その本
その本にはお金の稼ぎ方が書いてあった。
仕事をしていなくお金がなかったし、お金が欲しくてたまらなかった僕はひと目見てその本を購入した。
その本は面白かった。ちゃんと誰にでも出来そうなことが書いてあった
トイレ掃除を毎日するとか、靴をそろえるとか、募金をするとか、沢山の実践すると良いことが書いてあった。僕はその本に書いてあることを毎日するようにした。そしたらお金が貯まった。
その本は興味深かった。その本にはお金をたくさん稼いでいるだろう作者の実体験が書かれていた。どう言う人生を送ってきたのか、どういう風に人と接したらうまく行ったのか、どういうふうなお金の使い方をしているのか、何をして稼いでいるのかが書いてあった。僕はその本に書いてあることを真似してみることにした。そしたらお金がまた貯まった。
僕はその本にすがることにした。だってその本に書いてあるようにすればお金が貯まっていくから。だってその方が楽だったから。だから僕はその本にすがることにした。
僕はお金がたまらなくなっていた。毎日その本に書いてある通りに生活しているのに僕はお金がたまらなくなってしまった。僕は不安になりその本を読み進めることにした。そして本を読んではそのことを繰り返していた。
僕はその本を最後まで読んだ。でもお金はたまらなかった。
僕はやる回数を増やしてみることにした。1日に一回しかしてなかったものを二回やるようにした。トイレ掃除も募金も靴を揃える回数も二回に増やしてみた。すると少しお金が貯まった。そしてすぐお金がたまらなくなった。
僕はもっと回数を増やすことにした。
回数を増やすごとにお金はちょっとずつ貯まった。でも十回以降どれだけ増やしてもお金が貯まることは無くなってしまった。
僕は本を読み返した。何か忘れてしまっていることがあるのではないか、何か見落としてしまっている部分があるのではないかと、必死になって読み返した。文章にマーカーで印をつけたりした。でも全部やっていた。
必死になって見落としを探しているとあることに気づいた。
僕はまだこの本の表紙を外していなかったことに。そしてきっとそこに大事な何かがかいてあるのだろうとおもった。
そして僕は表紙を外した。
するとそこにはとてもとても大切なことが書かれていた。
それを見て僕は思った何故最初からここを見ていなかったのだろう。
何故僕はこれに気づくことができなかったのだろうと。
だってそこにはこう書いてあったから。
「この本はフィクションです。」と
僕はこの本を捨てた。
世の中そう甘くはなかった。
そうして僕は真面目に働いた。
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