振る。


「私も呪いで大分消耗しているみたいで、もう一晩泊まっていけだって。那岐も明日にはある程度回復しているらしいから、一緒に退院だね」

「成程」


一安心だ。だったら僕はこのまま眠気に身をゆだねさせてもらおう。


「それじゃお言葉に甘えて寝させてもらうよ。おやすみ」

「うん、私も部屋に帰ってもう寝るよ。おやすみなさい……また明日ね」


今度のまた明日は、無事に迎えられそうだな。


そんな事を考えつつ、僕の意識はゆっくりと微睡の中に落ちていった。



ここまでが本編になります(話の内容的には物語の第一話的な感じですが)

ここから先は後日談というか日常編になります。

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